【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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19.レイチェル過去

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 薬の効果が現れ始めたのは三日たった頃からだった。

 初めは父の行動が変わった。

 いつものように掃除をしていると父がチラチラと視界にはいるようになった。挙動不審というのだろうか、そわそわしているのがわかった。
 その二日後には今まではありえない発言をしてきたのだ。

「庶子とはいえ、伯爵の令嬢がメイドのような事をするな」と。

 その言葉に誰もが驚いた。

 姉たちさえも。

 そしてあたしでさえも・・・。

 本当に。
 あたしを見てくれた。
 あぁ、神様。あなたは本当にいるのね。
 今まで馬鹿にしてごめんなさい。心からそう思った。

 それからだ。あたしの暮らしは変わっていった。

 今までのような下働きをしなくて良くなった。
 髪を整えてられた。自分の部屋を与えられ、ふわふわのベッドで眠る事ができた。綺麗な服を買い与えくれたので、感激で泣いてしまったほどだ。
 食事も食べたことないくらい美味しいものがでた。

 自分の生活が百八十度変わった。

 マナーや一般教養を学ぶ羽目になってしまったが、楽しかった。知りえなかったことを学ぶことがどんなに面白いのか。

 だけど日が経つにつれて怖くなっていった。
 後1週間でひと月が来る頃、恐怖しかなかった。

 どれもこれも、あののおかげ。
 もし、この効果が切れてしまえば、また以前の生活に戻るのかもしれない。そう考えるとぞっとしてきた。一度知ってしまった心地よさを手放したくない。

 無断で外出することにした。
 前よりも外に出にくくなったからだ。以前はメイドたちの目がきつかった。でもどうにかこうにか理由をつければ街に行くことはできた。でも、今はその理由が通用しない。
 下働きの頃に見つけた、庭の隅にある抜け穴を使い無断に外出するしかない。こんな所で今までの経験が役に立つなんて。

 ボロ服を来て街へと行った。
 いつもの店に行く。
 店主はあたしを見てため息をついて、また二日後に来るように言った。
 すぐに会えないのか・・・。

 たかが二日とはいえ、いつ薬の効果が切れるのか心配でしかたがなかった。夜、寝ていても夢でうなされた。

 あの悪夢がー。

 冷たい水。手がかじかみ指先が切れて血が滲む。水でカサカサになり、ドブのような臭く香る手のひら。
 髪はボサボサで、光沢もない。
 唇は乾燥してザラザラだし、肌も日焼けと煤や汚れで汚い。

 思い出すだけでも嫌だというのに、夢で見た日には吐き気がしそうだった。

 あんな惨めな思いなんかもうしたくない。

 二日後、再び屋敷を抜け出して店に行った。

 今度は男は店の2階にいた。

 前回は宿を取っていたのに?

「あんた、ここに住んでるの?」
「いや、宿提供してもらってるだけだ」
「じゃぁ、なんで前はあんな宿にいたのよ?」

 前回の事を思い出して腹が立った。

「君の覚悟を知りたくて。で、どうだった?」

 この男の思う壺なのだろうか?あんな治安も良くないような宿まで訪ねさせる事で、あたしを試したのか?

 まあ、いい。それより・・・。

「薬頂戴」

 あたしは手を差し出した。
 男は意外そうな顔をした。男は小瓶を出してきただが、それはまるで勿体ぶっているように渡してはくれなかった。

「何?お金がいるの?」
 
 あたしは父から貰ったが入った袋を置いた。

「これだけあれば買える?」
  
 これで買える?
 お金であたしの欲しいものが買えるなら・・・。

「効果はなかった?」
「あったわ。だからこそまた欲しいの」
「あれは多用するものじゃないんだけどなぁ。前回ので効いたなら、それで良かっただろう」
「ダメなの。もう前みたいな生活に戻りたくないの。だから薬を頂戴」

 あたしは叫ぶように言うと、男は顎に手を当て考えこんだ。
 そして、しばらくしてから男は袋の中から金貨を一枚だけとりだした。

「これでいい」

 そういうと金貨を懐に納め、小瓶の中から一粒取り出してあたしに渡した。

「これ、だけ・・・?」

 一粒?たった一粒?
 不安になる。

「それで十分だ。これはきっかけだけのものだ。きっかけができたからにはあとは自分を磨けばどうってことはない。あとは君次第なんだ」

 紫色の粒を眺めた。


「これは飲み過ぎたらダメなんだ」
「でも・・・」

 男は首を振った。

 男の意思は変わらないようだった。
 
 あたしは紫色の粒をその場で飲み込むと仕方なく帰った。



 
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