高塚くんと森くん

うりぼう

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修学旅行編④

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午後の自由行動が終わり、ホテルに戻ると夕食の準備が既に出来ていた。

「うわっ」
「なにこれすげえ!」
「超良い匂い!」

たっぷりの野菜とこれまたたっぷりのラム肉。
ジンギスカン食べ放題である。

漂う匂いにあちらこちらから盛大に腹の虫が鳴き出す。
それはもちろんオレ達の班も例外ではなく。

「いただき!」
「あ!てめ、肉ばっか取るんじゃねえよ!」
「早いもん勝ちに決まってんだろ!」

なんて、挨拶もそこそこに、ガツガツと食べ始めた。
初めて食べたけれど思ったよりも柔らかく、味付けがまた絶妙でいくらでも食べられそうな感じ。
最後の夕飯はどんなのだろうと期待していた以上のものに、大満足だった。

夕飯の後は大浴場へ。
その後昨日抜け出したオレ達の部屋で見回りしていてくれた奴らに代わり、今日はオレ達が見張りをする番だ。

とはいえ今日は先生達も飲み会をやる予定らしく、気を張る必要はなさそうだ。
一先ず見回りの時間まではのんびりと過ごし、たまに様子を見に行ったりしているうちに抜け出していた面々が早々に戻ってきた。

まだ日付の変わる前。
こんな日にさっさと寝てしまうなんて勿体無いと、皆自然と目がさえ話に花が咲く。
女子連中も集まってきたからそれもそのはず。

「森ちゃん、ジュース飲まない?」
「ん、飲む」

わいわいと騒ぐ周りとは少し外れたところにいると、高塚が隣に来た。
話したい事があるからちょうど良かった。

「……あのさ」
「ん?」

受け取ったジュースの缶を指で弄びながら少し小さめの声で話す。
聞かれて困る話題ではないけれど、なんとなく声を大にしてするのは躊躇われた。

「昼間、オルゴールくれたじゃん?それで、貰いっぱなしは悪いから、なんか返そうと思ったんだけど」
「え?そんなの気にしなくていいのに!」
「オレは気になるの!……つか、でも結局良いの見つからなくて」

そう、佐木を連れ回し、オルゴールのお返しに見合うものを探したのだがこれというものが見つからなかったのだ。
悩み過ぎて選びきれなかったと言っても過言ではない。

高塚はというと、オレがそんな事をするとは思っていなかったらしく、おまけに自由行動の時にちょいちょい避けられていた事の合点がいったのかほっと胸を撫でおろしていた。

「だから良いってば。オレが勝手にしたんだから」
「駄目!こっちで買うのは無理だったけど、帰ったら何かお礼するから考えといて」

明日は洒落たものを買えるようなところには寄れないため、思いついたのはそんな事だった。

「……それって何でも良いの?」
「あんま変な事じゃなければな」

誕生日に手を繋いで帰ったのは記憶に新しい。
ああいうのはちょっと、という思いをこめて告げたセリフなのに。

「うんっ」

高塚は本当に嬉しそうに笑った。
その顔は文句なしにかっこ良くて、不覚にも一瞬言葉に詰まってしまう。

「だ、だから、あれはありがたく貰っておく」
「うん」
「……ありがとな」
「も、森ちゃんったら超かわいいいいい!!」
「だから抱きつくなっつーのおおお!!」
「だって何そのちらって横目で見る感じ何その照れてる感じ可愛いに決まってんじゃん!」
「うるせええええ!!!」
「どっちもうるせえっつーの!先生来んだろうが!」

学校にいる時と同じように叫ぶと、思いの外声が響いてしまい、周りの注目とともにお叱りを受けた。

「っ、だ、だって高塚が……!」
「あ!やべえマジで来た!見回り!隠れろ、つーか寝ろ!寝たフリだ!」
「マジで!?」

念の為にと見た廊下の端から本当に先生がやってきたらしい。
即座にみんながばたばたと動き出す。

「布団入れ布団!」
「ほら高塚!森も!」
「え?」
「わっ!?」
「電気消すぞ!みんな動くなよ!」

腕を引かれ乱暴にその辺に放り込まれ上からばっさばっさと布団をかけられると同時に視界が真っ暗に。

「ちょっ、くっつくな!」
「しょうがないじゃん狭いんだもん……っ、ああ、でも良い匂い」
「このアホ……!」

一つの布団に放り込まれたために必然的に密着。
状況が状況なために小声で怒鳴ってはみたものの効果が全くない。

昼間のシリアスどこいった!

「ダメだよ森ちゃん暴れないで!」
「お前が変なとこ触んなきゃ暴れねえよ!」

腰やら足やらを触られて、その手をどかそうともがいていると。

「っと……」
「……」

バランスを崩したらしい高塚が覆い被さるように倒れてきて。

「……」
「……」
「……」
「……っ!」

…………え 


「もう出てきて良いぞー」

先生はもう行ったのだろう。
明るいほっとしたような声がして、パッと電気が点く。
と、同時に高塚が勢い良く起き上がったため体から重みがなくなった。

「……森?いつまで寝てんだよお前。もう先生行ったぜ?」
「高塚も何固まってんの?」

枕に頭を預けたまま動かないオレと、その傍らで座り込む高塚。
そんな二人に、どうかしたのかと様子を伺う周囲。

どうかも何も

(……え?今……え?)

唇に触れた柔らかいものに、オレは暫くその場を動けずにいた。










最終日、タワーを見学したりお土産を買ったりしたはずなのに、昨晩の出来事が衝撃的すぎてほとんど何も覚えておらず。
いつの間にか終わった解散式に、気付けば母親の車で家へと向かっている最中だった。

「……」

あの時触れたのは明らかにあいつの唇で。
男とキスなんて冗談じゃないと感じるよりも先に湧き出た恥ずかしさは、一体何だったのだろうか。

答えはまだ導けそうにない。









end

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