20 / 42
20.レイチェル過去
しおりを挟む
父はあたしに甘い。
優しい声をかけてくれる。
姉たちの意地悪に苦言を呈してくれるようにもなった。
仕事であまりいない兄も帰ってくると、あたしを見てくれるようになった。
幸せだった。
でも不安になった。
いつ薬の効果がきれるのだろうか・・・。
切れた時、また以前のような生活に戻るのではないだろうか・・・。
父や兄たちの冷たい視線。
虐めてくる姉たち。
今の生活を辞めたくない。あんな惨めな思いをしたくない。
だから、一月に一度、例の店に行くようになった。
店主に連絡をしてもらってもあの男になかなか会えないこともあった。
不安で不安で仕方ない。
自分でも恐ろしいほど情緒不安定になることがあった。
男に会えばもらうようにした。
男は初めては必ず薬を出すのを渋った。
だから、自分の思いの丈をぶつけた。泣いて縋った。叫んだ。不安だから薬が欲しいと。
自分を作るためにどうしても必要な物なのだと。
必死だった。
そうすればしぶしぶ薬を分けてくれた。
「これ以上はもうダメだ」
それは初めて薬を貰って半年した時だった。あたしの顔を見て男はため息をついた。
「ここまで薬に依存するとは思わなかった。もうこれ以上は君にはあげることはできないよ」
男は「最後の一粒だ」と言ってお金もうけとらず、薬を渡すと部屋の奥に去っていった。
そんな・・・。どうしよう。これがなくなったらあたしは・・・。
不安が押し寄せて来た。
不安で、不安で。
イライラして。
爪を噛んだ。
「お嬢ちゃん。今日は帰りなさい。次までにあいつを説得しとくから」
店主が軽く言ってくれた。
その日は薬を大事に抱えて帰えり、部屋で飲んだ。
喉元を通る感触でほっとした。
これで、まだひと月は持つ。
でも、次は・・・。
ひと月後、あの男はいなかった。でも代わりに店主が薬を売ってくれるようになり、あたしはいつでも買いにこれるようになったのだ。
あたしは姉たちが羨むほどちやほやされた。
あたしの助言もあり母も今までのような暮らしはしなくても良くなった。
我儘も聞いてくれた。
最高に気持ちいい。
自分が女主人になったようになれる。
幸せだった。
15歳になり、学園に入った。
周りの男たちはあたしをお姫様のように扱ってくれた。
プレゼントをくれる。優しくエスコートをしてくれる。笑いかけてくれた。
なんて幸せなのかしら!?
あたしの我儘を聞いてくれた。
最高。
でも、高貴族や他の女はあたしを疎ましそうに見てきた。
嫌いな目。
前まであたしを見ていた目だ。
なによ。
なんで、そんな目で見られないといけないのよ。
だから、取り巻きの男たちに泣き真似をして訴えた。
「虐められているの」
そうすれば彼らはあたしの味方になってくれた。彼女たちに報復してくれた。
清々しくなる。
優越感に浸れた。
最高に気分が良かった。
優しい声をかけてくれる。
姉たちの意地悪に苦言を呈してくれるようにもなった。
仕事であまりいない兄も帰ってくると、あたしを見てくれるようになった。
幸せだった。
でも不安になった。
いつ薬の効果がきれるのだろうか・・・。
切れた時、また以前のような生活に戻るのではないだろうか・・・。
父や兄たちの冷たい視線。
虐めてくる姉たち。
今の生活を辞めたくない。あんな惨めな思いをしたくない。
だから、一月に一度、例の店に行くようになった。
店主に連絡をしてもらってもあの男になかなか会えないこともあった。
不安で不安で仕方ない。
自分でも恐ろしいほど情緒不安定になることがあった。
男に会えばもらうようにした。
男は初めては必ず薬を出すのを渋った。
だから、自分の思いの丈をぶつけた。泣いて縋った。叫んだ。不安だから薬が欲しいと。
自分を作るためにどうしても必要な物なのだと。
必死だった。
そうすればしぶしぶ薬を分けてくれた。
「これ以上はもうダメだ」
それは初めて薬を貰って半年した時だった。あたしの顔を見て男はため息をついた。
「ここまで薬に依存するとは思わなかった。もうこれ以上は君にはあげることはできないよ」
男は「最後の一粒だ」と言ってお金もうけとらず、薬を渡すと部屋の奥に去っていった。
そんな・・・。どうしよう。これがなくなったらあたしは・・・。
不安が押し寄せて来た。
不安で、不安で。
イライラして。
爪を噛んだ。
「お嬢ちゃん。今日は帰りなさい。次までにあいつを説得しとくから」
店主が軽く言ってくれた。
その日は薬を大事に抱えて帰えり、部屋で飲んだ。
喉元を通る感触でほっとした。
これで、まだひと月は持つ。
でも、次は・・・。
ひと月後、あの男はいなかった。でも代わりに店主が薬を売ってくれるようになり、あたしはいつでも買いにこれるようになったのだ。
あたしは姉たちが羨むほどちやほやされた。
あたしの助言もあり母も今までのような暮らしはしなくても良くなった。
我儘も聞いてくれた。
最高に気持ちいい。
自分が女主人になったようになれる。
幸せだった。
15歳になり、学園に入った。
周りの男たちはあたしをお姫様のように扱ってくれた。
プレゼントをくれる。優しくエスコートをしてくれる。笑いかけてくれた。
なんて幸せなのかしら!?
あたしの我儘を聞いてくれた。
最高。
でも、高貴族や他の女はあたしを疎ましそうに見てきた。
嫌いな目。
前まであたしを見ていた目だ。
なによ。
なんで、そんな目で見られないといけないのよ。
だから、取り巻きの男たちに泣き真似をして訴えた。
「虐められているの」
そうすれば彼らはあたしの味方になってくれた。彼女たちに報復してくれた。
清々しくなる。
優越感に浸れた。
最高に気分が良かった。
130
あなたにおすすめの小説
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約破棄されてイラッときたから、目についた男に婚約申し込んだら、幼馴染だった件
ユウキ
恋愛
苦節11年。王家から押し付けられた婚約。我慢に我慢を重ねてきた侯爵令嬢アデレイズは、王宮の人が行き交う大階段で婚約者である第三王子から、婚約破棄を告げられるのだが、いかんせんタイミングが悪すぎた。アデレイズのコンディションは最悪だったのだ。
(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに
にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。
この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。
酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。
自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。
それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。
私、一度死んで……時が舞い戻った?
カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。
嫉妬で、妹もいじめません。
なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。
エブリスタ様で『完結』しました話に
変えさせていただきました。
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる