高塚くんと森くん

うりぼう

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修学旅行編③

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あの後オレ達は軽く散歩してから早々に引き上げたのだが、四人はぎりぎりまで粘ったにも関わらず結局一人も捕まえられず、がっくりとうなだれて帰ってきた。

「あんな短時間で捕まえられるわけねえよなあ」
「高塚がいればなんとかなったかもしれねーのに」
「でもそしたら高塚一人勝ちになっちゃうから意味ねえよ」
「ま、でも楽しかったから良いじゃん」

今日はほぼ一日自由行動。
その場までバスで移動している最中に昨日の反省会らしきものをして、最終的には石野がさらりと締めた。

そして矛先がこちらへ。

「で、お前らはどこまで行ったの?」
「ラーメン食ってその辺ぶらぶらしてた」
「二人で?」
「他に誰がいるんだよ」
「ちょっ、デート!?それデートじゃん!」
「やるなあ高塚!」
「え、何もう喰われた?」
「とうとう脱バックバージン!?」
「違ええええ!!!」

ラーメン食べて散歩しただけなのに何故そこまで話が吹っ飛ぶ。
高塚もニヤニヤしてないで反論したらどうなんだ。
そんな思いをこめて奴を伺う。

「もうね、ラーメンふーふーしながら食べてる森が超かわいくて!しかもちょっとぶらぶらしてみない?って聞いたら素直に頷いちゃって!マジあのままラブホ行っても着いて来たんじゃねってくらいぴったりオレにくっついて回ってもうオレ鼻血堪えんのとか超大変だった!やっぱ何、開放感っての?あの雰囲気なら手くらい繋いでも怒られなかったんじゃないかな?あああ繋げば良かったー!」
「いやお前いい加減にしろそんな事公衆の面前でしてみろ、熱湯に顔面突っ込ますくらいじゃ済まさねえからな」
「やだ森ったら突っ込ますだなんて!いつでもいれてあげるから今はがま、ッがは……!」
「……」
「……とうとう無言で手を上げるまでになったか」
「でも結構我慢したんじゃね?」
「オレなら告られた時点で無言で簀巻きにするわ」
「オレは頭突きかな」
「オレ柔道部の部室に放り込んで性根叩き直して貰う」

無言で頭に拳骨を落としたところ、それぞれが淡々と感想を述べた。
しまったオレもアメフト部あたりにこの変態放り込んでくるんだった。

馬鹿な話をしている内に現地へと着いた。

「一時にまたここに戻ってくるように!わかったかお前らー!」

そう言う担任に元気な返事を返す。 
行くとこ行って昼を各自自由に食べてからの集合だ。

「よし!じゃあ移動するか!」

まず向かうのはオルゴール館。
特に興味があるわけではないけれど、地元に帰ってから書く感想文のネタにはなるはずだと選択。
大小様々なオルゴールがあった。
ひとつひとつの細工が細かくておいそれと触るのが恐ろしい。

「お前にこれいいんじゃね?」

佐木が笑いながら指さしたのは明らかに結婚式のような真っ白なドレスとタキシードを身にまとった人形付きのオルゴールだった。

「ふざけんなお前」
「なんで?高塚に買ってもらえばいーじゃん記念に!」
「何の記念だアホ!」
「なあに?森ちゃん欲しいのあったの?買ってあげようか?」
「いい!お前はオレなんかに金使うな!」
「なんかじゃないもん、好きなコだもん!好きなコには何でも買ってあげたいじゃん!」
「もんとか言うんじゃねえよ!」

ぷくりと頬を膨らませて言う高塚に対して上がった悲鳴は聞かなかった事にしよう。

その後何カ所か周り、昼食をとった後に集合場所へ。
更にバスで移動して某都市のホテルへと行き部屋に荷物を置いて、さあ再び自由行動だ行くぞと部屋を出ようとしたところで高塚に呼び止められた。

「森ちゃん、ちょっと良い?」
「ん?」

どうかしたのかと背後にいた奴を振り返る。

「これあげる」
「何?」

そんなセリフとともに小さな箱を渡された。

「何これ?」
「オルゴール。あの後買ったんだ」
「は!?え、でも……」
「森ちゃんはいらないって言うかもしれないけど、記念だからさ。お願い、貰って?」
「っ、あ……」

貰えない、貰う理由がないと突っぱねる前に高塚はさっさと部屋を出て行ってしまった。

あのまま話していたらこれを返されるとわかっていたのだろう。
みんなの前で渡せば確実に周りにはやし立てられて貰わざるを得ない状況になる事もわかった上で、あえて二人の時に渡したのだ。

(……どうしよう)

何も考えずに貰ってしまえば良いのだろうけど。

『好きなコには何でも買ってあげたいじゃん』
『お願い、貰って?』

高塚の気持ちを考えると、本当にそれで良いのかなと疑問に感じて。
一人取り残された部屋で、暫く立ち尽くしていた。










返そうかどうしようか悩んでいたのだがまさか高塚の鞄に置くわけにもいかず。
あのオルゴールは結局オレの鞄にひっそりと納まった。

(……マジでどうしよう)

一回貰った物を突き返すのも悪いが、かといってこのまま貰ってしまうのもどうだろう。

「森」

いややはり貰うべきか。

「もーり」

いやいやでもやっぱり……

「おーい、森」
「っ、え?」

こつんと肩を小突かれて振り向くと、佐木が後ろにいた。
ぐるぐると考えていたせいで声が聞こえなかった。

「何ぼーっとしてんだよ。次行くぜ?」
「あ、うん」

促され、ずっといたらしいディスプレイの前からどいて移動する。

途中でアイスを買った。
正直この寒い中でアイスって、と思ったけれど、味は文句なしにうまい。
歩きながら食べていると、すすすと隣に佐木が寄ってきてニヤニヤと何やら楽しそうな笑みを浮かべた。

「何?」
「なあなあなあ、高塚から貰った?オルゴール」
「ぶほッ!?」

徐にそう問われアイスを噴き出してしまった。
いや待てちょっと待て何で知っているんだあの時部屋には誰もいなかったはずなのに。

「うわ、きったねーなあ
「な、何で!?」
「えー?だってあの後超悩んでたもん高塚。だからお前の好みっぽいのをすすめといた」

冗談で言ってはみたものの新婚さん用っぽいのはいくらなんでもありえないだろうという事で、別のやつにしたらしい。
こんくらいの大きさのやつだっただろ、と示されたのは確かに貰ったのと同じくらいの大きさ。

「結構シンプルで、なんつー曲かわかんなかったけど良かっただろ?」

なんて余計な事を。
ついでに部屋に二人になるように仕向けたとにこやかに語る佐木にそんな事を思ってしまった。

「……」
「?どうした?あれ、もしかしてまだ見てない?」
「今まさにそれをどうしようか悩んでたとこ」
「何で?」

きょとん、と心底何を悩んでいるのかわからないといった風に目を瞬かせる佐木。

「だって、意味わかんねえよ。普通記念だからって何か渡すか?クラスメートに」
「好きなコには渡すだろ」
「……気持ちに応えらんねえのに?」
「関係なくね?そういうのって、貰ってくれるだけで嬉しいもんだろ」
「……」

そういうものなのだろうか。
とすると、一度貰ったものを返すのは逆に高塚を傷付けてしまう事になってしまうのか。

でも貰いっぱなしというのも気がひける。
特にオルゴールなんて、小さいものでも結構なお値段がしたはずだ。

「つーか何そんなに悩んでんだよ?そっちのが意味わかんねえし」
「だって」
「だってもクソもねえよ。大体高塚の気持ちに応えられねえのに、とか言ってっけど、お前があいつを拒否んのなんて今更じゃん」
「……」
「あれあげるから何かしてって言われてるわけでもないし。貰いっぱなしが嫌ならお前も何かあげれば良いじゃん」
「!!それだ!!!」
「ん?」

そうだ、そうだよ。
貰いっぱなしが嫌ならオレも何かあげれば良いんだ。

「なんだよたまには良い事言うじゃん佐木ってば!」
「たまにはってなんだよ」
「そうと決まればお返し探しだ!佐木、付き合って!」
「は?ああ、まあ良いけど……」

貰って、あげて、とそれでプラマイゼロだとオレは単純に考えてしまっていたのだが。

(……プレゼント贈り合うとかそれこそカップルみたいなのは……気付いてねえな、この様子だと。まあいっか面白そうだから)

佐木の心の声は、そうと決まれば何をあげようかと真剣に悩んでいたオレには、残念ながらこれっぽっちも届くことはなかった。




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