【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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13.

 テストが無事に終わることができた。

 彼が最終的に全ての教科を見てくれたおかげだといえる。しかもテストに出やすいところも教えてくれたのだから感謝しかない。

 あとは、授業に出ていないのを補填するためのレポートと論文を先生に提出するだけである。こちらは大図書館とテスト勉強の合間に書き上げたものだが、それなりにまとめることができて満足していた。

 職員室へ向かっていると、また声が聞こえてくる。

「テストだけ受けにきたんですって」
「いいご身分だこと」
「真面目に勉強しているのに毎日遊んでいるのよね?」
「それでテスト?できるの?」
「これでできるというなら不正ありきでしょう」
「まさかま先生に?」
「えぇー、あの顔で?」
「どれだけお金払っても無理でしょう」
「あはっ!確かに」

 もしこれで悪意がないとすれば、どうなのであろう。

 優しさを持ち合わせていない人間でしかない。

 聞こえないふりをして足早に先生の元へ行った。

 だが、先生も愛想もなく私をひと睨みする。この傷のせいで授業に出ていないのがサボっているようで気に入らないのだろう。

 こうやってレポートと論文での補填も、外在学中は特待生だった上、現在では外交官として実績をあげようとしている兄が掛け合ってくれたからこそ認めてくれたことだ。

「あぁ、そこに置いといてくれ」
 
 淡々と言われ入り口にある提出物入れの中に置くと、一礼して退出する。

 身の置き場がなく、耐えるだけは辛かった。

 すぐにでも大図書館に逃げたかった。彼の顔を見たら嫌な気分が吹き飛ぶかもしれない。母との約束で兄がいなければ行くことができない。

「マルス様~」

 私の婚約者であるマルス様の名前を呼ぶ声が聞こえ、振り向いた。

 声がする方を見れば、マルス様がいた。だがその隣にはマルス様の腕に絡むようにして歩く女性の姿。確か同じクラスで見かけたことがあった。
 他にも男友達もいるが、二人は楽しそうに笑い合っている。それを見て胸が痛む。

 私ではいけないんだー。

 疎外感、劣等感・・・そんなものが渦巻く。

 傷がなければ、私にも親友ができただろうか?
 マルス様の隣で笑っていたのは私?
 なんで、私が・・・。
 
 今までにないほど傷があることが憎く思ったことはない。

 自分にこんな感情があるとは思っていなかった。

 じっと見ているマルス様は気づき、一瞬目が合ったあと、さっと顔を逸らした。

 隣の女性はそれに不審を感じたのか、同じようにこちらを見てくる。
 そして、不敵な笑みを見せた。

「あら?傷がある図々しい人がいるわ。よくそんな顔を晒すこと。女性は顔が命よね~」

 彼女は最後を強調してきた。
 何も言わないマルス様。
 この傷をつけられたことを憎んだことはない。
 でも、それをかばいもしない婚約者ひとはどうなのだ?
 
 マルス様はやはり、傷ひとつない女性が好きだということなのか。

 私に笑いかけてくれたのは嘘だった?
 この傷があるから仕方なく言っていたの?

 彼は偽善者だ。

 彼を解放してあげたい。そうすれば、こんな思いもしなくて済む。

 過去の思い出が遠い出来事のように思えたてきた。マルス様に対する感情が冷めていくのがわかる。

 私は帰るために踵を返した。
 
 

 
 
 

 

 
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