高塚くんと森くん

うりぼう

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変態も夢を見る

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※高塚くん視点



爽やかな秋晴れの午後。
窓の向こうから射し込む陽気に先生の淡々とした話し声が否応なく睡魔を誘い、クラスの大半に漏れず前の席の可愛い可愛いあのコもあっという間に船を漕ぎ始めた。

うつらうつらと揺れる頭。
その度さらさらと流れる髪の毛に、晒されるうなじが光を反射し、白いシャツには肩胛骨のラインがキレイに浮き出ている。

それに魅入ってしまえばもともと右から左の授業など耳には入ってこない。
視界には愛しい森の姿だけがあって、いつもなら見るなと目くじらを立てるのに今日は眠気に負けてそれもない。
猫が爪をたてるような可愛らしい抵抗(注*高塚くんにはそう感じる)が見れないのは残念だが。

なんて素敵な時間なんだ。

ぽやーん、とまさに色ぼけ全開なとろけるような目で後ろ姿をガン見。

もし今ここで、その白いシャツの隙間から手を忍ばせ滑らかな肌を触れるのだとしたら迷わず手を伸ばす。
背中から脇、腹から胸へと指を滑らせ悪戯するのはどれだけ楽しいだろうか。
吸いつく肌はきっとずっと触れていたくなってしまうだろう。

(やばいたまんない)

オレ自信睡魔に襲われて夢現の判断がしにくくなっているのか。
気が付けば無意識に腕が動いていた。
触れるまではいかない距離で伸ばした人差し指が宙をなぞる。
つう、と襟元から背筋を指でなぞり、シャツの下にある滑らかさと森のリアクションを想像したその瞬間。

「ッ!!!」
「?」

びくりと肩を震わせ顔を上げた森が、きょろきょろと辺りを見回した。
勢いのある動きに一体何があったのかと、こちらの眠気も一気に覚めてしまい、疑問符を浮かべて様子を伺う。

すると、森は少しだけ首を回し、後ろのオレを見た。
恨めしげな目だったような気もするが、それよりも授業中に森が自分からこちらを見てくれたという方が嬉しくて思わず頬が緩む。
寝起きの森もやはり可愛い。

「……」

森は何かを言おうとして口を開いたが、今が授業中でしかもいつになく周りが静まり返っている事に気付き、何度か開いたり閉じたりを繰り返した後に結局はその口を噤み前を向いてしまった。

向けられた背に寂しさを覚えたまま授業は終了。
いつものように声を掛けようとしたのだが、それ以前に再び森が振り向いた。
珍しい。

先程の授業中の事もありどうかしたのかと問う。 

「?森?」
「……お前、さ」
「うん?」
「……さっき、オレになんかした?」
「え?」

問われた事にきょとん、と目を瞬く。

「な、なんもしてない、よな?」
「え、う、うん、なんもしてないよ」

こくこくと首を縦に振る。
事実色々いかがわしい事は妄想したが実際に触れてはいない。
森はオレの返事に眉を寄せると、頭を抱え机に突っ伏した。

え、なんだろうどうしたんだろう。
もしかしてオレ気合いで手使わないでなんかした?

そんなアホな事を思い、いやいやそんなバカなと自分で否定。
それはそうといきなりそんな質問してきてどうかしたのだろうかと、肩に手をかけたところ。

「森」
「……っ!」
「わ!?」

指先がちょんと触れただけで先程の非ではないくらい大袈裟に肩を震わせ、ガタガタと大きな音を響かせ椅子の背もたれと机に縋り目一杯オレから離れる森。
前の席の子は一足先に立ち上がっていたから被害はゼロだが、大きな音に教室中が注目。

一瞬の事にオレの手も引くことを忘れ、宙にとどまる。

「……森?」

静けさを破るように名を呼ぶと……

「―――ッ」
「…………え」

ぐああっと一瞬で顔を赤く染める森。
それに驚いている間に、本人はダッシュで教室から出て行ってしまった。

「え、え?何?今のどういう事?」
「さあ?」

斜め前の石野に問う。
普段飄々としている奴も今回は意味がわからないのか同じように疑問符を浮かべている。

「お前なんかしたんじゃねえの?」
「してないよ!」

そうだ断じてしていない。

「そりゃうとうとしてる森が可愛くて可愛くて超ガン見してたしシャツ脱がしてえとか触りてえとか、うなじ超キレイで舐め回してえとか思ったけど我慢したし!触ってないしそもそも服も脱がしてないし」
「いい、もうわかったから黙れ」
「あああでも今の真っ赤になった森も超かわいかった!な、かわいかったよな!?」
「黙れっつってんだ黙れ変態」

一瞬額に指を当てあきれたように溜め息を吐いた石野が人一人を射抜くには充分すぎるほどの冷たい視線でもって言った。
怖い。

でも本当にどうしたんだろう森ってば。
思ったところでハッとある事に気付く。

「もしかしてついにオレの事意識してくれたのかな!?うわっ、どうしよう超嬉しい!」 
「はっ、ありえねえ」

夢見てんじゃねえよ、と半笑いの石野に言われた。

その後授業が始まるギリギリになって戻ってきた森に結局なんだったのかを聞こうとしたら、いつになく気合いの入った睨みを向けられ正直少しちびるかと思った。

先生に叱られたのは言うまでもない。









授業中、それはそれは素晴らしい陽気に微睡み一瞬深く寝入ってしまった森くんが、夢の中で高塚くんに首筋から背中を撫でられ、耳元に唇を寄せられそれを気持ちよさそうに甘受していた。
夢か現かの判断のきかなかった森くんがバカな質問をしたと頭を抱え、ふいに肩に触れられた事で夢を思い出し過剰反応。
いたたまれなくて逃げ出したものの、そもそもあの変態に触られて鳥肌立つならともかく気持ちよさそうに受け入れるなんてありえないあってたまるかと、結果あの変態が何もかも悪いのだという結論を出すまでに休み時間いっぱい使ってしまった。

そんな森くん事情を知る由もない周囲は、片や頭が沸いているとしか思えない夢を描き、片やそんな変態を冷たい目で見たり、各々その日一日を過ごしていったのであった。







end.
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