高塚くんと森くん

うりぼう

文字の大きさ
47 / 71

いたたまれないにも程がある

しおりを挟む




空き教室の中で暫く身を寄せ合う。
もうそろそろ教室に行かなければ授業が始まってしまう。
それはわかっている。
わかっているけれど。

(……なんか、離れたくねえな)

以前はあんなに嫌で嫌で仕方がなかったのに。
オレよりも上背のある男に抱きしめられて、安心なんて出来るはずがないのに。
なのに、こうして一度想いを自覚してしまった後ではこの腕の中が心地よくて離れ難い。

(って、何考えてんだよオレ!)

自分の考えに自分で突っ込みを入れる。

(離れ難いじゃねえよ離れろよ授業始まるだろ……!離れろ!離れるんだ……!)

自分に必死でそう言い聞かせているというのに。

「森ちゃん」
「……っ」

肩口に埋めた顔をぐりぐりと擦り付けられ、愛おしそうに名前を呼ばれてしまえば全身から全ての力が抜け。
離れなければ、なんて思っていた事など遥か
彼方へと吹き飛んでいってしまった。

とはいえ、やはりずっとこのままでいられるはずもなく。

キーンコーンカーンコーン

「!」
「!」

鳴り響く予鈴の音に、二人で体を震わせる。

「……鳴っちゃったね」
「……ああ」

もぞもぞと動き、どちらからともなくゆっくりと腕の力を緩める。
温もりが離れると少し寒い気がする。

(……っ、恥ずい……っ)

改めて高塚と視線を合わせると、これ以上ないくらいの恥ずかしさが襲ってきた。

(赤くなってねえかな、くそっ、いたたまれねえ……っ)

思わず俯き、少しでも顔を隠そうと手の甲を口元に当てる。
頬は熱く火照っていて、きっと赤くなってしまっているだろう。

「ねえ森ちゃん」
「っ、な、何?!」

そんな頬をふにふにと弄られながら名を呼ばれ、びくりと過剰に反応してしまった。
高塚はそれを気にすることなく、にこにこと締まりのない笑みを浮かべている。

「あのさ、今日の帰り迎えに行ってもいい?」
「え?」
「嫌?」
「べ、別に嫌ってわけじゃねえけど……」

今まで伺いなんて立てた事なかったのに、何を今更と思いつつ返事をする。

「本当?それじゃあ授業が終わったら、ていうか昼休みにも一回来るからね!」
「……あ、ああ、わかった」

カップルみたいな会話にいたたまれなさが増した。













「……別に送んなくてもいいのに」
「いいからいいから!少しでも一緒にいたいの!」
「っ、バカじゃねえの……っ」
「へへっ、うん、バカだもーん」

その後、必要ないというのにわざわざ教室までオレを送ると言い張った高塚。
まだ素直になれないオレがしどろもどろで変な対応をしてしまうのにも始終笑顔を浮かべている。
この調子だとオレの気持ちなんてもうすでにバレバレなんだろうなあ。

「おー、高塚!なんだ久しぶりだなあ」
「あ、先生」
「まーた森に構ってんのか?もうすぐ授業始まるから自分の教室戻れー」
「わかってますって!」

やって来た先生とそんな話をした後。

「それじゃあね森ちゃん!また後で!」
「!!!」
「……わーお」

ついさっきまでの優しいものとは違った力強さで抱き寄せられた。
ぎゅっと一瞬だけ抱き締め颯爽と去って行く高塚。

すぐ傍で感心したように呟く先生と、一斉に騒がしくなる教室の中。

(あのバカ……っ、せっかく落ち着いてきてたのに……!)

あっという間にばくばくと激しく脈打つ鼓動に、いたたまれなさが最高潮に達したオレはダッシュで席へと戻ったのだが。

「……もしかして?」
「何も聞くな!言うな!」
「はっはーん」

何かを察したかのような石野の視線からは逃げる事が出来ず。
授業が終わると共に色々と話すハメになるんだろうなあと思いつつ、オレは火照りっぱなしの頬を静める事に集中した。






終わり
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

殿堂入りした愛なのに

たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける) 今日からはれて高等部に進学する。 入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。 一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。 両片思いの一途すぎる話。BLです。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

処理中です...