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普通の友達
しおりを挟むあれから数日。
「……最近高塚の奴来ねえなあ」
「……っ」
ぼそりと呟いた石野のセリフがぐさりと突き刺さる。
確かに、毎時間のようにやってきていた高塚が、ここ数日は全くと言っていいほど来ていない。
避けるまでもなく、会えていないのだ。
「やっぱり飽きちゃったのかねー」
ぼそりと呟く石野。
自分から避けておいてなんだが、こうして高塚が会いに来ない事にもやもやとしたものが溜まっていく。
「……別に、クラスが違うんだからいつも入り浸ってる訳にはいかないだろ」
そうだ。
元々こっちのクラスに入り浸っていた方がおかしいのだ。
だからあいつが来なくたって良いじゃないか。
もやもやを誤魔化すように、そう言った。
*
意味ありげな視線を寄越してくる石野といるのがいたたまれなくて、そそくさと廊下に出ると。
「……あ」
またしても高塚を見かけた。
隣には以前にも教室で一緒にいた女の子の姿。
(……またあの子と一緒かよ)
明らかに好意を持たれているのに、二人きりでいるなんて。
オレの所には来ないくせに。
(……って、何考えてんだよ!)
自分の考えに即座に突っ込みを入れる。
別に来なくたっていいじゃないか。
来なくてせいせいする。
せいせいする、はずなのに。
膨れ出すもやもやは、一体何なのだろうか。
「ねえねえ、高塚くんって彼女いないの?」
「え?彼女?いないよー」
「ほんと?!」
そしてそんな二人の聞きたくもない会話を壁に凭れながら聞くこの虚しさ。
盗み聞きなんかでは断じてない。
オレの行きたい方向にあいつらがいて、そこで止まってるのが悪いんだ。
なんて、誰に言っているんだかわからない言い訳を心の中でした瞬間。
「そういえば、森くんって子と噂になってなかった?」
「……!」
自分の名前が出てきた事に驚く。
「森ちゃん?」
「うん。付き合ってるの?」
無邪気に問う彼女。
オレはというと、高塚がどう答えるのかわからずに思わず更に聞き耳をたててしまった。
まさか口説いてるとか言わないよな?
そんな誰だかわからない奴に、好きだとか言わないよな?
なんて思ってしまったが。
「……ううん、付き合ってないよ」
「!じゃあ普通の友達?」
「うーん、まあ、そうなるかな?」
「……っ」
そんな心配は無用だったようだ。
普通の友達だと訊ねる彼女の言葉に、僅かに首を傾げながらだが高塚は確かにしっかりと頷いた。
同時に、何故だかガッカリとした気分が襲ってくる。
(普通の、友達?)
高塚が頷いた言葉に妙な引っかかりを感じる。
そして更に……
「えーじゃあさ、じゃあ私なんてどう?付き合わない?」
なんて言う彼女。
きゃっきゃとしていて断られるなんて微塵も感じていないその言葉。
さらりと言えるそんなセリフ。
オレには絶対に言えないセリフだ。
「え?」
高塚が驚いたような声を出す。
けれどオレはそれ以上二人の会話を聞いてなんていられなくて、すぐその場から走り去ってしまった。
付き合ってはいない。
オレと高塚は普通の友達であることに間違いはない。
確かにそうなんだけど。
(……なんだこれ……っ)
もやもやが更に膨らみ、それにイライラも加わる。
高塚は何て返事をしたのだろうか。
聞いていないんだから当然知らない。
知らないけど知りたいと望んでしまっている自分もいる。
(……くそっ)
走ったからなのか。
それとも高塚の言葉にショックを受けたからなのか。
ばくばくと激しく脈打つ心臓の鼓動は、しばらく治まってくれそうになかった。
終わり
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