【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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  そんな中、年月が経つごとに母だけは過保護になっていった。

 自分がお茶会に連れて行ったせいで、私が怪我をしたのだと責め、私に対して過干渉にもなっていく。
 私が外へ行くのを極端に嫌うようになったのだ。街への買い物を禁止され、次第に庭の散歩さえ嫌がるようになる。
他人に私を見られないようにするためにー。
 

 母は私の右目を見ては呟く。

「可哀想に。女の子なのにそんな傷のせいで・・・」と。

 そんなことを言いながらも、私の傷を直視することはない。

「みんな奇異の目で見るわ。だから部屋の中でいなさい」

 母は泣き落としをしてくる。
 そして母自身も以前のようにお茶会にあまり行かなくなった。

「傷を隠しなさい」

 その言葉に従い、私は左目が隠れるように前髪を伸ばす。

 私が少しでも言い返そうとすれば、不安な顔でいつまでもぶつぶつと否定的なことを呟き続ける。

 母は『顔に傷のある女の子』を見る他人の目が怖がっていた。そんな母親と思われるのが嫌いだったのだろう。

 私が怪我をしたせいだ。
 そんな罪悪感から、母に言われるままに従った。そうすれば母は安心したように微笑んだ。
 

 自由になるのが屋敷の中だけの私に、婚約者のマルス様はたくさんの土産や楽しい話を持って我が家に来てくれた。

 暖かな彼の笑顔に癒され、穏やかな声に安心する。
 マルス様が来た時だけは、手を繋ぎながら庭を散歩ができた。
 そのわずかな温もりだけでも愛おしい。触れられた箇所が熱を持つのを感じ、胸がときめく。
 彼が帰ってしまう時など、寂しくてたまらず毎回泣きそうになるほどだ。

 彼がこうやって来てくれるからこそ、この窮屈な生活にも耐えれた。

 

 
 そして、15歳を前に1通の封書が届いた。
 王立学園からの入学案内状だ。
 
 王立学園は15歳から18歳までの4年間を男女が一斉に学ぶ義務教育の場所。いわゆる小さな社交場の集まりである。

 その手紙を読んで、やっと屋敷の中から自由になれると思い、私は喜ぶ。

 だが逆に、学園行きを知った母は気が狂ってしまったかのように泣き叫んだ。

 母も通っていたからわかっているはずなのに、私が学園に入るのを嫌がった。

 父の説得に無事に入学ができたものの現実を知る。母が嫌がった理由を身をもって理解した。

「不気味な顔」
 
 それは小さかったが、確かに聞こえてきた。

 声の方を振り返ると、誰もが顔を背ける。別の方向からくすくすと笑い声が聞こえた。
 誰もが私に傷があることを知っていて、誹謗してくる。

「よくもまぁ、あんな顔で登校できるわね」
「見るだけで気分が悪くなるな」

 傷があるだけで、心無い言葉を言ってくる。なぜそんなことを言うのか理解できなかった。

 前を歩く女の子が落とし物したので拾って渡そうとしても嫌な顔をされた。

「移ったら嫌だから、捨てていいわ」

 入学して間もないとはいえ、誰も私に声をかける者はいなかった。

 母はわかっていたのだろうか。
 こんな思いをしてしまうから、あんなに嫌がったのかもしれない。

 泣きそうになるのを堪え、逃げ場にした図書館に駆け込むようになった。

 授業中で誰もいない図書館。
 司書の先生も事情を理解しているので、授業中でも私がいることを咎めはしない。

 静かな場所で心を落ち着かせるため本を読んだ。
 知らない世界に連れて行ってくれる本だけは私を裏切らない。

 流れ出していた涙を拭い、図書室の奥へと足を向けた。
 
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