【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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17.レイチェルの過去

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 あたしは伯爵の娘。
 一人の兄と三人の姉がいる。でも血は半分だけしか繋がっていない。
 なぜなら、あたしは父親の妾の子だからだ。

 メイドをしていた母。美しいからと手をつけられ、あたしが生まれた。

 形だけの伯爵令嬢。
 それもあって教育なんてまともにしてくれなかった。
 母と共に下働き同然の毎日。
 姉たちにこき使われる日々。

 でも、全てが変わったのは十三歳の頃。

 侍女頭に頼まれて姉たちの香水買い物に出かけた時、一人の男に出会った。

 姉の好きな香水を売っている店に入れば、先客がいた。フードを被った男がここの店主に新作の香水か何かを力強くプレゼンしていた。新しい香水を卸しにきたのかもしれない。

 そんな男を横目で確認したものの無視をしてカウンターでメモを差し出して頼まれていた香水を買うとさっさと店を出た。
 だが男はあたしを追いかけてきて呼びかけてきた。

「待って待って!君待ってくれ!」

 気持ち悪くも思ったので早足で歩いていると男はあたしの腕を掴んできた。思わず振り払おうとしたが、思いの外力が強くて無理だった。

「何ですか!」

 男は息切れしながらあたしを見てきた。
 青い目が印象的だった。綺麗だなって思った。それに香水を卸しているだけあるのかふんわりといい匂いがした。

「ねぇ、君さ。どこかの貴族のお嬢様かなんかでしょう。可愛いのに何でそんな薄汚れた服きて怪しげな店に来てるの?」
「関係ないでしょう」
「あの店の香水って流行りの物というより、媚薬や訳ありのものも売ってるよね?あれは貴族の女性が気になる男に使う媚薬だよね」
 
 男はさわやかに言ってきた。

 やはり訳ありなのか?こんな奴に捕まるなんて最低だ。

「どうでもいいでしょう?」
「まあまあ、そう警戒しないでよ。いやね、君みたいな宝石の原石が落ちてるのに磨かないのはもったいなぁって思ってさ」
「・・・・・・」

 『宝石の原石』
 そう言われるとまんざらでもない気になる。

「姿はどうあれ君、貴族の血は引いてるでしょう・・・」
「・・・・・・」
「シャンス国の貴族の特徴は、プラチナブロンドに青い目。そんなボロボロの服を着ているのに、貴族の特徴が出てるからさあ、戯奴ありかなあ~なんてね。その香水も姉妹のもので、こき使われてるんじゃないの?」

 男の推理は当たっている。
 
「そんな生活から脱却したいとは思わないの?」

 脱却?
 そんな事ができるの?

「・・・どうやって?」

 男を睨みながら聞いてみたい。
 あたしの言葉に男は、よく聞いてくれましたと言わんばかりの笑顔になった。

「実はさ、変わった薬があるんだよ」

 一気にきな臭くなる。
 思わず眉を顰めてしまった。
 男はそんなあたしに気づかず話を続けた。

「それは、丸薬なんだけど、一粒食べれば身体からいい匂いがするんだ。所謂体臭改善と言った感じかな?そうすれば君の人生は激変だ」
「体臭改善?そんなもので今の生活から抜け出せるとでも?嘘でしょう」

 馬鹿らしい。そんな事で人生が変わるなら誰もがしているでしょうに。
 
「そんなものというけど、意外に大事な事だよ。ほら男臭いとか汗臭いとか、匂いって印象にも関わるじゃないか。それは女だって同じだよ。気づかなかったものに気づかせるチャンスだよ。今なら初回は無料でいいよ。一度だけでいいから試してみなよ」

 嘘くさい、そう思った。信じられないと。

「いらないわ」
「えーっ。残念」

 引き留めてきた割には意外に男はあっさりと引いた。

「君にはいいかなって思ったんだけど。仕方ないか。まあ、気が変わったならいつでも売ってあげるよ。しばらくはこの街にいるから。この先の『羊の夜亭』に泊まってるからきてね」

 男はヒラヒラと手を振ると店のある方へと帰って行った。



 あたしは急いで帰った。

 あの男の所為で時間をとってしまった。早く帰らないと怒られる。

 
 
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