【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)

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3.アルト

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 夏休み明け、久しぶりに会ったミリア・アスローディ伯爵令嬢は僕の知っている婚約者なのかと疑問に思った。

 最後に会ったのは夏休みに入る前の時だったが、あの時の彼女は僕に向かって優しく笑いかけてくれていた。形の良い唇から紡がれる言葉の端々から温もりを感じ、穏やかな声に安心した。
 それぼどまでに愛おしい存在。
 
 なのに、この女性は誰だ。
 彼女の目は冷たくナイフのような冷たさが宿り、人を傷つけんばかりの容赦のないセリフを投げかけてくる。


「サシャ様の素晴らしさがわからないとは王太子殿下ともある方が情けないですわ」

 彼女の隣に立つピンクブロンドの女性を見た。
 サシャ・エレスト。
 元は平民の出で数年前に癒しの力を発現したことで、教会預かりになり、冬にはやる季節病の患者を多数癒したことで噂になったことから、この春改めて国王陛下より聖女として認められた女性である。そして、夏休みの間に後見人をかって出たエレスト伯爵の養女になっていた。

 見た目は確かに可愛いく見える。
 だが、僕には彼女の目が嫌だ。人を値踏みしたようなねっとりとした視線が正直いって不気味に見え、本当に聖女なのか疑いたくなる。

 なぜ、ミリアはこの女を擁護するのか分からなかった。

 少し会わなかっただけで、何が起こったのか理解できない。

「ミリー。どうしたんだ?」
「何がですか?アルト様?」

 僕の名前を呼ぶ声に感情が宿っていなかった。

「何かあったのか?」 

 恐る恐る聞いてみる。
 だが、ミリアは眉ひとつ動かない。
 悪い亡霊か悪魔でも宿ってしまったのか?

「何もありませんわ。私は私の意思でサシャ様が素晴らしいと思い進言しているだけです」
「ミリア?」
「サシャ様は聖女として素晴らしい方です。そのような方こそ王太子妃として相応しいと私は考えます」

 その凛とした発言に驚かざる得ない。
 
 僕の横にいる王太子であるマルクス殿下もその婚約者であるメリアーナ嬢もその従姉妹であるアリナ嬢さえも固唾を呑んで見守る。

「そうなの、もっとサシャのこと知って欲しいの。だから、王子様。わたしとお話しましょうよぅ」 

 聖女と呼ばれる彼女は媚びるように殿下に声をかけてきた。
 元は平民とはいえ礼儀を知らないのか?
 ミリアはこんな女のどこが良いのか?

「サシャ様。言葉遣いにはお気をつけください」
「もぅ、ミリアは口うるさいんだから」
「言葉一つで自分の価値を高められます」

 幼い子供のように怒るサシャを先生のようにミリアが諭す。

「・・・サシャ様。今日はこのくらいにしましょうか」
「ええっ!!まだお話しできてないわ」
「今日は挨拶だけといいました。明日もあります。一つずつ淑女になってゆくサシャ様を見せつけてあげませんと」
「うー、わかったわよ」

 僕の目を見ることなく去ろうとするミリア。

「ミリア?」

 あまり変わった彼女を僕は追いかけることさえもできなかった。
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