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あの瞳にやられました
しおりを挟むとある日の放課後。
今日も今日とて何が悲しくて自分を口説いている男と帰らなければならないのか。
心の中でぶつぶつと不満を呟く。
もー本当に早く帰りたいすぐ帰りたいマッハで帰りたい、と思っていると。
「あ!ちょ!森ちゃんアレ見てちょー可愛い!」
「何だよ?」
うるせえなと眉を寄せつつも指さす方を見て。
「!!!!!」
一瞬で目が輝いた。
指の先には新しく出来たであろう小さなペットショップ。
新装開店のセール中ななか、ガラスのショーケースの中にずらっと並ぶ小さな犬猫たち。
(か)
かわいいいいいいいい!!!
可愛い可愛い可愛いすっげえ可愛い、何これオレが犬猫大好きって知ってて帰り道にこんなん作ったんかなんだあの目!あの手!ちっちゃいもふもふしてるちくしょう可愛い!
気が付けば高塚と並んでガラスケースにへばりついていた。
(うーわ、うわっ、すっげえ可愛い持って帰りたいかわいいかわいい……ってなんっだこの値段!?ムリムリムリ高い高い高い買えねえ……)
犬猫の可愛さとその値段の高さに一人目をひんむいていると。
「森、見て見て抱っこさせてもらっちゃった」
「は!?」
見ると一匹の子猫がその腕の中に。
隣に立つお姉さんの目はハート。
普通こんなお高い猫、明らかにひやかしな高校生に抱っこさせてくれるはずないのに(偏見)こんなところでもモテんのかお前。
(……って、んな事はどうでもいい猫かわいい猫かわいいすっげえかわいいオレも抱っこしたい)
羨ましい、ずるい、と目で訴える。
「かわいいでしょう?まだ三ヶ月の赤ちゃんなんですよー。甘えん坊でね」
にこにこと変態に話しかけるお姉さん。
もう目が高塚にしか向いていない。
「森、森、赤ちゃんだって!森も抱っこしてみなよ!」
「えっ」
高塚はお姉さんの言葉を聞いてはいるが視線も体もこっちを向いていて、しかもこいつにしては気のきいた事を言ってくれた。
ナイスパス。
横目で一瞬お姉さんが嫌そうな顔をしたのが見えたけどきっと気のせいだそうに違いない。
「はい」
「うん」
「……!」
手渡す高塚にうきうきと頷く。
いつになく素直なオレに変態は何やら悶えていたが知らん。
受け取った小さな小さな身体は毛がふわふわしていて、最初は小さな爪を立ててきたが、すぐさま頭を胸にすり寄せて瞼が閉じられた。
それだけでぎゅうううっと心を鷲掴みにされてしまった。
(やっ………っばいなにこいつ超かわいいいい!!!)
あまりのかわいさに目を細める。
本気で持って帰りたくなってしまった。
「かっわい……っ」
「な、すげえかわ」
かわいいよな、と高塚に同意しようと顔を上げたのだが、その視線がおかしなところを向いていたので眉を寄せる。
「…………どこ見て言ってんだよ」
「え?森ちゃん」
「オレ見て言ってどうすんだ!かわいいのはこいつだろ!?」
「猫より森のがかわいいもん」
さらっと当然の事のように言い放つ高塚に一瞬絶句。
周りドン引き。
これはもう本当にこいつの目が、いや頭がおかしいとしか思えない。
「お前の目は節穴かああああ!こんな、こんなデッカイ目のちっちゃいふわっふわのこいつを見てみろ!かわいいだろ肉球なんてたまんねえだろ!?」
「確かにかわいいけどさあ、森だって目デカイしちっちゃ……」
「喧嘩売ってんのか?あ?誰がちっちゃいって?あ?」
ふざけた事を言う高塚の足を踏んづけながら、ギロリと睨み口角だけを上げる。
言っておくがオレは小さくない。
コイツがデカイだけだ。
「だから、そうやって上目遣いで見つめないでってば森のばか!たっちゃうじゃん!責任とってくれんの!?」
「ばかはお前だあああああ!!!」
がしっと両方の上腕を掴まれ詰め寄られる。
子猫を腕に抱いたままだからうまく抵抗が出来ない。
「てか、やっぱダメ」
「は?何が……あ!」
言い終わる前に高塚が子猫の首根っこを掴みオレの腕から奪うと、未だ傍らに立ちこちらの様子を伺っていたお姉さんに押し付けた。
「子猫抱いてる森もかわいいんだろうなって思って抱っこさせてみたけどやっぱダメ!森がいちゃいちゃして良いのはオレだけ!つーわけで、オレが抱っこしてあげるからカモン森!」
「誰が行くかボケエエエ!」
「ぶッ!?」
いつぞやジャージを借りた時と同じように両手を広げる変態に、思い切り鞄を投げつけてやった。
end.
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