うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
119 / 166
第5章 戦争

因縁が始まるようです

しおりを挟む
 トナミカギルドの方針が決まった今、僕達はトナミカの周辺地図を広げて作戦会議を行っていた。

 ここで、周辺の地形を把握してみよう。
 トナミカは、エラリアから北部に位置している交易都市だ。
 しかし、その土地は決して海洋貿易に適しているとは言い難かった。なぜなら、エラリアとトナミカを結ぶ街道は、曲がりくねった細い道を降りていかなければならないからだ。大量輸送に必要な太い幹線がないことは、交易にとっては大きなマイナスだが、これは守るにあたって大きな利点となった。

「余り交易に向かない土地ですけど、どうしてここに町を作ったのですか?」

 僕の質問に、ニンムスが頷いた。
 ウォーレンは現在、ニンムスから頼まれた書状の作成に取り掛かるため一度退室していた。

「ここは、元々商人が目をつけて作った町でな。トナミカの左右には岬が飛び出ておるし、北大陸の海側は元々崖が多くて少しでも開けた場所といえばここしかなかったのじゃ。ちなみに、エラリアの市政体系は完全に西寄りじゃ。西方諸国とグリドールの港から中間の距離に位置するトナミカは、お互いの小競り合いを避けるには良い交易の土地じゃったというわけじゃ」

「ということは、もしかして海側からもグリドールの軍勢が来るのでは⋯⋯」

 イスカの指摘にニンムスは困った様に頭を縦に振った。

「そうじゃ、いくらグリドールが精強といえど海を渡るには船がいる。して、ここトナミカは殆ど武装商船なんぞ持っておらん。じゃから、奴らは港だけ貸せ。船は寄越すと言いおった。面倒なことに2正面作戦じゃ」

 20万人を超える人員を運ぶ船団だ。
 きっと、この港町は軍船に埋め尽くされることだろう。

「まぁ、大半は陸路から入ってくる。陸を閉ざせば兵は入ってこれん。じゃが、海側から砲撃を喰らえば町はひとたまりもないわ」

 陸路の軍勢を抑えることは容易そうだが、遮蔽物のない海側の守りをどうするか。
 そう考えていた僕の目に、海図の上に大きく書かれたバツ印が目に止まった。

「この印は?」

「あぁ、それか。そこは、ほれ。お前さんがこの前やっつけたクラーケンが寝床にしておった大穴じゃ。だから、船乗り達は絶対にそこには近寄らん」

「そうすると、グリドールの船はこの大穴と東の岬の隙間、結構陸地に近い所を通ることになりますか?」

 イスカが海図を指し示しながら陸と大穴の距離を測る様に指を広げた。

「そうじゃな、5海里は陸地からは離れんじゃろ。クラーケンが倒されたと知っても、わざわざ近寄るもんではあるまい。横に広がったとしても3海里くらいじゃ。陸換算だと5キロと少しくらいじゃな」

「5キロ、5キロ⋯⋯」

 イスカはニンムスから言われた距離を確かめるように反芻した。
 僕の頭の中には、前世の世界における明石大橋の距離が浮かんでいた。世界最長の吊り橋と言われた明石大橋の距離は4キロはいかないはずだ。
 そう考えると、5キロの距離は思った以上に遠い。

「──私とフーシェ、それに船があればなんとかなるかもしれません」

「本当か!?相手の船団は武装しておそらく200艘を超えるんじゃぞ!?」

 信じられないといった様にニンムスが眼を見開いた。
 僕にとっても200艘を超える船団を相手にするなんて、予想がつかない。フーシェに至っては小首を傾げている状態だ。

 しかし、イスカは自信があるのか眼を輝かした。

「ふぅむ。頼もしい限りじゃ。近頃はこのような眼をするエルフはとうに見のうなったと思っていたのじゃがな。よし、船の方はなんとかしよう」

 ニンムスが嬉しそうに笑ったことから、この純粋種のエルフは若いイスカを頼もしく思ったようだ。

「失礼します!緊急事態です!」

 イスカに対し、皆が質問をしようとした矢先、ノックとほぼ同時に一人の女性職員が室内へと飛び込んできた。

「なんじゃ!?早く要件を話せ。ワシはもう出るとこじゃぞ?」

 会議中に飛び込んできた職員を咎めることもなく、ニンムスは息を切らせている職員に話しかけた。

「ハアッ、ハァ!明らかにレーベン側からやってきたと思われる、入港しようとしている所属不明の艦を発見したと、見張り灯台から信号がありました!」

 ニンムスの顔が一気に険しくなった。

「して、その艦船の特徴は?」

 女性は軽く息を整え、ニンムスの質問に答える。

「偽装されていますが、マストの構造上グリドールのものと思われます!艦種も商船に似せておりますが外洋航海用の軍船で間違いないかと」

「ユズキさん!これってもしかして──?」

 イスカの言葉は、僕が思っていることと一致したようだ。

「あぁ、きっとグリドールの勇者、ジェイク達の艦に違いない」

 僕の言葉に、ニンムスは嬉々とした様子で自分の椅子に勢いよく腰を落とすと、女性職員に指示を出した。

「ククッ!陳腐な偽装で我々を騙そうとするなんて舐められたものじゃな。概ねトナミカを経由せずに直接レーベンへ渡ったのじゃが、ジェイク達が引き上げる際に補給が乏しくなったので寄港するんじゃろ?良い、気付かないフリで入港させてやれ。──して、ユズキ達はそのジェイクとやらに用事があるんじゃろ?」

 僕達が頷くと、ニンムスは意地悪そうに笑った。

「ククッ、グリドールと事を構えるとなればトナミカも終わりかと思ったが、運が向いてきたようじゃわ」

 思いっきり俗な笑みを浮かべるニンムスは、エルフというよりは商人のようだ。

「ユズキよ。セラ様の願いもあるが、ここまで来たならトナミカもお主たちと運命を共にするしかあるまい。勇者の方は、お主たちと何やら因縁があるようじゃが、殺害だけはするでないぞ。こっちで、グリドールとの交渉の余地となる」

 ニンムスの言葉に僕は頷いた。

「勿論です。できる限り話し合いを試みてみます」

 正直リズを殺害しようとし、酷い目に合わせたジェイク達を許す気持ちには到底なれなかった。
 しかし、ローガンに頼まれた事情と、リズがジェイクを恨んではいても、報復を望んではいないことから、話し合う機会は持ちたかった。

「イスカ、フーシェ行こう」

「わ、待てっ。俺達も行くぞ」

 僕の言葉に、慌ててベスとサユリも立ち上がった。
 ギルドを後にした僕達5人は、夜の帳が落ちようとする港へと急いで足を運ばせた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...