122 / 147
122)『だるまさんがころんだ、の後ろにいたのは』
しおりを挟む
小学校の放課後。
校庭の端っこにある小さな遊具の横で、子どもたちが遊んでいた。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんーだ!」
その声に合わせて、ぴたりと動きを止める子どもたち。
走っていた足が止まり、誰かの笑い声がこだまする。
だがその日の写真には――“いないはずの子ども”が写っていた。
小学3年の担任をしていた私は、放課後に校庭の片付けをしていた。
教室に戻ると、廊下で生徒のひとり、**柚葉(ゆずは)**が呼び止めた。
「せんせー、あのね、今日“しおりちゃん”来てたよ!」
しおり? そんな名前の子はいなかったはずだ。
「その子、どこのクラスの子?」
「ちがうよ。転校生でもないよ。“ずっといる”って言ってた」
柚葉は無邪気に笑っていたが、私は背中に冷たいものを感じた。
転校してきていない。出席簿にもいない。
でも、「“ずっといる”って言ってた」と。
職員室で、他の先生にも確認したが、そんな名前の子は登録されていないという。
「誰かの空想上の友達じゃない?」
そう結論づける同僚もいたが、私はどこか引っかかっていた。
その日、子どもたちの遊んでいる様子を撮影したタブレットを確認してみた。
だるまさんがころんだ。柚葉、紗季、陽翔、蒼真……そして――
見知らぬ女の子が、画面の一番奥に写っていた。
白いワンピース、前髪をまっすぐ切った長い黒髪。
顔は、カメラのレンズをまっすぐ見ていた。
次の日、また柚葉が言った。
「しおりちゃん、かくれんぼしようって!」
「どこで?」
「おトイレの奥。2階の女子トイレの一番奥の個室!」
そこは、今は誰も使っていない“封鎖されたトイレ”だった。
配管の故障で、今月から立ち入り禁止になっていたはずだ。
鍵も閉まっていた。
だが、念のため見に行ってみた。
女子トイレの前に、封鎖用のテープは破られていた。
そして、個室の一番奥のドアが――開いていた。
中には、何もいなかった。
だが、便器の上に、子どもが書いたような紙が置かれていた。
折り紙の裏に鉛筆でこう書かれていた。
> 「また かくれんぼ しようね
> ゆずはちゃんは もうすぐ こっちだよ」
震えが止まらなかった。
その夜、校内の監視カメラの映像を確認した。
17時32分、封鎖されていたはずの女子トイレの前に、柚葉が立っている。
その隣には――手をつないだもう一人の女の子の姿。
だが、不思議なことに、カメラの映像ではその子だけが“ノイズ”のようにぼやけていて、顔が映っていなかった。
翌朝、柚葉は登校しなかった。
保護者に連絡しても、電話がつながらない。
そのまま、行方不明扱いになった。
校内放送ではアナウンスされず、教師たちは不自然なほどに静かだった。
職員室の空気が、濁っていた。
私は、あの子の名前を検索した。
> 「しおり 小学校 幽霊」
> 「だるまさんがころんだ 死亡事故」
> 「小学校 遊び 消える」
そして、ひとつの記事にたどり着いた。
10年前、この学校で起きた事件。
校庭で“だるまさんがころんだ”をしていた少女が、突如いなくなった。
最後尾にいた彼女の姿が、遊びの途中で忽然と消えたという。
名前は――一ノ瀬しおり(いちのせ・しおり)。
子どもたちが集まる遊びの輪に、“しおり”は時折戻ってくる。
誰にも気づかれずに、まるで最初からいたかのように。
そして、誰かと“仲良くなる”と――またひとり、いなくなる。
今も、教室の後ろ、
出席簿にはない席に、誰かが座っている。
そして放課後、校庭の隅で子どもたちが声を上げる。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんーだ」
その最後列に、“見覚えのない誰か”が、そっと並んでいる。
◆エピローグ
集合写真を撮るとき、よく数が合わないときがある。
「一人、多い」「あれ、こんな子いたっけ?」
でも、写真に写ってる“あの子”――
本当に、最初からいた子ですか?
校庭の端っこにある小さな遊具の横で、子どもたちが遊んでいた。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんーだ!」
その声に合わせて、ぴたりと動きを止める子どもたち。
走っていた足が止まり、誰かの笑い声がこだまする。
だがその日の写真には――“いないはずの子ども”が写っていた。
小学3年の担任をしていた私は、放課後に校庭の片付けをしていた。
教室に戻ると、廊下で生徒のひとり、**柚葉(ゆずは)**が呼び止めた。
「せんせー、あのね、今日“しおりちゃん”来てたよ!」
しおり? そんな名前の子はいなかったはずだ。
「その子、どこのクラスの子?」
「ちがうよ。転校生でもないよ。“ずっといる”って言ってた」
柚葉は無邪気に笑っていたが、私は背中に冷たいものを感じた。
転校してきていない。出席簿にもいない。
でも、「“ずっといる”って言ってた」と。
職員室で、他の先生にも確認したが、そんな名前の子は登録されていないという。
「誰かの空想上の友達じゃない?」
そう結論づける同僚もいたが、私はどこか引っかかっていた。
その日、子どもたちの遊んでいる様子を撮影したタブレットを確認してみた。
だるまさんがころんだ。柚葉、紗季、陽翔、蒼真……そして――
見知らぬ女の子が、画面の一番奥に写っていた。
白いワンピース、前髪をまっすぐ切った長い黒髪。
顔は、カメラのレンズをまっすぐ見ていた。
次の日、また柚葉が言った。
「しおりちゃん、かくれんぼしようって!」
「どこで?」
「おトイレの奥。2階の女子トイレの一番奥の個室!」
そこは、今は誰も使っていない“封鎖されたトイレ”だった。
配管の故障で、今月から立ち入り禁止になっていたはずだ。
鍵も閉まっていた。
だが、念のため見に行ってみた。
女子トイレの前に、封鎖用のテープは破られていた。
そして、個室の一番奥のドアが――開いていた。
中には、何もいなかった。
だが、便器の上に、子どもが書いたような紙が置かれていた。
折り紙の裏に鉛筆でこう書かれていた。
> 「また かくれんぼ しようね
> ゆずはちゃんは もうすぐ こっちだよ」
震えが止まらなかった。
その夜、校内の監視カメラの映像を確認した。
17時32分、封鎖されていたはずの女子トイレの前に、柚葉が立っている。
その隣には――手をつないだもう一人の女の子の姿。
だが、不思議なことに、カメラの映像ではその子だけが“ノイズ”のようにぼやけていて、顔が映っていなかった。
翌朝、柚葉は登校しなかった。
保護者に連絡しても、電話がつながらない。
そのまま、行方不明扱いになった。
校内放送ではアナウンスされず、教師たちは不自然なほどに静かだった。
職員室の空気が、濁っていた。
私は、あの子の名前を検索した。
> 「しおり 小学校 幽霊」
> 「だるまさんがころんだ 死亡事故」
> 「小学校 遊び 消える」
そして、ひとつの記事にたどり着いた。
10年前、この学校で起きた事件。
校庭で“だるまさんがころんだ”をしていた少女が、突如いなくなった。
最後尾にいた彼女の姿が、遊びの途中で忽然と消えたという。
名前は――一ノ瀬しおり(いちのせ・しおり)。
子どもたちが集まる遊びの輪に、“しおり”は時折戻ってくる。
誰にも気づかれずに、まるで最初からいたかのように。
そして、誰かと“仲良くなる”と――またひとり、いなくなる。
今も、教室の後ろ、
出席簿にはない席に、誰かが座っている。
そして放課後、校庭の隅で子どもたちが声を上げる。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんーだ」
その最後列に、“見覚えのない誰か”が、そっと並んでいる。
◆エピローグ
集合写真を撮るとき、よく数が合わないときがある。
「一人、多い」「あれ、こんな子いたっけ?」
でも、写真に写ってる“あの子”――
本当に、最初からいた子ですか?
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる