高塚くんと森くん

うりぼう

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来る者拒まず去る者追わず

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「なあ森」
「何?」
「……お前、またあいつとなんかあっただろ」
「っ、え?!」

石野にそう聞かれ、びくりと肩が跳ねた。

「な、な、なんの話?」
「どもりすぎ。目線泳がせすぎ。お前嘘吐くの下手だなあ」
「う、うるせえ!別に高塚となんか何もねえよ!」
「オレ、高塚となんて言った覚えないんだけど」
「っ、あ……!」
「ちょろいな」

ふっ、と笑われて、自ら墓穴を掘った事に気付いた。
ちくしょう、なんで名前出したんだオレ。

「それで?何があったんだよ?」
「な、何っていうか……」

厳密に何、とは言い難いのだが。
高塚に押し倒されるような体勢になった時、妙に恥ずかしくて。
とてもじゃないけど高塚の顔を見ていられなくて。

(だってどういう顔したら良いんだよ……!)

あんなあからさまに真っ赤になった顔を見られてしまって、どうしたら良いのか全く見当がつかないのだ。

(まあ、だからとっさに逃げちゃったんだけど……)

一度逃げてしまったら最後。
あれからまともに高塚の顔が見れないのだ。
毎時間の休み時間に会いにくるけれど、思い切り避けてしまっている。

(……キスしたときにはお互いに避けてたからあんまり気にならなかったけど……)

今回はオレ一人が避けまくっているので、高塚も訳がわからないはずだ。
その度に悲しそうな顔をする高塚には気付いているけれど、ここで普通通りに接する事が出来るなら今のオレはいない。

「……まあいいけどよ」
「……え?」

ぽつりと石野がそう呟く。
そして。

「でも、避けまくってっと流石の高塚も飽きちゃうかもなあ」
「……え」

そんな事を言い出した。

「あいつ前は結構遊んでたって知ってるだろ?来るもの拒まず去るもの追わずだったからさ。クラスも離れちゃったし、顔だけはいいから周りがほっとかないだろうし、遠くの振り向いてもくれない奴より、近くに寄ってきてくれる奴に走っても不思議じゃねえよなあ」
「……っ」

石野のセリフに心臓がぎゅっとなる。

飽きる?
高塚がオレに?
飽きるって事はもうオレには話し掛けないってことか?
いや、あいつの性格からして極端に避ける事はしないはず。
でもそうしたら他の誰かと付き合うって事か?
オレにしたみたいに構って、オレに笑うみたいに笑って。
甘えるのも、抱きつくのも、そういうのも全部、

(……オレ以外に……?)

その様を想像し、どくりと心臓がひとつ跳ねた。













(……オレ以外の誰か……)

さっき石野に言われた事が頭の中をぐるぐると回っている。

飽きられる。
来るもの拒まず、去る者追わず。
遠くの振り向いてもくれない奴より、近くに寄ってきてくれる奴。

石野に指摘されるまでもなく、よく考えてみればその通りだ。
誰だっていつまで経っても振り向いてくれない、しかも男相手よりも、近くにいる可愛い子の方が良いに決まってる。

(……くそっ、だからなんでこんなにもやもやするんだよ……っ)

考えれば考えるほど胸の中に嫌なものがどんどんと溜まっていって。

「……あ」

気がつけば、高塚の教室の前まで来ていた。
全くの無意識な所が怖い。

(……避けてるくせに何やってんだよオレ)

はあ、と溜め息を吐き踵を返そうとしたその時。

「えー?マジで?やだー!高塚くんってば!」
「!」

教室の中から聞こえたそんな声に、足を止める。
恐る恐る中を見てみると、そこには笑顔の高塚と、その腕に手を置く可愛い女の子の姿。
それを目に入れた瞬間、なんとも言えない感情に全身を支配され。

「……っ」

オレは、足早にその場から立ち去った。






end.

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