13 / 71
変態も夢を見る
しおりを挟む※高塚くん視点
爽やかな秋晴れの午後。
窓の向こうから射し込む陽気に先生の淡々とした話し声が否応なく睡魔を誘い、クラスの大半に漏れず前の席の可愛い可愛いあのコもあっという間に船を漕ぎ始めた。
うつらうつらと揺れる頭。
その度さらさらと流れる髪の毛に、晒されるうなじが光を反射し、白いシャツには肩胛骨のラインがキレイに浮き出ている。
それに魅入ってしまえばもともと右から左の授業など耳には入ってこない。
視界には愛しい森の姿だけがあって、いつもなら見るなと目くじらを立てるのに今日は眠気に負けてそれもない。
猫が爪をたてるような可愛らしい抵抗(注*高塚くんにはそう感じる)が見れないのは残念だが。
なんて素敵な時間なんだ。
ぽやーん、とまさに色ぼけ全開なとろけるような目で後ろ姿をガン見。
もし今ここで、その白いシャツの隙間から手を忍ばせ滑らかな肌を触れるのだとしたら迷わず手を伸ばす。
背中から脇、腹から胸へと指を滑らせ悪戯するのはどれだけ楽しいだろうか。
吸いつく肌はきっとずっと触れていたくなってしまうだろう。
(やばいたまんない)
オレ自信睡魔に襲われて夢現の判断がしにくくなっているのか。
気が付けば無意識に腕が動いていた。
触れるまではいかない距離で伸ばした人差し指が宙をなぞる。
つう、と襟元から背筋を指でなぞり、シャツの下にある滑らかさと森のリアクションを想像したその瞬間。
「ッ!!!」
「?」
びくりと肩を震わせ顔を上げた森が、きょろきょろと辺りを見回した。
勢いのある動きに一体何があったのかと、こちらの眠気も一気に覚めてしまい、疑問符を浮かべて様子を伺う。
すると、森は少しだけ首を回し、後ろのオレを見た。
恨めしげな目だったような気もするが、それよりも授業中に森が自分からこちらを見てくれたという方が嬉しくて思わず頬が緩む。
寝起きの森もやはり可愛い。
「……」
森は何かを言おうとして口を開いたが、今が授業中でしかもいつになく周りが静まり返っている事に気付き、何度か開いたり閉じたりを繰り返した後に結局はその口を噤み前を向いてしまった。
向けられた背に寂しさを覚えたまま授業は終了。
いつものように声を掛けようとしたのだが、それ以前に再び森が振り向いた。
珍しい。
先程の授業中の事もありどうかしたのかと問う。
「?森?」
「……お前、さ」
「うん?」
「……さっき、オレになんかした?」
「え?」
問われた事にきょとん、と目を瞬く。
「な、なんもしてない、よな?」
「え、う、うん、なんもしてないよ」
こくこくと首を縦に振る。
事実色々いかがわしい事は妄想したが実際に触れてはいない。
森はオレの返事に眉を寄せると、頭を抱え机に突っ伏した。
え、なんだろうどうしたんだろう。
もしかしてオレ気合いで手使わないでなんかした?
そんなアホな事を思い、いやいやそんなバカなと自分で否定。
それはそうといきなりそんな質問してきてどうかしたのだろうかと、肩に手をかけたところ。
「森」
「……っ!」
「わ!?」
指先がちょんと触れただけで先程の非ではないくらい大袈裟に肩を震わせ、ガタガタと大きな音を響かせ椅子の背もたれと机に縋り目一杯オレから離れる森。
前の席の子は一足先に立ち上がっていたから被害はゼロだが、大きな音に教室中が注目。
一瞬の事にオレの手も引くことを忘れ、宙にとどまる。
「……森?」
静けさを破るように名を呼ぶと……
「―――ッ」
「…………え」
ぐああっと一瞬で顔を赤く染める森。
それに驚いている間に、本人はダッシュで教室から出て行ってしまった。
「え、え?何?今のどういう事?」
「さあ?」
斜め前の石野に問う。
普段飄々としている奴も今回は意味がわからないのか同じように疑問符を浮かべている。
「お前なんかしたんじゃねえの?」
「してないよ!」
そうだ断じてしていない。
「そりゃうとうとしてる森が可愛くて可愛くて超ガン見してたしシャツ脱がしてえとか触りてえとか、うなじ超キレイで舐め回してえとか思ったけど我慢したし!触ってないしそもそも服も脱がしてないし」
「いい、もうわかったから黙れ」
「あああでも今の真っ赤になった森も超かわいかった!な、かわいかったよな!?」
「黙れっつってんだ黙れ変態」
一瞬額に指を当てあきれたように溜め息を吐いた石野が人一人を射抜くには充分すぎるほどの冷たい視線でもって言った。
怖い。
でも本当にどうしたんだろう森ってば。
思ったところでハッとある事に気付く。
「もしかしてついにオレの事意識してくれたのかな!?うわっ、どうしよう超嬉しい!」
「はっ、ありえねえ」
夢見てんじゃねえよ、と半笑いの石野に言われた。
その後授業が始まるギリギリになって戻ってきた森に結局なんだったのかを聞こうとしたら、いつになく気合いの入った睨みを向けられ正直少しちびるかと思った。
先生に叱られたのは言うまでもない。
*
授業中、それはそれは素晴らしい陽気に微睡み一瞬深く寝入ってしまった森くんが、夢の中で高塚くんに首筋から背中を撫でられ、耳元に唇を寄せられそれを気持ちよさそうに甘受していた。
夢か現かの判断のきかなかった森くんがバカな質問をしたと頭を抱え、ふいに肩に触れられた事で夢を思い出し過剰反応。
いたたまれなくて逃げ出したものの、そもそもあの変態に触られて鳥肌立つならともかく気持ちよさそうに受け入れるなんてありえないあってたまるかと、結果あの変態が何もかも悪いのだという結論を出すまでに休み時間いっぱい使ってしまった。
そんな森くん事情を知る由もない周囲は、片や頭が沸いているとしか思えない夢を描き、片やそんな変態を冷たい目で見たり、各々その日一日を過ごしていったのであった。
end.
12
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
殿堂入りした愛なのに
たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける)
今日からはれて高等部に進学する。
入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。
一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。
両片思いの一途すぎる話。BLです。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる