高塚くんと森くん

うりぼう

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独り占め

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何気に続いている高塚との勉強会。
毎度毎度放課後の教室で二人きり、度を増す変態のセクハラ発言と行動に嫌気がさしたのは随分と早い段階だったかと思う。

それでも我ながら我慢をした方だ。
こっちが必死こいて教えてるのをにやにやしながら見つめられても頬を撫でられても髪を梳かれても手を握られても挙げ句キスされそうになっても一発殴って一言怒鳴ってやり過ごしていた。

が、流石にテスト一週間前ともなればこちらも死ぬ気で足りない脳に精一杯の知識を詰め込まなければならない。
そんな中こんな変態の面倒なんかみてられっかと匙を投げたはずなのに、何故かオレは奴と学校の図書室にいた。
何故かもなにも、ここなら雰囲気に圧倒されていつも通りには出来ないだろうとオレが連れ込んだんだけど。

入った瞬間静かであるはずの図書室がざわめき色めき立ったのはどう考えても高塚のせいなのに、眼鏡をかけた図書委員に咳払いされ睨まれたのは何故かオレ。
なんでだ。

「……」
「……」
「……森」
「……」

思惑通り、シーンとした空気の中流石のこいつでも普通に話すのは憚られるのか、暫くは大人しくしていた高塚。
だがやがて雰囲気に押し負け、ぽつりと小さく名前を呼んできた。
この状況ならいつものようなセクハラ発言は出来ないだろうざまーみろと心の中で呟き、視線をあげる。
目が合うと、にこーっと微笑むだけで何も言おうとしない。

用があるから呼んだんじゃねえのかこの野郎。

『なに』

ノートの端に書いて問う。
構ってもらえるのが嬉しいのか更に頬を緩ませる高塚。
こちらに合わせてか、筆談で答えが返ってきた。

『なんでもないよ。呼んでみただけ』
『うぜえ』

呼んで、のあたりで即返す。
何が呼んでみただけだ気色悪い。

『ひどい』
『勉強しろ』
『だってわかんないんだもん』

見ると、確かにテスト対策として配られた数学のプリントは見事なまでに真っ白。
お前この数十分一体何してやがった。
呆れた目を思い切り高塚に向けると。

『森見つめるのにいそがしかったし』

聞いてもいないのにこんな返事が返ってきた。
気持ち悪い。
返事の変わりに正面の奴の足を踏みつける。
忙しいくらい漢字で書け。

痛がる高塚を放って自分の勉強を進めていると、一人の女子が近付いてきた。
どうやら一学年下の一年生であるようだったが、どう見ても図書室には不釣り合いな格好。

「高塚先輩」

何事かと思ったが、発した名前に合点。
やはりこいつに用があったか。

「……何?」

オレにとってはありがたいが、二人きりの時間を邪魔され、一瞬不機嫌になる高塚。
それでもにっこりと対応するあたりが流石だ。

「あの、私この問題がどうしてもわからなくて……教えてもらえませんか?」

と、本当に使っているのかよと思うほどにぴかぴかの教科書を広げて言った。
おそらく高塚に近付くための嘘だろう。
ああ、そんなんやったなあと懐かしむ。

ていうかその作戦は良いのだが、高塚バカなのに教えられるのだろうか。
疑問が確信に変わるのに、五秒もかからなかった。

「あーごめんオレ全然わかんないから教えらんないやー。別の人に聞いて」

あははと笑いながらさらりと答える。
お前、一年のその問題解けないとかヤバすぎるぞ。
そして声がでかすぎるもっと静かに話せ。

「えーそうなんですかあ?」

あっさりと断られてしまった彼女は、次いでこちらを見た。
目が合ってしまい、ぎくりとする。

「じゃあ先輩、教えて下さい」
「……え」

矛先がこちらに向き、焦った。
こうなりゃ何が何でも高塚の近くにいようという魂胆なのだろうか。
気が付けばいつの間にか高塚の隣に座っていた彼女が教科書をこちらに向けていた。

拒否権なしですかコレ。
つかオレは自分のテスト勉強したいのになんだこれ。
だがまあ一問くらい良いかと教科書に視線を移すと。

「森ちゃんは今オレの勉強見てくれてるからダメ。他当たって。ね?」
「え?」
「あ……」


横から伸びてきた手が教科書を閉じたと思ったら、すぐに女の子に押し返していた。
文句を言いたくても高塚ににっこりと笑顔で言われては返す言葉もないのだろう。
だからといってオレを睨まないでくれますかどいつもこいつも。

「いっつも高塚先輩独り占めにしてずるいですね、先輩」
「……は?」

敵意剥き出しでそう言い捨て立ち去る彼女。
え、意味わかんねえ。
今のってオレが悪いんでしょうか。

わけのわからないオレに対して高塚はというと、物凄くキラキラした目をしていやがった。

「お、オレって森に独り占めされてんの!?超嬉しいんですけど!もっと独り占めして!」
「うっせえ変態オレがいつ独り占めした!?」
「そういえば今も独り占めしてるよね、つかオレも森の事独り占めじゃん!らぶらぶじゃん!」
「断じて違う!」
「……………すいませんけど、うるさくすんなら出てけよお前ら」
「「………あ」」

ぎゃんぎゃん騒いだところで言われた図書委員のセリフと同時に、荷物ごと外へ放り出されたのは言うまでもない。

「お前のせいで追い出された!」
「えー森だってうるさかったじゃん」
「誰のせいだよ!?」
「あんなコに教えようとする森が悪いんじゃん」
「はあ!?なんだそれ!」
「だって森はオレのだもん」
「オレはオレのもんだ!」
「うっせえええええ!!!痴話喧嘩は余所でやれ!!!」
「ち、痴話喧嘩……!」
「ちが、誤解……!」
「黙れ」
「……っ」

図書室の中から顔を出した委員の奴にぎろりと睨まれ、そもそも悪いのはこちらなので何も言い返せず。

「痴話喧嘩だって痴話喧嘩!嬉しい!」
「お前マジ黙れ!」
「だッ!?」

痴話喧嘩と言われて喜ぶ高塚に、拳骨を喰らわせ足早にその場を立ち去る。
その後暫く図書室への出入り禁止のお達しを受け、まともに出来なかった勉強の末、テストは散々たる結果に終わった。






end.


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