121 / 147
121)『あなたの検索履歴、覗きました』
しおりを挟む
それは、最初に「死に方」を検索した夜からだった。
鬱屈した気持ちだった。
人間関係、仕事、未来。全部が霧のようにぼやけて、なんの意味もないように感じた。
「苦しくない死に方」
「自殺 方法 楽」
「睡眠薬 効果 時間」
そういう言葉を、酔った勢いでスマホに打ち込んだ。
もちろん、本気で死ぬつもりはなかった。
ただ、その時だけ“世界の音を消したかった”だけだ。
次の日、スマホの予測変換に奇妙な言葉が現れた。
「あなたの最期」
え? と首をかしげる。そんな言葉、打った覚えがない。
さらに検索候補にはこう並んでいた。
・「〇〇(自分のフルネーム) 死亡日時」
・「〇〇 首吊り 現場」
・「〇〇 遺書 書き方」
酔って何か打ったのかとも思ったが、検索履歴を見返しても、そんな単語はどこにもなかった。
気味が悪い。
でも、不思議とそのままにした。
翌日、寝る前に「〇〇(自分の名前) 死亡日時」で検索してみた。
ヒットするはずもない。ふざけた都市伝説か、デマサイトばかりだろうと思っていた。
だが、ひとつだけ、異様なURLのブログ記事が表示された。
> 【記録No.0547:〇〇(自分の名前)】
クリックすると、簡素な黒背景のページにこう書かれていた。
> 対象:〇〇〇〇(26歳・男)
> 状態:まだ未確定
> 候補:
> ①入浴中に意識を失う
> ②高速道路で意識を飛ばす
> ③睡眠中に窒息(自発)
……なんだこれ。
悪質なイタズラか。名前の情報がどこかで流出したのか。
しかし、ページの最下部にはこう書かれていた。
> 「本記録は、検索者本人による初回アクセスにより生成されます」
日を追うごとに、そのページは**“更新されていった”。**
次に見たときには、「状態:未確定」が「状態:観察中」に変わっていた。
候補の死に方も、「④電車内での過呼吸による発作」「⑤首吊り 未遂からの合併症」などが増えていた。
すべて、最近の俺の行動とリンクしていた。
電車で息が苦しくなった日、風呂で足を滑らせた夜、
“ただの偶然”が、すべて候補として記録されていく。
――俺は、“見られている”。
ある夜、画面に変化があった。
> 現在の死因予測精度:92.7%
そこに現れた一文が、背筋を凍らせた。
> 「明日、“あなた自身”が検索するキーワード:『遺書 書き方 テンプレ』」
そんなもの、検索するつもりはない。
だが次の日、気づいたら――本当に打っていた。
「いしょ かきかた」と。
なにか、おかしい。
俺の行動は、すでに“履歴”になっている。
未来を予測されているのではない。
**“先に記録された履歴に、自分が従って動いている”**のだ。
まるで、俺の思考そのものが、検索履歴に操られている。
逆だ。俺が検索しているんじゃない。
検索履歴が、俺を動かしている。
ある晩、眠る前に通知が届いた。
> 【新しい記録が登録されました】
> 【対象:No.0547】
> 【状態:確定】
> 【死因:自宅での転落による頭部外傷】
> 【日時:明日 午前3時22分】
ふざけんな。そんなこと、絶対に起きるか。
部屋を片付け、ベランダに出るのもやめた。
危険なことは何もしない。
念には念を入れて、ベッドの四隅にクッションを置き、頭にも枕を重ねて寝た。
午前3時22分。
目が覚めると、体が勝手に動いていた。
意識がぼんやりと浮かび、視界がぐにゃりと歪んでいる。
手には、スマホ。
検索欄にはこう打ち込まれていた。
> 「死後 意識 続く 何秒」
指が、勝手にタップする。
検索ボタンを押した瞬間、後頭部に激しい衝撃が走った。
数秒間の暗闇の中で、声が聞こえた。
「あなたの検索履歴、覗かせてもらいました。
次は、誰のを記録しようかな……」
◆エピローグ
あなたのスマホ。
検索欄の予測変換に、自分の名前が出てきたことはありませんか?
それ、もしかしたらもう――
**“あなたの履歴が覗かれてる”**のかもしれません。
鬱屈した気持ちだった。
人間関係、仕事、未来。全部が霧のようにぼやけて、なんの意味もないように感じた。
「苦しくない死に方」
「自殺 方法 楽」
「睡眠薬 効果 時間」
そういう言葉を、酔った勢いでスマホに打ち込んだ。
もちろん、本気で死ぬつもりはなかった。
ただ、その時だけ“世界の音を消したかった”だけだ。
次の日、スマホの予測変換に奇妙な言葉が現れた。
「あなたの最期」
え? と首をかしげる。そんな言葉、打った覚えがない。
さらに検索候補にはこう並んでいた。
・「〇〇(自分のフルネーム) 死亡日時」
・「〇〇 首吊り 現場」
・「〇〇 遺書 書き方」
酔って何か打ったのかとも思ったが、検索履歴を見返しても、そんな単語はどこにもなかった。
気味が悪い。
でも、不思議とそのままにした。
翌日、寝る前に「〇〇(自分の名前) 死亡日時」で検索してみた。
ヒットするはずもない。ふざけた都市伝説か、デマサイトばかりだろうと思っていた。
だが、ひとつだけ、異様なURLのブログ記事が表示された。
> 【記録No.0547:〇〇(自分の名前)】
クリックすると、簡素な黒背景のページにこう書かれていた。
> 対象:〇〇〇〇(26歳・男)
> 状態:まだ未確定
> 候補:
> ①入浴中に意識を失う
> ②高速道路で意識を飛ばす
> ③睡眠中に窒息(自発)
……なんだこれ。
悪質なイタズラか。名前の情報がどこかで流出したのか。
しかし、ページの最下部にはこう書かれていた。
> 「本記録は、検索者本人による初回アクセスにより生成されます」
日を追うごとに、そのページは**“更新されていった”。**
次に見たときには、「状態:未確定」が「状態:観察中」に変わっていた。
候補の死に方も、「④電車内での過呼吸による発作」「⑤首吊り 未遂からの合併症」などが増えていた。
すべて、最近の俺の行動とリンクしていた。
電車で息が苦しくなった日、風呂で足を滑らせた夜、
“ただの偶然”が、すべて候補として記録されていく。
――俺は、“見られている”。
ある夜、画面に変化があった。
> 現在の死因予測精度:92.7%
そこに現れた一文が、背筋を凍らせた。
> 「明日、“あなた自身”が検索するキーワード:『遺書 書き方 テンプレ』」
そんなもの、検索するつもりはない。
だが次の日、気づいたら――本当に打っていた。
「いしょ かきかた」と。
なにか、おかしい。
俺の行動は、すでに“履歴”になっている。
未来を予測されているのではない。
**“先に記録された履歴に、自分が従って動いている”**のだ。
まるで、俺の思考そのものが、検索履歴に操られている。
逆だ。俺が検索しているんじゃない。
検索履歴が、俺を動かしている。
ある晩、眠る前に通知が届いた。
> 【新しい記録が登録されました】
> 【対象:No.0547】
> 【状態:確定】
> 【死因:自宅での転落による頭部外傷】
> 【日時:明日 午前3時22分】
ふざけんな。そんなこと、絶対に起きるか。
部屋を片付け、ベランダに出るのもやめた。
危険なことは何もしない。
念には念を入れて、ベッドの四隅にクッションを置き、頭にも枕を重ねて寝た。
午前3時22分。
目が覚めると、体が勝手に動いていた。
意識がぼんやりと浮かび、視界がぐにゃりと歪んでいる。
手には、スマホ。
検索欄にはこう打ち込まれていた。
> 「死後 意識 続く 何秒」
指が、勝手にタップする。
検索ボタンを押した瞬間、後頭部に激しい衝撃が走った。
数秒間の暗闇の中で、声が聞こえた。
「あなたの検索履歴、覗かせてもらいました。
次は、誰のを記録しようかな……」
◆エピローグ
あなたのスマホ。
検索欄の予測変換に、自分の名前が出てきたことはありませんか?
それ、もしかしたらもう――
**“あなたの履歴が覗かれてる”**のかもしれません。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる