怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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51)高速道路の影(神奈川県)

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神奈川県には、古くから**「出てはいけない場所」とされる高速道路があるという。
 それは、深夜になると不可解な事故が頻発する区間。
 地元の運転手たちは、その道を「見えないものが横切る道」**と呼ぶ。

 「夜中に、絶対にバックミラーを見てはいけない」
 「高速道路の中央に、誰かが立っていても、決して減速するな」

 なぜなら、もし止まってしまったら——
 もう、二度と先へ進めなくなるから。

***********************************

 これは、数年前に神奈川県内の某高速道路で起きた事故の話だ。

 夜間の高速道路は、昼間と違って異様なほど静かだった。
 特に深夜2時を過ぎると、交通量も減り、闇が車を飲み込むようになる。

 そんな時間帯に、あるタクシー運転手が不可解な事故を起こした。

 その男は、単独事故を起こしたものの、車はほとんど無傷だった。
 だが、彼の様子は異常だった。

 「あの女がいたんだ……道路の真ん中に立ってたんだ……」

 彼は、何かに怯えるように震えていた。

 その夜、タクシー運転手のHさんは、乗客を降ろした後、一人で高速を走っていた。

 ラジオをつけながら、何気なく前方を見ていた。

 すると——

 100メートル先の道路の中央に、白い服の女が立っていた。

 「え……?」

 普通なら、そんな場所に人がいるはずがない。

 高速道路で立ち止まるなど、常識では考えられない光景だった。

 Hさんは、慌ててハンドルを切りながら、クラクションを鳴らした。

 「危ないぞ!!」

 だが——

 女は、微動だにしなかった。

 Hさんは、避けようとしたが間に合わず——

 「ドンッ!」

 鈍い衝撃が車内に響いた。

 Hさんは、慌ててブレーキを踏んだ。

 「やってしまった……」

 すぐに車を降り、後ろを振り返った。

 だが——

 そこには、何もなかった。

 血の跡もない。

 何かを轢いたはずなのに、女の姿は消えていた。

 Hさんは、混乱しながら車に戻り、深く息をついた。

 「疲れているのかもしれない……」

 だが、ハンドルを握った瞬間——

 バックミラーに、女の顔が映った。

 Hさんは、息を呑んだ。

 女は、白い服を着たまま、後部座席に座っていた。

 そして、ゆっくりと口を開いた。

 「ねえ……どこへ行くの?」

 Hさんは、恐怖で車を飛び出した。

 だが、その瞬間——

 周囲の風景が、異様に変わっていることに気がついた。

 見慣れた高速道路が、どこまでも続く一本道に変わっていた。
 標識もない。
 他の車もない。

 まるで、自分だけが異世界に迷い込んだようだった。

 「ここは……どこだ……?」

 Hさんが振り向くと——

 女が、助手席に座っていた。

 「帰れないよ」

 女は、ゆっくりと微笑んだ。

 翌朝、高速道路の監視カメラには、奇妙な映像が残されていた。

 Hさんのタクシーが、高速道路の中央で突然停止し、そのまま消えてしまったのだ。

 警察が捜索したが、Hさんの車はどこにも見つからなかった。

 そして、一週間後——

 Hさんのタクシーは、100キロ離れた別の高速道路の廃トンネルの中で発見された。

 だが、Hさんの姿はなかった。

 ただ、車のフロントガラスには、こう書かれていた。

 「帰れない」

 Hさんの失踪以降、その高速道路ではさらなる奇妙な現象が続いた。

 ・夜中に白い服の女が道路の中央に立っているのを見たドライバーが多数。
 ・バックミラーに知らない人間の顔が映る。
 ・高速を走っているはずなのに、ナビが「目的地不明」と表示される。

 そして、決定的な事件が起きた。

 あるドライバーが、ドライブレコーダーを回しながら高速を走っていた。

 翌朝、録画データを確認すると——

 映像の最後に、白い服の女が助手席に座っていた。

 その男は、翌日失踪した。

***********************************

 もし、あなたが神奈川県の高速道路を深夜に走るなら——

 決して、道路の中央に立つ女に近づいてはいけない。

 そして——

 バックミラーを見て、誰かが座っていても、絶対に振り向いてはいけない。

 なぜなら、その瞬間——

 あなたも「帰れない道」へ迷い込んでしまうから。
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