会長にコーヒーを☕

シナモン

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8話 そして神戸

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 香苗は駅に降り立った。JR新神戸駅。ここに降りるのはひさしぶりだ。

 いつも通り軽い気持ちで決めたのはいいが、のぞみ停車駅にしては静かな印象だ。在来線の止まる岡山駅と全然違う。

 それでも松江に比べれば人は多い。ロープウェイ乗り場にむかって歩いた。「ハーブ園かあ。」人が、列をなしていた。


 やっとリフトに乗り込むと、さすがの景色に圧倒された。ほぼ360度、都会の遠景だ。ポートタワーに高層ビルに、中華街の門も小さくなっていく。その向こうは海がキラキラ光ってる。


「わー香港みたい」


 女性の声が聞こえた。香港の景色がわからないけど、こんな感じなのね…香苗は思った。


 展望台で、家族連れやカップルの邪魔にならないよう適当にカメラに収め、園内を散策した。

 ハーブの素朴な香りに癒される。それは花ごとに違っていて、「こんな近くに広い公園があるんだなあ」 

 ここで、SNSで発信していればよかったかもしれない、だがしなかった。誰かと共有できていない分、情報も残してなかった。

 木陰のベンチに座りスマホで調べると、新神戸駅の近くにランチの店があった。もう少しここで過ごして降りようか。

 なんとなく気が沈みがちなのは一人なのもあるが会長とあんな会話を交わしたからだろうか。



 思い出したけど、神戸って坂道で有名…坂が急だ。ロープウエー駅から異人館経由三宮、この道順がよくなかったのか、思ったより勾配がきつい。
「ひっ」
 急カーブの木陰から突然車がぬっとあらわれ、冷や汗をかいた。
 汗を拭こうとバッグからハンカチを取り出す。会長に買ってもらったミュウミュウのバッグ。いつものエコバッグもどきよりもしゃれ込んだ。内ポケットに何かある。見てみると香水の小瓶と紙きれだった。
 …? 考えなく開いた。

⦅ 兄さんと一緒の時に使ってね。

 魔法の香水だよ。
 
 兄さんがやさしく○○してくれるかも。

 (´-`*)

 効果は数時間、ただし女には効かない。 ⦆



 ひえっ、驚いて落としてしまった。当然瓶は飛び散る。慌てて紙切れを破り捨てる。

 何考えてんだ、あいつは―――。

 いつ使えって? や、やめてよね! 頬が熱くなる。


「ぎゃあああ」狭い路地からまた車が飛び出して来た。さっと避けて、その拍子に、持っていたスマホが崖の下に落ちてしまった。

 ええええーー。


 探しに降りたけどわからない。結構な高さがあり後ろに水路がつながっている。スマホ無くしてどうすんの、この先。おそるべし、神戸の坂。ふと見ると普通のパンプスなのにもう傷ついてる…よ。涙

 これはもう仕方がない。覚悟を決めた。スマホ決済していないのが幸いだ。(会長に言われて)
 となると目指すは三宮だ。スマホを失ってはもう実家に帰るしかない。最悪、松江イオンで新しいの買おう…。

 えーと、バックアップってどうなってるんだっけ。

 ああ、それも全部会長がやってくれたんだ。ついこの間のことなのに自分が情けなくなる。また嫌味言われるな、こりゃ。せめて会長に買ってもらったバッグと財布が無事なのは不幸中の幸い。

 下り坂に勢いづいてやっと下まで降りていると、神社があるのに気づいた。

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