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カミングアウト
しおりを挟む「それで?」
「……」
授業が終了すると同時に石野が肩肘を付きにっこりと笑う。
絶対聞かれるだろうな、と思っていたが案の定だ。
「まあ聞くまでもないと思うけどなあ、その表情じゃ」
「その表情って……」
「真っ赤。りんごみてえ」
「っ、え?!」
引いたと思っていたのにまだ赤みが残っていたようだ。
ぺたぺたと頬に触れると確かに少し熱い。
「とうとう自覚したか」
「う……っ」
「それで?好きだって言ったのか?」
「そ、それはまだ……」
「言ってねえのにあいつあんなにヤニ下がってたのか?……まあそんな顔してりゃすぐバレるか」
にやにやと笑いながら言う石野に、オレはもう顔を上げる事すら恥ずかしい。
机の冷たさが気持ち良い。
「早く言っちゃえよ。後になればなる程言い難くなるぜ?」
「それはわかってるけど……」
気持ちを伝えた方が良いのはわかっている。
高塚はいつもバカみたいにまっすぐに伝えてくれたし、今日のあの反応を見ても喜んでくれるのはわかっている。
だがしかし。
「何だよ?何か問題でもあるのか?」
「だって、今更じゃねえ?!」
「は?何が?」
「だから、あんな散々拒否しておいて、今更す、すすすす……とか!言い難いじゃん!それに男同士だし!」
「おいおい今更じゃねえ?あいつは森からそういう目で見られたくてあんなに頑張ってたんだぜ?」
「っ、それは、そうだろうけど……!」
それでもまだ躊躇ってしまい踏ん切りがつかない。
わかってる、高塚が今更だとかそんな事思うやつじゃないって。
わかってるけどこっちの気持ちが何だかもやもやしてしまうのだ。
そんなオレに石野が大きな溜め息を吐いた。
「なあ、いいこと教えてやろうか」
「え?」
いいこと?
いいことって何だ?
と、首を傾げつつ石野の言葉を待つ。
楽しそうに目元を細める様は狐のようだ。
「たまに教室にくる後輩いるだろ」
「ああ、幸太くんだっけ?それがどうかしたのか?」
「あれ、オレの彼氏」
「………………………は?!」
衝撃的な発言をした。
「はあああああああ?!」
まさかのカミングアウトに度肝を抜かれる。
落ち着けオレ落ち着いてらんねえけど落ち着けオレ、こんなの大声で話せることじゃねえよな、と小声で確認する。
小声も何も最後まで言えなかったけど。
「か、かかかかかれ……?!」
「彼氏」
「マジで……?!」
「このタイミングでそんな嘘吐くかよ」
衝撃的すぎてどもってしまうオレに、石野は至って冷静だ。
なんでそんなに冷静に言えるんだよ石野。
いつもの冗談かとも思ったが、石野の表情は笑顔の割に冗談を言っているようには見えない。
「まあ、男同士ってので悩んでるならこうしてここに仲間もいるんだぞってわかってれば気が楽だろ?」
「!」
ぐしゃりとオレの髪を掻き乱してそう言う石野は、同い年なはずなのにずっと頼り甲斐がある。
男前すぎるだろ石野。
「石野って顔だけじゃなくて中身もカッコ良かったんだな」
「ははっ、それこそ今更だろ」
思わず言ってしまったセリフに、石野が声をあげて笑う。
謙遜の欠片もない返答だがそれがまたカッコイイ。
「まあ、言わなくても伝わってるとは思うけど、あいつを喜ばせたいならちゃんと言葉に出してやった方がいいぜ」
「うん、わかってる」
石野の言葉にこくりと頷く。
高塚がまっすぐに想いを伝えてくれている時点で、オレが伝えないという選択肢はない。
(……よし!)
自分の気持ちをしっかり伝えようと、大きく息を吸い込む。
(やるのは、放課後だ!)
決意を固め、目標を定める。
その後、宣言通りに昼休みに教室にやってきた高塚と一緒にご飯を食べ、恥ずかしさを押し込めてなんとか無事にやり過ごしたその更に後。
ついに、放課後がやってきてしまった。
終わり
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