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第2章
11話
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「まったく。あんな人に、あそこまで効果のあるもの使わなくても放っておけば勝手に治るってのに……」
街道を進む、与一、セシル、アニエスの3人。
先ほどひと悶着あったあとで、怪我したアルベルトを『ちょうどいい実験体がいるじゃないか』と不気味な笑みを浮かべた与一が、治癒の粉塵を傷口に塗りたくったのだ。そしたらあら不思議。粉塵を塗られた切り傷たちが一瞬にして癒着していったのだ。
「まぁまぁ、おかげでお駄賃もらえて通行料払ってこうやって外に出られるんだ。俺も半信半疑だったあの粉塵の効果が見れて一石二鳥。晴れてみんなハッピーってわけだ!」
「先生の粉塵すごかった」
読んでいた本で口元を隠しながら、与一の顔をちらっと窺うセシル。
「そうだろう、そうだろう。今夜はあれを液体にしてポーションにすれば、一攫千金ってわけだ」
にししと笑って見せる与一。
「もとはと言えば、与一が原因でしょう!? なんで、叔父さんに説明しなかったのよ!」
セシルと話していた与一の元へ、目を細めて睨むと言うよりも、不満そうな目つきのアニエスがずいっと寄る。
問答無用とか言って切り掛かって事を荒げた当の本人がそれを言うか。やはり、叔父──アルベルトに似て怒ったら周りが見えなくなるのは血筋なのだろうか。そんなことを考えながらも与一はアニエスに感謝していた。
あの状態のアルベルトを放置していたら、今度は自分に何かされていたと考えるとある意味でのヒーローだったのだから。
「いやぁ、説明しようとはしたぞ? そんな目で俺を見るなよ。ほんとだからな! うん、まじで」
「はぁ……叔父さんも叔父さんだけど、最初に説明すればあんなことにはならなかったわよね」
「無茶言わないでくれ。あんな脳筋止めれたら苦労してないって」
両手でこれ以上近づくなアピールをする与一に、アニエスは深いため息をこぼして歩き出す。
落ち着いてから自身が調合師であること、いやし草を使ってスキルの検証をしていたこと。それらを厨房で開かれた反省会(主に説教されていたのはアルベルト)にて説明したのだ。与一が調合師だと聞いて、驚いていたアルベルトの顔は凄まじく。まるで、熊に遭遇した旅人のような表情のまま、ぺこりぺこりと頭を下げていた。
最初に恐怖すら感じていた漢が、弱々しい物腰でアニエスに説教をされて半べそかいていたのだ。与一の中にあった、アルベルトのイメージが崩壊していったのは言うまでもない。
「まぁ、結果的に丸く収まったんだ。いいじゃないか」
「そうね。過ぎた事は忘れましょ……って、そうじゃなくって! なんで私たち、普通に採集依頼受けて平原に向かってるのよ!」
「いつものこと」
「いつもじゃないでしょ!? 与一がなんでいるのかって聞いてるのよ!」
振り返って、声を荒げるアニエス。
その後ろで何を言ってるんだろう、と頭の上ではてなマークを作った与一とセシルは、一度顔を見合わせてからアニエスを見やった。
「え、俺はふたりと行動するものだと思ってたんだが……違ったか?」
「ううん、先生はパーティーメンバー」
と、素で話をするふたりを前に、アニエスは項垂れた。
昨晩どうやって与一を誘えばいいのだろうと考えていた彼女は、今後起こりうるであろう様々な可能性を考慮して、断られたとしても与一自身が後々後悔しないように話を持っていくはずだった。しかし、真剣に考えていたのはアニエスだけだったようで、ふたりは既にそれがさも当然のように話をしている。
「はぁ……もういいわよ。それで」
結局、ふたりに流されてしまったがこれで良かったのだろう。と、アニエスは微笑みながら楽し気に話をしながら歩いている『仲間』達を見やった。
「って、なんで置いてかれているのよ──ッ!? 待ちなさいってば──ッッ!!!」
採集依頼だからと最初は『土いじりなんていやよ!』と言っていたアニエスであったのだが、セシルと与一による薬草の特徴と毒草を簡単に見分けるコツ講座を受けてからは、まるで人が変わったかのように草むしりをするようになっていた──嬉しそうに与一の元に持ってくるのはいいのだが、大半が雑草だった。
与一とセシルのふたりでの作業はかなり効率が良く、わずか10分程度で依頼分の採集を終えていた。
それから、与一は目に付く薬草や毒草を引き抜いてはセシルの鞄へと詰め込んでいく。パンパンになった鞄を何も言わないで持っているセシルはまるで助手だった。
日が沈み始める頃にヤンサの街に戻ってきた3人。しかし、与一はセシルの鞄に入りきらなかった草花を抱えたまま冒険者ギルドの前を素通りしようとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!! それ、どうするつもり?」
与一の抱えている薬草や毒草の山を指さしながら、アニエスは少し怒った表情を見せた。
「どうするって、あれだ。あれ……」
気まずそうに視線をそらしながら答える与一。
「なんかもう理解したわ……依頼の納品と報告はこっちでやっておくから、早く行きなさい。こんな道のど真ん中で草の山持ってたら邪魔よ」
「先生、またあとで」
「へいへい、わかってますよ。んじゃ、あとは頼んだぞ──ッ!!」
今にもスキップしそうな足取りで宿へと向かっていく与一に、アニエスは背を向けると本を読もうと鞄を覗き込むセシルの手を取って冒険者ギルドの中へと入っていった。
相変わらず仕事を終えた冒険者で賑わう食事スペースを横目で見ながら、今回の依頼の報告と納品する品々を並べていく。それらをひとつひとつ確認して、依頼内容の記された羊皮紙にサインをする。納品物と羊皮紙を提出すれば依頼完了となる。
「すいません。与一さんは本日ご一緒ではないのですか?」
いやし草などを受け取った受付嬢が、不意に声をかけてきた。
「え、えぇ。さっき宿に戻っていったわよ?」
「わかりました。次にギルドに来る際は受付にお声がけするようお伝えください」
ぺこりと頭を下げる受付嬢。
なにかしら要件でもあったのだろうか。アニエスは深く考えずに報酬を受け取って、セシルと共にギルドを後にした。与一がなにかしら企んでいる事を知っている彼女は、一刻も早く宿に行かなければと足を急がせた。
宿について一番最初に違和感を感じたのはセシルだった。
中に足を踏み入れてからくんくんと部屋のにおいを嗅ぎながら、時折首を傾げては再度においを嗅ぐ。アニエスはなにも違和感を感じなかったようで、セシルの行動に疑問を抱きながらも厨房の扉をゆっくりと開けた。ギルドの前で与一を別れてから、そう時間もたっていない。だが、何も起こっていないだろう、と警戒を解いた彼女は扉を開けてすぐに硬直した。
そこに広がっていた光景は──。
街道を進む、与一、セシル、アニエスの3人。
先ほどひと悶着あったあとで、怪我したアルベルトを『ちょうどいい実験体がいるじゃないか』と不気味な笑みを浮かべた与一が、治癒の粉塵を傷口に塗りたくったのだ。そしたらあら不思議。粉塵を塗られた切り傷たちが一瞬にして癒着していったのだ。
「まぁまぁ、おかげでお駄賃もらえて通行料払ってこうやって外に出られるんだ。俺も半信半疑だったあの粉塵の効果が見れて一石二鳥。晴れてみんなハッピーってわけだ!」
「先生の粉塵すごかった」
読んでいた本で口元を隠しながら、与一の顔をちらっと窺うセシル。
「そうだろう、そうだろう。今夜はあれを液体にしてポーションにすれば、一攫千金ってわけだ」
にししと笑って見せる与一。
「もとはと言えば、与一が原因でしょう!? なんで、叔父さんに説明しなかったのよ!」
セシルと話していた与一の元へ、目を細めて睨むと言うよりも、不満そうな目つきのアニエスがずいっと寄る。
問答無用とか言って切り掛かって事を荒げた当の本人がそれを言うか。やはり、叔父──アルベルトに似て怒ったら周りが見えなくなるのは血筋なのだろうか。そんなことを考えながらも与一はアニエスに感謝していた。
あの状態のアルベルトを放置していたら、今度は自分に何かされていたと考えるとある意味でのヒーローだったのだから。
「いやぁ、説明しようとはしたぞ? そんな目で俺を見るなよ。ほんとだからな! うん、まじで」
「はぁ……叔父さんも叔父さんだけど、最初に説明すればあんなことにはならなかったわよね」
「無茶言わないでくれ。あんな脳筋止めれたら苦労してないって」
両手でこれ以上近づくなアピールをする与一に、アニエスは深いため息をこぼして歩き出す。
落ち着いてから自身が調合師であること、いやし草を使ってスキルの検証をしていたこと。それらを厨房で開かれた反省会(主に説教されていたのはアルベルト)にて説明したのだ。与一が調合師だと聞いて、驚いていたアルベルトの顔は凄まじく。まるで、熊に遭遇した旅人のような表情のまま、ぺこりぺこりと頭を下げていた。
最初に恐怖すら感じていた漢が、弱々しい物腰でアニエスに説教をされて半べそかいていたのだ。与一の中にあった、アルベルトのイメージが崩壊していったのは言うまでもない。
「まぁ、結果的に丸く収まったんだ。いいじゃないか」
「そうね。過ぎた事は忘れましょ……って、そうじゃなくって! なんで私たち、普通に採集依頼受けて平原に向かってるのよ!」
「いつものこと」
「いつもじゃないでしょ!? 与一がなんでいるのかって聞いてるのよ!」
振り返って、声を荒げるアニエス。
その後ろで何を言ってるんだろう、と頭の上ではてなマークを作った与一とセシルは、一度顔を見合わせてからアニエスを見やった。
「え、俺はふたりと行動するものだと思ってたんだが……違ったか?」
「ううん、先生はパーティーメンバー」
と、素で話をするふたりを前に、アニエスは項垂れた。
昨晩どうやって与一を誘えばいいのだろうと考えていた彼女は、今後起こりうるであろう様々な可能性を考慮して、断られたとしても与一自身が後々後悔しないように話を持っていくはずだった。しかし、真剣に考えていたのはアニエスだけだったようで、ふたりは既にそれがさも当然のように話をしている。
「はぁ……もういいわよ。それで」
結局、ふたりに流されてしまったがこれで良かったのだろう。と、アニエスは微笑みながら楽し気に話をしながら歩いている『仲間』達を見やった。
「って、なんで置いてかれているのよ──ッ!? 待ちなさいってば──ッッ!!!」
採集依頼だからと最初は『土いじりなんていやよ!』と言っていたアニエスであったのだが、セシルと与一による薬草の特徴と毒草を簡単に見分けるコツ講座を受けてからは、まるで人が変わったかのように草むしりをするようになっていた──嬉しそうに与一の元に持ってくるのはいいのだが、大半が雑草だった。
与一とセシルのふたりでの作業はかなり効率が良く、わずか10分程度で依頼分の採集を終えていた。
それから、与一は目に付く薬草や毒草を引き抜いてはセシルの鞄へと詰め込んでいく。パンパンになった鞄を何も言わないで持っているセシルはまるで助手だった。
日が沈み始める頃にヤンサの街に戻ってきた3人。しかし、与一はセシルの鞄に入りきらなかった草花を抱えたまま冒険者ギルドの前を素通りしようとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!! それ、どうするつもり?」
与一の抱えている薬草や毒草の山を指さしながら、アニエスは少し怒った表情を見せた。
「どうするって、あれだ。あれ……」
気まずそうに視線をそらしながら答える与一。
「なんかもう理解したわ……依頼の納品と報告はこっちでやっておくから、早く行きなさい。こんな道のど真ん中で草の山持ってたら邪魔よ」
「先生、またあとで」
「へいへい、わかってますよ。んじゃ、あとは頼んだぞ──ッ!!」
今にもスキップしそうな足取りで宿へと向かっていく与一に、アニエスは背を向けると本を読もうと鞄を覗き込むセシルの手を取って冒険者ギルドの中へと入っていった。
相変わらず仕事を終えた冒険者で賑わう食事スペースを横目で見ながら、今回の依頼の報告と納品する品々を並べていく。それらをひとつひとつ確認して、依頼内容の記された羊皮紙にサインをする。納品物と羊皮紙を提出すれば依頼完了となる。
「すいません。与一さんは本日ご一緒ではないのですか?」
いやし草などを受け取った受付嬢が、不意に声をかけてきた。
「え、えぇ。さっき宿に戻っていったわよ?」
「わかりました。次にギルドに来る際は受付にお声がけするようお伝えください」
ぺこりと頭を下げる受付嬢。
なにかしら要件でもあったのだろうか。アニエスは深く考えずに報酬を受け取って、セシルと共にギルドを後にした。与一がなにかしら企んでいる事を知っている彼女は、一刻も早く宿に行かなければと足を急がせた。
宿について一番最初に違和感を感じたのはセシルだった。
中に足を踏み入れてからくんくんと部屋のにおいを嗅ぎながら、時折首を傾げては再度においを嗅ぐ。アニエスはなにも違和感を感じなかったようで、セシルの行動に疑問を抱きながらも厨房の扉をゆっくりと開けた。ギルドの前で与一を別れてから、そう時間もたっていない。だが、何も起こっていないだろう、と警戒を解いた彼女は扉を開けてすぐに硬直した。
そこに広がっていた光景は──。
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