高塚くんと森くん

うりぼう

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クラスメイト考察記①

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※第三者視点



同じ学校の同じ学年に、狙った男は逃さないと豪語している女の子がいる。
確かにその子は可愛い。
そして今まで何度も「あの人いいな」と言っていた相手と付き合っては別れを繰り返していた。
だがそれは彼女の外見だけがもたらすものではなく、その口説き方というか、手口というのが一貫してあって。

まずは狙った男の子に髪を結んでと頼む。
さらさらな長い髪は、ほんの僅かに指を滑らせただけでシャンプーの匂いがほのかに香る。
アップにしてと頼み晒されたうなじは手入れの甲斐あって酷く白く綺麗。
それで男はあっさりと靡くらしい。

そもそもそんなもん自分でやれと言いたい。
百歩譲って他の女子に頼めと言いたいが、女友達より彼氏という考えらしい彼女が女子と親しくしているところはあまり見ない。

可愛いコに上目遣いに甘ったれた声で「お願い」と言われたら大抵の男は抗えないらしく。
結果男は見事引っ掛かり彼女と付き合い、何日か何ヶ月か経って彼女の興味が別の男に移った途端に無情にも切り捨てられるのだった。

そしてその子の新しいターゲットとなったのが、我が校一の顔だけ男、そう高塚くんだった。

それは体育の授業開始ほんの少し前。
着替えを終えた私達が続々と体育館へと集合した時だった。

「あ、髪結ぶの忘れちゃったあ」

と、たまたま近くを通りかかった高塚くんもとい獲物にそう声をかける。

「高塚くん、良かったら結んでくれないかなあ?」

おいおいおいやめろ高塚くん拒否れそいつはお前を狙ってるぞ、つかターゲット高塚くんかい!と心の中で叫んだ。

いやでもよく考えたらこの高塚くんというのは同じクラスの森くんという抜きん出て良いところもなければ悪いところもない男に公衆の面前で告白をかました男だ。
殴られ蹴られ全力で拒絶されているのにも関わらず、なんで、と問いたくなるくらいに森くんにベタ惚れ。

きっと断るだろうと思っていたのだが、所詮心の声は心の声。

「いいよー、いっこで良い?」
「うん、よろしくー」

高塚くんはあっさり了承。
張り合いがないにも程がありすぎる。
手先は器用なのか、意外にも綺麗に纏まっていく彼女の髪。

途中何故か高塚くんの手が止まり、どこか感触を確かめるかのように髪を撫でた。

「……高塚くん?どうかした?」
「え?あ、ううん!なんでもない!」

はは、と照れたように笑う高塚くんに、彼女はおそらくかかったなと思ったはず。
満足気に笑む彼女に、高塚くんもにっこりと男前な笑みを浮かべた。

「ねえ高塚くん」
「あ、森ちゃん!」
「え」

後に会話を続けようとした彼女をさらりとシカトし、高塚くんは少し離れた所にあるもう一つの入り口から出てきた森くんの元へと駆けていった。
そして……

「もうっ森ってば着替えの後どこに消えてたの?すっげえ探しちゃったじゃん!」
「うるせえうるせえオレがどこで何しようが勝手だろ」
「あ、トイレ?トイレ?ダメだよトイレ行くならオレも着いてってあげるから言わないと!」
「なんでお前と一緒に行かなきゃなんねんだよ!」
「冷たい」
「はいはい冷たいですよオレの心は南極の氷よりも分厚く堅いですよだから優しーい女の子にでも乗り換えたらいかがですか高塚くん」

言った瞬間、高塚くんの目がきらりと光った。

「見てたの?」
「見てねえよ」
「嘘だー見てたんでしょ?ねえ妬いた?妬いた?ヤキモチ妬いた?」
「はあ?妬かねえよアホか」
「またまたそんな事言って!」
「むしろ向こうに行ってくれた方がすっげえありがたいんですけど」
「ていうかオレはてっきりあっちに鞍替えすんのかと思ったんだけど」

石野くんが話に加わる。
なんというか、人目を憚らずに男の子口説ける高塚くんって凄いなと改めて思ってしまった。

「はあ?なんで?」
「途中照れて気持ち悪く頬染めてたから」
「ああ」

あれか、と呟き。

「いやあ思わず森の髪と比べちゃってさあ、やっぱ森のが触ってて気持ちいいっつーかさあ」

ああやっぱりかー。
うん、そうだよね。
キミは高塚くんだもんね。
そうなるよね。

「ばっかじゃねえの」

恐らくほぼ全員の気持ちが一致した中、高塚くんの発言に心底嫌そうに顔をしかめて吐き捨てる森くん。

それに対して例の彼女はというと、全く思いもよらなかったセリフにピシリと固まっていた。
彼らは聞こえていないとでも思っているのだろうか。
残念ながら丸聞こえだ。

「だってほんとに森の髪のが触ってて楽しいしうなじだって森のがそそるんだもん」
「だからキモイんだっつーのなんなんだよお前はあああ!!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ連中を余所に、彼女の専売特許がさすがの高塚くんには通用しなかった事に、悔しそうに唇を噛んでいた。
プライドずたずたなのだろうか。
同じく彼らの会話を聞いてしまっていた女子連中が噴き出しているあたりも彼女の癇に障るのだろう。

これはまだまだ一波乱ありそうだな、と。

女の勘が告げるのと同時に、授業開始を報せる軽快なチャイムが鳴り響いた。




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