【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)

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11.

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 馬車に乗って、王宮に向かう。
 
 その間にも、王子殿下はうきうきと声をかけてきたが、無視をした。
 話す内容など頭に入ってくるわけがない。
 
 自分のこれからをどうするか、考えるだけだった。

 今の段階で逃げ出すことはできない。
 チャンスを待つしかないのだろうか。
 
 王宮につくと、二階の客室であろう部屋に通された。

 広くて明るい。
 煌びやかな装飾が美しかった。
 母から聞いたことがあったが、これほどまでに豪華だとは思わなかった。母の空想だと思っていた。
 
「どうだい?美しい部屋だろう。自分の部屋だと思ってゆっくりすれば良い。
 そうだ、明日にでも、父と母に紹介しよう。イザベラに礼儀作法を習っていたんだって?僕のためかな?
 うん、そうだ。君は孤児だったよね。公爵家のご落胤とか理由をつけて、養女にして、僕と結婚しよう」

 独り言のように語ってくる。

 結婚?
 できるはずなどない。
 異母兄妹であろうと、この国での近親婚は認められていない。
 私は王子殿下の、貴方の義姉になるのだ。
 公爵家のご落胤の前に、元公爵令嬢の娘。
 
 こうなれば、国王陛下に自分の正体を言うべきなのか?
 いや、駄目。
 母は私を守ろうとしていた。隠していた。
 言えば、になれただろうに・・・。
 だから、知られては駄目。

 私は・・・知識がある。
 母が語ってくれた。あれはきっとこの王宮のこと。
 夢のような煌びやかな世界。あの時は、夢物語だと、空想だと思っていた。でも、自分の出自を知り、母の正体を知っている今は、それが嘘でない事を知っている。ここに現実がある。
 きっと、手がかりがある。

「湯にでも入ってゆっくりしてくれ」

 王子殿下はそれだけ言うと出ていった。
 侍女にお風呂に入れてもらったり、マッサージをしてくれたりする。
 落ち着かない。
 貴族とは、こんなことが普通なのだろうか。
 
 晩餐だからとドレスも着せてくれる。
 私の体型に、ぴったりと合うのが一段と怖い。

 王子殿下が晩餐の誘いに来て、誉めてくる。

「似合ってるよ。用意してたがある」

 あぁ、気持ち悪い。
 吐き気がする。

「食欲がありません。出て行ってください。今はまだ、整理したいです。明日までは王子殿下の顔は見たくありません」

 うっとりと見てくる。
 ゾワゾワと鳥肌がたつ。
 殴ってやりたい。
 
「わかった。じゃあ、明日の朝は一緒に食べようね」

 近づいてくると、私の手にキスを落とした。

「ひっ・・・」

 よく王子様とお姫様のお話にでてくるシーン。いいな・・・と思ったことはある。
 でも、こんなに気持ち悪い物だとは思いも寄らなかった。
 今すぐにでも拭いたい。
 我慢だ・・・。
 早く出て行って・・・。

 王子殿下が出て行ったの見て、足に力が入らず、座り込んでしまった。

「大丈夫、ですか?」
「大丈夫、です。お願いです。今は・・・明日まで、一人にしてください」
「ですが・・・」

 侍女が言い淀む。

「私が逃げるとでも?どうやって・・・?」
「あっ、すいません」

 謝ってくるメイド。
 ペコペコとする彼女にさりげなく聞いてみる。

「北はどっちですか?」
「星を見るくらいは構いませんよね。北極星ポーラスターを見るのが好きなんです」
「それなら、こちらの方向です」

 侍女は北を指し示してくれると、出て行ってくれた。

 立ち上がると震える身体にムチ打って動き出した。手近な棚や机を引きずってきて、扉の前に置く。バリケードを築き、扉を開きにくくするのだ。
 終わると、ベッドを捲るとシーツを剥いで、それを裂いた。
 それを結んでロープにしていく。

 ベッドにはそこらにあるクッションを人型に置いて、その上に布団をかぶせた。

 孤児院育ちをなめるな。
 人の目を欺いて時間稼ぎをする遊びをどれだけしたことか。悪戯仕込みを見せてやる。

 それに、ご令嬢のように脱走できないわけではない。彼らの思い込みを逆手にとって、逃げてやる。
 

 今しかない!!
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