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居残りデート
しおりを挟む「……………はい?」
呼び出された職員室。
一体自分は何かしでかしてしまったのだろうかと不安になりながらも向かうと、そこには普段うざくてうざくて仕方のない奴もいて。
どうりでさっきまで周りが静かだったはずだと納得した。
が、オレの姿を認めて手招きした担任のセリフに固まった。
「え、先生今何て?」
「だからな、高塚の勉強みてやってくれ」
「嫌です」
冗談じゃない。
即答するオレに担任は苦笑い、そして高塚は声高に詰め寄ってきた。
「何で何で何で!?お願いっ教えて!」
「お願いされても嫌なもんは嫌」
「酷いッ森の愛はその程度だったのね!?」
「つーか、お前のためにっつーのがやだ」
「やだとか言うなよ可愛いな」
「意味わかんねぇ黙れよ」
目の前で暴言を吐かれてもめげずにいる高塚。
ホントうざいなコレ。
「つーか先生オレの成績知ってますよね?人に教えるほど頭良くないんですけどオレ」
「いや、うん、まあそうなんだけどな」
否定してくれ先生。
少しで良いから否定してください、そんなあっさり肯定されたら悲しいんですけど。
「でも高塚がな、ど――――おしても森が良いって言うんだよなあ」
いや困った困ったと言うがどうみても困っているようには見えない。
以前ひょんな事で意気投合していた可愛い生徒の我が儘にヤニ下がっているようにしか見えない。
「でも、無理ですってば」
「まあ教えられる範囲で良いから頼むよ」
「いや、だから」
「コイツほんとヤバイんだって。だからよろしくな!」
「よろしくー」
人の意見を聞かずに押し切りやがった先生に、追い討ちをかけるような高塚のへらりとした笑み。
む、むかつく……!
「嬉しいなあ、森と居残り」
マジでぶっ殺してやろうかこの変態。
鼻歌を口ずさまんばかりの勢いでにこにこと言う奴にそう思った。
ああ受けたとも結局受けるハメになったとも嫌だったけど、本当に死ぬ程嫌だけど受けざるを得なかったとも。
そんなわけで今は放課後の教室に変態といる。
石野も巻き込もうと思ったのに他の友人らと連れ立って先に帰りやがった。
オレの仲間達は例によって例の「彼氏に~」とかいうセリフでとっとと解散。
なので現在大変不本意な状態だが二人っきり。
椅子の背もたれに腕を乗せる体勢で向き合っている。
『とりあえず数学と英語がやばいからよろしくな!お前確か得意だったよな?』
確かに数学は得意な方だが、あくまで他と比べたらというだけでずば抜けて良いわけではない。
英語なんて以ての外だ。
ただの呪文の羅列にしか見えないしリスニングも何言ってんだかさっぱり。
そんなオレに良くもまあ頼んだもんだ。
「……で?」
「ん?」
「ん、じゃねえよ。答案出せ」
先生が言うには先日やった実力テストの結果がそれはもう悲惨なものだったらしい。
手を出して促すと、
「……オイ」
「ん?わっ!?」
「握ってんじゃねえよ気色悪い!」
「あ、あぶっ、あぶなッ!?」
「ちっ」
無言のままそっと手を握られ反対側の拳を振り上げだが、避けられた事に盛大な舌打ちをする。
「あーでも森の手ちょーイイ!オレもう手洗わない!」
「……帰る」
「えええ、ままま待って!はいコレ!答案!」
ふざけたセリフに、立ち上がりつつ言うと高塚が慌てて教科書に挟みっぱなしだった答案を出した。
最初から素直に出しゃいいのに。
奪うように受け取ったそれを見て、
「………うっわ」
思い切り眉を寄せて口元をひきつらせてしまった。
結果はなんと一桁。
平均と順位の書かれた紙を見ると、後ろから数えた方が早い。
常々バカだアホだと言われまくっている高塚だがまさかここまでだとは思わなかった。
「ひでえな」
「えーでもいっつもこんな感じだぜ?」
マジか。
藁にも縋りたくなる先生の気持ちがわかった。
面倒だが仕方がない。
ここまでバカなのだからあと一問二問叩き込めば先生も大満足だろう。
「じゃあとりあえず数学やるか」
「ええー!せっかく二人っきりなのに勉強すんの?」
「ざけんな誰のせいでオレがしたくもねえ居残りしてると思ってんだ。やるぞ」
「や、やるだなんてそんな……良いの?良いの?」
「どんな勘違いしてやがるか知らねえが黙れ」
こうして、勉強会が始まった。
*
※高塚くん視点
「で、ここにxを代入して……」
静かな教室に森の声が響く。
一つの机を挟んで向かい合っているけれど、森が身を乗り出すようにして説明してくれているから妙に距離が近く感じる。
先生に泣きついて良かった。
まさかこうもあっさり森が教えてくれるとは思ってなかったけど。
人に教えるのは初めてなのか、拙いながらも一生懸命な様子が可愛い。
「……って、お前ちゃんと聞いてる?」
「え、うん、もちろん!」
ぱっと顔を上げた森に驚いた。
聞いてはいるけど、内容なんて頭に入ってこない。
ああ、もう。
(ほんっっと可愛いなあ森!)
頭の中はそんな事でいっぱいだ。
シャーペンを持つ手にさっき触れて、滑らかな感触にうっとりしてしまった。
あの手で触られようものならソッコーでイく。
早漏と言われようが、その自信はある。
伏せた目も可愛いし、教え聞かすために少し優しくなった口調もたまらない。
というか、今すぐキスしたくてたまらないのですが。
奪っていいですか。
ぷっくりしてて、時折乾いてしまうのか舐める仕草が下半身直撃ものだ。
誘われてるとしか思えない。
あ、また舐めた。
「――…」
気付いたら体が勝手に動いていて、
「?たか、」
腰を少し上げて。
森の頭をそっと押さえて唇を寄せた。
「……っ」
「……」
「――…っに、しやがるつもりだ!?」
「いいい、痛いッそれ痛いって森!」
柔らかな感触をこれでもかと堪能するはずだったのに。
触れる直前で森の指がオレの耳を捕らえて引っ張った。
しかも思いっきり。
マジで痛いんですけど耳千切れそうなんですけど!
「油断も隙もねえな!」
バチン、と額を手のひらで叩かれる。
これは地味に痛い。
「だっ、良いじゃんちゅーくらい!」
「良くねえよザケんじゃねえ!」
「だってそんな顔近付けたらしても良いかなって思うじゃん!つーかしたくなるじゃん!?」
「なんねえよボケ!変態!」
「い、痛っ、物投げんなって!」
「うっせえもう帰る!二度と頼まれてやるか!!!」
「え、えー!?」
帰るというセリフの通りさっさと荷物を纏めて教室を出て行ってしまった森を、慌てて追いかける。
教科書とかその辺に散らばっちゃっているけれど、あんなもの誰も盗らないだろうからそのまま放置。
「森ぃ」
「付いて来んな!」
「ごめん、ごめんなさいっ、もうしないからさあ」
「うっせえ!信じられっか!」
「ごめんってばーっ」
森の斜め後ろをちょこちょこと付いて行きながら謝る。
なんだか浮気が見付かって謝っているみたいだな、なんて思ってしまった。
言うと絶対また殴られるから、ひたすら前を向いていた森には内緒にしておこう。
end
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