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孤児院でバザー
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ん~、よく寝た。今日はお兄様と一緒に孤児院へ行くから、動きやすい服にしてもらおう。
「朝食を食べたらすぐに向かう?」
「はいっ。お兄様、準備完了ですか?」
「うん。いつでも行けるよ」
実はルーク様のオリヴィエ公爵領にある孤児院へ訪問してから、自領の孤児院へもお兄様とよく行くようになったの。それ以前はお父様とお母様が訪問していたみたい。お父様は同世代の私達のほうがみんなも喜ぶだろうって仰っていたし、私達が貴族の責任感を持つためにも必要なこと。
ちなみにうちにある孤児院でも、将来に困らないよう似たようなことは既にしていたみたい。私達が知らなかっただけかって、お兄様と2人でちょっと恥ずかしくなったけど、お父様は私達が自ら孤児院へ関心を持ったことを喜んでくれた。
「エレナ様だっ」
「ライナス様もいるよ」
「わーい、ライナス様とエレナ様だぁ」
孤児院に着くと、みんな嬉しそうに駆け寄ってくれるのが私もすごく嬉しい。ただ…私達がここに来るようになって知り合った子の中には、孤児院を出る年齢になった子もいるし、働き先が少し早めに雇ってくれたり、養子縁組をして出て行った子もいる。笑顔で送っているけど、本当は少し寂しい。
「今日は、今度あるバザーで出すフロランタンの試作を一緒に作りたいなって思っているんだ」
「フロランタンってなんですか?」
「クッキーの上にキャラメルを絡めたアーモンドを乗せて焼いたものよ」
「おいしそう!」
「楽しみっ」
「早く作ろう」
そうそう、孤児院で定期的にバザーを開いているの。季節の変わり目に開催していて、申請すれば一般の人も出店できる。それが結構人気で毎年申請数が増えているから、別の場所でも開催するかお父様は検討しているらしい。
そのバザーの1回目から私とお兄様も参加しているんだ。小さくなった服や靴なんかを出しているの。もちろん、転売されたら困るうちの家紋が入ったものや、高価すぎるものは出してないよ。
でも…私達が売っている商品で一番人気なのが私達が作った丸いクッキー。多分果物をたくさん使っていておいしいのに、材料費分すら取らないほど安いからじゃないかなって思ってる。
今日はそのクッキーと合わせて販売する予定のフロランタンをみんなと試作する。まぁ…散々うちの厨房で作って、料理長が完成させたレシピを元に作るから、本当は今日作る必要はないんだけどね。ただ今世初めて食べたフロランタンが美味しすぎて、せっかくなら孤児院のみんなにも食べさせてあげたいねってお兄様と話したのがきっかけ。
「エレナさまぁ、僕もっとはちみつ入れたい」
「はちみつ好き?」
「うん! 大好きっ」
「じゃあたくさんいれよっか」
その代わりに砂糖の量を減らせば問題ない…よね? お菓子作りって計量が大事だった気もするけど…まぁ、なんとかなるでしょ。
「いい匂いだね」
「だねぇ」
焼き上がったものを切り分けみんなでできたてをいただく。うん。やっぱりみんなで作るとより美味しく感じる。うちの料理人達が作る完璧なものとはまた別の美味しさ。
*
*
*
そして今日はバザー当日。ありがたいことに私達兄妹の出店品は開始早々に売り切れになる。今回お菓子の数を増やしたのは、店番をさせてもらえる開始1時間の間に全てが売り切れになってしまうから。
「フロランタン、気に入ってもらえるといいですね」
「きっと気に入ってもらえるよ。だってエレナが考えたんだから」
……まぁ正確には私じゃないんだけどね。お兄様はもちろんルーク様にもお店を出すべきだって言われるけど、それはやってない。
そもそも前世で料理をしていた記憶なんてないし、たまに作るスイーツだってネットでレシピを検索してその通りに作っていて…都度検索すればいいから作り方なんて覚えてもなかった。
私はこういうのが食べたいって言ってるだけで、そこからレシピを産み出したのはうちの料理人達。だから私の手柄になるのは気が引けるのよ。
「そろそろ時間ですね」
「そうだね。あっ、そうそう。ルーク達は僕達の店番が終わる頃に着くように来るって」
毎回ではないけど、バザーの日はルーク様、ニーナ様、セオドア様が遊びに来てくれる。どうやら今日は珍しく3人揃って来てくれるらしい。
「ライナス様、エレナ様、開場時間になりました」
「はぁい」
*
おかしいな。お菓子の量をだいぶ増やしたはずなんだけど…私達の店番の間に売り切れてしまった。
「売り切れちゃいました…」
「驚いたね。次はもっと増やす? でもこれ以上は大変だし…日持ちする物を作れるといいんだけど」
「料理長と相談しなければですね」
「そうだね。あっ! ルーク達が到着したみたいだよ。あれ? 4人?」
片付けは使用人達にお任せし、控室として使わせてもらっている部屋に向かっていると、裏口からニーナ様たちが丁度入ってくるところだった。知らない男の子が3人と一緒に来ているけど…。
「誰、ですかね?」
「2人に紹介するよ。僕の友達のオーランド」
「クラーク公爵家の縁戚にあたります、ホルト男爵家次男のオーランドと申します」
「僕の専属侍従なんだけど、ライナス様とエレナ様と同じで僕も侍従と友達になったんだっ!」
嘘でしょ…。ご、ごめんなさい。セオドア様はドヤ顔で自慢してるけど、ニーナ様は…呆れ顔だけど怒ってはいないみたい。良かった。
*****
とある平民side
「いいなぁ。新しいフロンラン? 買えたんだよね」
「半分こする?」
「いいの!?」
「うん。だって領主様のご子息様達が作ったものなんて滅多に手に入らないからな」
「ありがとう~」
「それにしても相変わらずエレナ様可愛かったなぁ」
「ライナス様もかっこよかったわ」
侯爵家の料理人考案レシピのお菓子はもちろん美味しい。もちろんクッキーも果物がたくさん入っていて美味しい。なのに価格は平民が手を出せる価格。でも人気の理由はこれだけじゃない。
領民思いの領主一家が好かれているのはもちろんだけど、美少年と美少女である2人の手作りだから、2人が店番をしている間に買う人が多いなんて、エレナとライナスは全く気付いていないのだった。
「朝食を食べたらすぐに向かう?」
「はいっ。お兄様、準備完了ですか?」
「うん。いつでも行けるよ」
実はルーク様のオリヴィエ公爵領にある孤児院へ訪問してから、自領の孤児院へもお兄様とよく行くようになったの。それ以前はお父様とお母様が訪問していたみたい。お父様は同世代の私達のほうがみんなも喜ぶだろうって仰っていたし、私達が貴族の責任感を持つためにも必要なこと。
ちなみにうちにある孤児院でも、将来に困らないよう似たようなことは既にしていたみたい。私達が知らなかっただけかって、お兄様と2人でちょっと恥ずかしくなったけど、お父様は私達が自ら孤児院へ関心を持ったことを喜んでくれた。
「エレナ様だっ」
「ライナス様もいるよ」
「わーい、ライナス様とエレナ様だぁ」
孤児院に着くと、みんな嬉しそうに駆け寄ってくれるのが私もすごく嬉しい。ただ…私達がここに来るようになって知り合った子の中には、孤児院を出る年齢になった子もいるし、働き先が少し早めに雇ってくれたり、養子縁組をして出て行った子もいる。笑顔で送っているけど、本当は少し寂しい。
「今日は、今度あるバザーで出すフロランタンの試作を一緒に作りたいなって思っているんだ」
「フロランタンってなんですか?」
「クッキーの上にキャラメルを絡めたアーモンドを乗せて焼いたものよ」
「おいしそう!」
「楽しみっ」
「早く作ろう」
そうそう、孤児院で定期的にバザーを開いているの。季節の変わり目に開催していて、申請すれば一般の人も出店できる。それが結構人気で毎年申請数が増えているから、別の場所でも開催するかお父様は検討しているらしい。
そのバザーの1回目から私とお兄様も参加しているんだ。小さくなった服や靴なんかを出しているの。もちろん、転売されたら困るうちの家紋が入ったものや、高価すぎるものは出してないよ。
でも…私達が売っている商品で一番人気なのが私達が作った丸いクッキー。多分果物をたくさん使っていておいしいのに、材料費分すら取らないほど安いからじゃないかなって思ってる。
今日はそのクッキーと合わせて販売する予定のフロランタンをみんなと試作する。まぁ…散々うちの厨房で作って、料理長が完成させたレシピを元に作るから、本当は今日作る必要はないんだけどね。ただ今世初めて食べたフロランタンが美味しすぎて、せっかくなら孤児院のみんなにも食べさせてあげたいねってお兄様と話したのがきっかけ。
「エレナさまぁ、僕もっとはちみつ入れたい」
「はちみつ好き?」
「うん! 大好きっ」
「じゃあたくさんいれよっか」
その代わりに砂糖の量を減らせば問題ない…よね? お菓子作りって計量が大事だった気もするけど…まぁ、なんとかなるでしょ。
「いい匂いだね」
「だねぇ」
焼き上がったものを切り分けみんなでできたてをいただく。うん。やっぱりみんなで作るとより美味しく感じる。うちの料理人達が作る完璧なものとはまた別の美味しさ。
*
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そして今日はバザー当日。ありがたいことに私達兄妹の出店品は開始早々に売り切れになる。今回お菓子の数を増やしたのは、店番をさせてもらえる開始1時間の間に全てが売り切れになってしまうから。
「フロランタン、気に入ってもらえるといいですね」
「きっと気に入ってもらえるよ。だってエレナが考えたんだから」
……まぁ正確には私じゃないんだけどね。お兄様はもちろんルーク様にもお店を出すべきだって言われるけど、それはやってない。
そもそも前世で料理をしていた記憶なんてないし、たまに作るスイーツだってネットでレシピを検索してその通りに作っていて…都度検索すればいいから作り方なんて覚えてもなかった。
私はこういうのが食べたいって言ってるだけで、そこからレシピを産み出したのはうちの料理人達。だから私の手柄になるのは気が引けるのよ。
「そろそろ時間ですね」
「そうだね。あっ、そうそう。ルーク達は僕達の店番が終わる頃に着くように来るって」
毎回ではないけど、バザーの日はルーク様、ニーナ様、セオドア様が遊びに来てくれる。どうやら今日は珍しく3人揃って来てくれるらしい。
「ライナス様、エレナ様、開場時間になりました」
「はぁい」
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おかしいな。お菓子の量をだいぶ増やしたはずなんだけど…私達の店番の間に売り切れてしまった。
「売り切れちゃいました…」
「驚いたね。次はもっと増やす? でもこれ以上は大変だし…日持ちする物を作れるといいんだけど」
「料理長と相談しなければですね」
「そうだね。あっ! ルーク達が到着したみたいだよ。あれ? 4人?」
片付けは使用人達にお任せし、控室として使わせてもらっている部屋に向かっていると、裏口からニーナ様たちが丁度入ってくるところだった。知らない男の子が3人と一緒に来ているけど…。
「誰、ですかね?」
「2人に紹介するよ。僕の友達のオーランド」
「クラーク公爵家の縁戚にあたります、ホルト男爵家次男のオーランドと申します」
「僕の専属侍従なんだけど、ライナス様とエレナ様と同じで僕も侍従と友達になったんだっ!」
嘘でしょ…。ご、ごめんなさい。セオドア様はドヤ顔で自慢してるけど、ニーナ様は…呆れ顔だけど怒ってはいないみたい。良かった。
*****
とある平民side
「いいなぁ。新しいフロンラン? 買えたんだよね」
「半分こする?」
「いいの!?」
「うん。だって領主様のご子息様達が作ったものなんて滅多に手に入らないからな」
「ありがとう~」
「それにしても相変わらずエレナ様可愛かったなぁ」
「ライナス様もかっこよかったわ」
侯爵家の料理人考案レシピのお菓子はもちろん美味しい。もちろんクッキーも果物がたくさん入っていて美味しい。なのに価格は平民が手を出せる価格。でも人気の理由はこれだけじゃない。
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