14 / 76
14.
しおりを挟む
屋敷に帰ると、いつものように母が出迎えてくれた。
「ノエル、お帰りなさい。学園はどうだった?いじめられなかった?大丈夫?」
矢継ぎ早で質問してくる母。
「何かあれば、学園に言いに行くわ。だから正直に言ってちょうだい」
久しぶりの登校とはいえ、以前と同じことを幾度も言ってくるのにはうんざりしてくる。正直に話せば絶対に学園に乗り込むだろうし、学園にもう行かなくていいと言うのが目に見えていた。
「いつも通りです。それに今日はテストを受けに行っていたんですよ。そっちは気にならないのですか?」
「テストなんてどうでもいいわよ。あなたはいずれお嫁に行って家を守り、後継を産むのよ」
「家を守るためにも社交は必要勃と思うわ」
「ノエルには無理よ!!あっ・・・」
本音が出た。
この傷があるからー。
左目を押さえた。
母は視線を彷徨わせる。
「傷があるのは・・・恥ずかしいこと、ですか・・・?」
私の問いに母は意を決したのか、きっっ、と睨みつけ強い口調で言ってきた。
「そうよ!恥ずかしいわ。せっかく綺麗な顔で産んであげたのにそんな醜い傷を作って。わたくしが友人たちからなんと言われてるか知ってる?『醜い傷のあるお嬢様を持って残念ね』ですって。笑われているのよ。あなたのせいでわたくしは笑われているの。ならば、そんなあなたを甲斐甲斐しく世話をする良い母親を演じて何が悪いのよ。そのくらいしかあなたには価値がないの!」
優しさからじゃなかった。
自分の保身のために私を気にかけていただけ。
「誰にも見られないようにひっそりと生きて。わたくしの前から消えて!」
傷があるだけで、私は恥ずかしい人間なの?
怖い顔の母が見れず俯き、口の中を噛んで泣き叫びたいのを我慢する。
「母上・・・」
「えっ?」
突然の声に顔をあげた。
兄だ。兄が帰ってきたのだ。
母も驚いている。それはそうだ。いつもより帰ってくるのが早い。
その兄の表情は冷淡ものだった。
「母上?ノエルに何を言ってるのですか?」
水色の瞳が氷のように見える。
「ライール。これは・・・その・・・違うの・・・」
「何が違うと?」
「あの・・・、そう、これもノエルに必要だと思って・・・」
「言い訳は結構です。ノエル行こう」
兄は私の背中に手を回し、部屋へと導いてくれた。
部屋に入るなり、兄は頭を下げる。
「すまん!もっと早く母上から離すことができれば!!」
兄のせいではない。
私は頭を振った。
「お兄様のせいではないわ」
そうは言ったものの、涙が溢れてくる。
「ノエル」
気持ちが整理できていない。
こんな屋敷から出て行くことができればどんなにいいものか。でも、外出もしていない世間知らずな私には到底一人で生きていくことができなのはわかっている。
「お兄様。ここからいなくなりたい」
「ノエル・・・」
苦しそうに名前を呼ぶ。
「すまん。本当にすまん・・・」
何度も謝ってくる。
「明後日からまた国外行きが決まった・・・」
嘘・・・?
絶望が襲う。
また、一人になる。
どうしたらいいの・・・。母とどうこれから向き合えばいい?大図書館にもいけない。学園でまた一人になる?あんな聞きたくない言葉を毎日聞かないといけないなんて・・・。
血の気が引くのがわかる。
兄は私を抱きしめた。
「それでも、俺がどうにかする。布石は打っておいた。それがどうなるかは分からんが待っていて欲しい」
兄は自分がしたことを話してくれた。
話を聞いて少しだけ希望を持つ。
そして、マルス様のことも考える。
「父上にも相談しよう」
私は頷いた。
「ノエル、お帰りなさい。学園はどうだった?いじめられなかった?大丈夫?」
矢継ぎ早で質問してくる母。
「何かあれば、学園に言いに行くわ。だから正直に言ってちょうだい」
久しぶりの登校とはいえ、以前と同じことを幾度も言ってくるのにはうんざりしてくる。正直に話せば絶対に学園に乗り込むだろうし、学園にもう行かなくていいと言うのが目に見えていた。
「いつも通りです。それに今日はテストを受けに行っていたんですよ。そっちは気にならないのですか?」
「テストなんてどうでもいいわよ。あなたはいずれお嫁に行って家を守り、後継を産むのよ」
「家を守るためにも社交は必要勃と思うわ」
「ノエルには無理よ!!あっ・・・」
本音が出た。
この傷があるからー。
左目を押さえた。
母は視線を彷徨わせる。
「傷があるのは・・・恥ずかしいこと、ですか・・・?」
私の問いに母は意を決したのか、きっっ、と睨みつけ強い口調で言ってきた。
「そうよ!恥ずかしいわ。せっかく綺麗な顔で産んであげたのにそんな醜い傷を作って。わたくしが友人たちからなんと言われてるか知ってる?『醜い傷のあるお嬢様を持って残念ね』ですって。笑われているのよ。あなたのせいでわたくしは笑われているの。ならば、そんなあなたを甲斐甲斐しく世話をする良い母親を演じて何が悪いのよ。そのくらいしかあなたには価値がないの!」
優しさからじゃなかった。
自分の保身のために私を気にかけていただけ。
「誰にも見られないようにひっそりと生きて。わたくしの前から消えて!」
傷があるだけで、私は恥ずかしい人間なの?
怖い顔の母が見れず俯き、口の中を噛んで泣き叫びたいのを我慢する。
「母上・・・」
「えっ?」
突然の声に顔をあげた。
兄だ。兄が帰ってきたのだ。
母も驚いている。それはそうだ。いつもより帰ってくるのが早い。
その兄の表情は冷淡ものだった。
「母上?ノエルに何を言ってるのですか?」
水色の瞳が氷のように見える。
「ライール。これは・・・その・・・違うの・・・」
「何が違うと?」
「あの・・・、そう、これもノエルに必要だと思って・・・」
「言い訳は結構です。ノエル行こう」
兄は私の背中に手を回し、部屋へと導いてくれた。
部屋に入るなり、兄は頭を下げる。
「すまん!もっと早く母上から離すことができれば!!」
兄のせいではない。
私は頭を振った。
「お兄様のせいではないわ」
そうは言ったものの、涙が溢れてくる。
「ノエル」
気持ちが整理できていない。
こんな屋敷から出て行くことができればどんなにいいものか。でも、外出もしていない世間知らずな私には到底一人で生きていくことができなのはわかっている。
「お兄様。ここからいなくなりたい」
「ノエル・・・」
苦しそうに名前を呼ぶ。
「すまん。本当にすまん・・・」
何度も謝ってくる。
「明後日からまた国外行きが決まった・・・」
嘘・・・?
絶望が襲う。
また、一人になる。
どうしたらいいの・・・。母とどうこれから向き合えばいい?大図書館にもいけない。学園でまた一人になる?あんな聞きたくない言葉を毎日聞かないといけないなんて・・・。
血の気が引くのがわかる。
兄は私を抱きしめた。
「それでも、俺がどうにかする。布石は打っておいた。それがどうなるかは分からんが待っていて欲しい」
兄は自分がしたことを話してくれた。
話を聞いて少しだけ希望を持つ。
そして、マルス様のことも考える。
「父上にも相談しよう」
私は頷いた。
664
あなたにおすすめの小説
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる