【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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22.マルス視点

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 どうしてだ。
 どうしてノエルとの婚約が解消になった!!

 昨日、友人らと学園帰りに街に寄り道をしてから帰り、夕食の席で父からノエルとの婚約が解消になったことを告げられた。

「なぜ婚約解消したのですか!?」
「何がいけなかったか?あんな傷のある娘を嫁にしなくて済むんだ。ダーリス家の恥にならなくていいではないか」

 恥?ノエルがダーリス家の恥になるというのか?
 僕の怒りがわからない父は続ける。

「これはあちらから言ってきたことだ。なら、気にすることはないだろう。せっかくもらってやると言ってたのを辞退してきたんだ。まぁ、あんな顔では次の嫁ぎ先もきまらんだろうがな」

 冷笑する父の横で母も薄く笑う。
 なぜだ!傷があるからといって見下す。

「お前だって嫌だったのだろう。一緒に出歩いたこともないではないか。それに、今一緒に出掛けている女生徒がいると聞いているが?」

 なぜ知っている・・・。
 確かにクラスメイトのケティとよくつるんでいるが・・・。

「それでも、嫌・・・です」

 それはそれ。ノエルはノエルだ。

「もう決まったことだ」
   
 父はそう言ったが諦めれない。

「納得いきません」
「無理だ。傷ものなど連れて歩くこともできないだろう。社交界で困るのはお前であり、ダーリス家だ。いい機会だ。新しい婚約者を作れ」

 そこまで言われて終えば口籠る。
 社交界の場で隣にノエルがいる・・・、あの傷を見て周りから学園のように気味悪がられ、陰口をいわれる?僕も巻き添えになる!?

 それは・・・。
 いや、屋敷から出さなければ・・・。そうもならないか?

 心の天秤が揺れ動き、最終的には婚約解消を望む。

「・・・わかりました」

 一応納得した。でも、ノエルの意思を確認したい。

 そして次の朝、学園でノエルを待ち構えた。

 変わらない美しい彼女は、僕を見るなり顔を強張らせ一定の距離を取って足を止める。
 震える声で僕の名前を呼んだ。

「マルス様・・・」
「なぜ、婚約解消をしたんだい?」

 一歩進めば彼女は一歩後退する。

「理由はお聞きになった、はずです・・・」

 彼女が一歩下がれば、僕が一歩前進した。

「君の口から直接聞きたい」
 
 じわじわと彼女を追い詰める。
 誰もが遠巻きで見ているのが横目でみえた。これまで学園のなかで僕はノエルに近づいたことがなかったのだから、皆驚いているのだろう。
 だが、そんなのはどうでもいい。今は婚約解消のことを聞かないと。

 とん、とノエルは壁に当たった。これで逃げ場はない。
 震える彼女を封じ込めた。
 手を伸ばすと彼女は身を固くする。僕は彼女の左側の長い髪を耳にかけた。青黒い一本の傷が白い肌と水色の瞳に映えている。

「私は・・・留学します」 
「する必要があるの?」
「はい」

 珍しくノエルは震える声で強く言い切った。
 おかしい。僕のノエルはどこだ?
 いつもならオドオドしていて、保護欲を掻き立てるのに。見たことのない彼女に僕は驚いた。

「私は・・・私は一度でいいので、好きなことを思いっきりしてみたいのです。婚約は・・・婚約はマルス様の足枷になります。もう、この傷に囚われないでください。私はあなたに責任をとってほしいとは思っておりませんっ」

 真正面から僕の目を見ている。
 綺麗な水色の瞳には真っ直ぐな意志が感じられた。
 
 ノエル?

 どうして、そんな目をしてる?

「私より素晴らしい女性はたくさんいます。ですので、私でない誰かと幸せになってください」

 君じゃない誰か?

 ノエルは、呆然とする僕をすり抜けるように逃げると逃げるように去ってゆく。
 僕は・・・動くことができなかった。
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