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ヴァルハラ編
2 秀vsヴォルガ
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side 九条湊
翌朝、長月の間で食事を済ませた後、クロードにまだ案内しきれていない部屋を紹介された。
長月の間を出て左に行くと三方向の分かれ道が出てくる。右手の階段を登ると食料庫である「弥生の間」と主に薬が保管された医療室である「如月の間」があり、左手の階段を登ると浴場である「師走の間」と道場である「霜月の間」がある。
残りの道を行くと調理場である「睦月の間」に着く。これで各部屋の紹介は終了したらしい。
その後ノアとシンの様子を見に行くため神無月の間に戻る途中、爺さんに会った。そして突然俺たちにこう問いかけた。
『秀に湊。お主ら、わしに鍛えられる気はあるかのう。わしがお主らをさらに強くしてやるぞ』
『そりゃあ強くなれるなら望む所だけどさ……爺さん、ほんとに強いのか?』
秀は爺さんの実力が半端ではないことを分かった上であえて言っているのだろう。腕試しをしたいといったところか。
『ほほう。言うではないか。ならば、わしとひと勝負してみるか?』
『おう、やってやろうじゃねぇか』
まあ、お互い全力を出すなんてバカな真似はしないだろうからノアやシンに危険が及ぶことはないと思うが、一応警戒しておくか。
卯月の間にあるゲートで下に移動した四人は木々が生い茂っていない広々とした草原に来ていた。クロードは結界を張り周りに被害が出ないようにしている。ちなみに内部にいるのは秀と爺さんだけである。
『秀よ。お主は八神家の血縁じゃから使うのは陰陽術じゃな。ならば、式神も当然持っているわけじゃのう。それは出さんでもよいのか?』
『はっ。それも知ってんのかよ、爺さん。あんたやっぱただもんじゃねぇな』
やはり秀が陰陽術の使い手であることを知っているのか。なら、確実に俺の刀氣術のとこも知っているな。
秀が人差し指と中指の二本の指を立てる。するとその間に白と黄金の光が入り混じった粒子を放ちながら、白い紙が生成された。
枚数は二枚のようで、人形のような形をしている。さらに、その中央の身体の部分には、縦に金色の不思議な文字が刻まれていた。
『我が呼びかけに答えよ。式神招来!』
その呼び声とともに、秀が二枚の紙……『式』を地面に投げれば、一瞬の淡い光が放たれた後に、二体の式神が現れる。
『煌、天、頼むぞ』
『『承知!』』
煌は雷獣と呼ばれる男の獣型の式神で黄色い電撃を体中に帯びており、雷系統の氣術を得意とする。天は八咫烏と呼ばれる男の獣型の式神で、デバフ効果のある氣術を得意とする。
『ふむ。なかなかいい式神じゃ。なによりその年で二体も召喚できるとは。おそらくは歴代でも随一の陰陽術師になるじゃろうて』
爺さんが何度か感心するように頷く。するとクロードが二人に声を飛ばす。
『先ほども言いましたが、相手を死に至らしめるような攻撃は厳禁です。私が、止め、と合図を出したら即刻終了とします。いいですね』
了承の返事を二人は頷きで表した。
『それでは、始め!』
……戦いが始まって数分が経った。今のところやや爺さんが押されているといった印象を受ける。だが、爺さんは武器を持っておらず素手で秀と渡り合っている。
『クソ!強いとは思ってたけどここまでとはな。陰陽術「氷雨」』
無数のつららのようなものが爺さんの上空から落とされていく。
『おお、おお、すごいのう。これではわしの足場もいつかはなくなってしまうではないか』
懸念する言葉とは裏腹に、爺さんは軽い口調で話し秀の氣術を軽々と避けていく。後方へと軽くジャンプを続け、爺さんは降り注ぐつららを次々にかわしていく。
『今だ!天!』
秀の合図に式神の天は爺さん目掛けて滑空した。
『「失光」……!』
天が爺さんの顔面に向かって大きく羽ばたく。すると黒がかった鋭い羽根が一直線に飛んでいった。この羽根は天が氣術で作り出したものだが、見ただけでは天自身の翼から本物の羽根が放たれたように見えるだろう。
『ぬぬ……!』
羽根が爺さんの身体へと刺ささった。しかし爺さんの身体にあるはずの傷口から出血はしていなかった。いや、傷口すらも見えないはずだ。なぜならこれは殺傷を目的とした術ではなく、爺さんの弱体化を狙ったものだからな。
『何も見えぬではないか……!』
これにはさすがの爺さんも狼狽えているようだ。
失光は、その文字通り対象の視界を暗闇に変えるものだ。その継続時間は刺さった羽根の量によって変化するらしい。
さて、ようやくあのニヤニヤとした余裕そうな表情がなくなったのは上々だが、このあと秀がどう動くのかが鍵になってきそうだ。
『煌!』
秀が名を呼ぶと、逆だった毛並みに電撃を纏った狼のような式神が大きく跳躍し秀の前に出る。そして口を大きく開け、その空白に電撃を溜めていく。
『「雷哮」!』
球体状となった電撃が一本の太い柱のように水平に放たれた。その先には視界を奪われて混乱する爺さんがいる。
上空からはつららが、前方からは電撃でできた光線が襲いかかっている。
これには爺さんも無傷とはいかないだろう……。
『……なーんてのう』
狼狽えていたはずの爺さんがニヤッと口角を上げた。その瞬間、爺さんは迫り来る電撃をするりとかわし、秀がいる方へ一直線に走り出した。
上空から降っているつららはお構いなしという勢いで突っ込んでいく。だというのに、つららはひとつたりとも命中せず、それどころか掠りすらもしていなかった。
『はあぁぁ……?!』
秀も大きく目を見開き、俺と同じく動揺を隠せずにいるようだ。
なぜ全く見えないはずだというのに、あんなにも俊敏に動けるんだ……?!
『第三の目でももっているのか、あの爺さんは……』
『ふふふ。驚きましたか?ヴォルガは普段は頼りにならないおバカさんですが、やるときはやる男です。特に戦闘面では、ね』
確かに爺さんからはものすごい氣の量を感じてはいたが、まさかここまでとは。俺たちの推測は想像以上に甘かったらしい。
『さて、今度はわしが攻めるとしよう』
爺さんはいつもの軽い感じの声とは全く違う重みのある声音を出す。
『破邪』
地面に突き刺さったままのつららの間隙さえも駆け抜けていく爺さんの手もとに、淡い光の粒子が発生し始めた。そしてその粒子は一本の棒状の何かへと形を構成していく。
それは金色に輝く槍だった。初めて爺さんが武器を取ったのだ。しかしそれがただの槍ではないことは秀も分かっているのだろう。焦りの顔が伺える。
『では……行くぞ』
爺さんは先ほどまでと違い、身体を軽くかがめて重心を落とした。そして超速で一直線に秀へと突っ込む。その様はまるで爺さんと槍が一体化した一本の巨大な槍のようで、言い表せないほどの威圧と迫力があった。
『くそっ……「岩壁」!』
『ドガーン!!』
秀が言葉を放つとほぼ同時に、轟音と衝撃が辺りに響く。砂埃が舞っているためどうなったのかはまだみえないがおそらくは……。
『……ッ。あっぶねぇ……』
秀の前には分厚い壁がいくつか形成され、爺さんの攻撃はその岩壁を何枚も貫いてはいた。だが、秀にはギリギリ届いてはいなかった。
立ち上がった秀の眼前には、まさに目と鼻の先に槍先があった。秀を守った最後の岩壁には、先っちょだけ突き出た槍先と底を中心に広がる大きなひび跡が残っている。
『ほう?これを凌ぐとは、やるではないか』
爺さんが槍を抜くと、岩壁は大きな音を立てて崩れ落ちた。同時に他の巨大な穴の空いた壁も一気に瓦解する。
『はっ。俺はまだ本気を出してはいないんだぜ』
秀は強気に爺さんへと言葉をぶつける。内心では震えているかもしれないが、俺も秀もここで弱気なところを見せるような、やわな鍛え方はしていない。
『言うではないか。ならばお主の全力をこのわしに見せてみよ!』
爺さんは槍を振り上げた。そして秀目掛けて勢いよく振り下ろす。
『『秀様!』』
式神たちが秀の名前を叫ぶ。先ほどの爺さんの攻撃ですでに秀の近くに戻ってきていたとはいえ、煌も天も爺さんの攻撃を食い止める、あるいは秀を守るには時間も距離も足りない。
『そこまでです!』
いつのまにか隣からいなくなっていたクロードの合図で、爺さんは攻撃を止めた。
勢いよく振り下ろされたはずの槍がピタリと制止したわけだが、行き場を失ったその勢いは、衝撃波となって周囲の物体を襲った。
式神たちや木々はその衝撃波に晒され、飛ばされないようにと耐え忍んでいる。そして、爺さんの槍はといえば、あと数センチで秀に当たるところで静止していた。
『……ふぅー。クロード、なぜ止めたのじゃ。これからが本番じゃろうて』
爺さんは不機嫌そうに結界を解除し近づいてきたクロードへ問いかけた。
『あなたはバカですか。これ以上やったら秀君の命に関わります。まだ動き足りないのであれば……私が代わりにお相手しますが?』
『なな、なんじゃと!そ、それだけは嫌じゃー!!』
まるで子どものように叫ぶ爺さん。さっきまでの威厳はもう跡形もなく消えていた。
『なら、これでこの試合は終わりです。秀君もいいですね』
『あ、ああ。……煌、天ありがとな』
秀は目の前で心配そうに見つめる式神たちに礼を言う。
『秀様。お役に立てず申し訳ない』
『私も秀様のお力になれず……』
煌と天は主人たる秀へと謝る。
あの二人は秀の式神の中ではトップクラスの強さを誇るわけではないが、その辺のやつらに負けるほど決して弱くもない。その式神と秀を相手に楽々と戦っていた爺さんは、やはり侮れない人物だ。
『いや、お前らは十分やってくれた。助かったよ』
秀は落ち込む煌と天の頭を撫でた。
『次も頼んだ』
『『はい!』』
二人は顔を上げ元気よく大きな声を出す。そして二人の姿がこの場から消えた。
秀が元の場所へと帰したのだろう。俺も正確なことは知らないが、実は世の中には知られていない、式神たちの世界というのがあるらしい。
ちなみに、秀が契約した式神は全部で九体存在しているが、俺もまだ全員に会ったことがあるわけではない。秀の力不足でまだ招来できない式神がいるようで、早くまた会いてぇなとぼやいていた気がする。
『秀。大丈夫か』
俺は傷だらけの秀へと声をかけた。
『おう。まあな。けどあの爺さん、強すぎるって』
『俺たちの予想をはるかに超えていたな』
『まったくだぜ。俺らのオヤジたちよりもつえぇぞ』
『ああ。そうみたいだな』
『秀君、大丈夫ですか?』
爺さんへの説教が終わったのか、クロードが秀の体を心配した。爺さんはその後ろをうつむきながらとぼとぼとついてくる。
さっきまでの威厳あるオーラはどこにいったのやら……。
『まあ、なんとかな』
『擦り傷が多い。それに服もボロボロですね。すぐに治療しましょう』
『ああ、こんくらい問題ないですって。里にいた頃なんか、こんなん日常茶飯事だったし……』
秀は座りながら自分の傷を軽く観察していた。そんな秀の傷だらけの腕を手に取って、クロードは秀の顔を鋭い目で見た。
『ダメですよ。怪我は早く治すに限ります。放置しててもなんのいいこともないんですから。わかりましたか?』
『う……わかりましたよ』
異論を言わせない圧のある言動に、秀は抵抗できずに治療を受け入れた。クロードは傷口に薬を塗り込み、ひどいところには布を貼っていく。そして最後には包帯を丁寧に巻いていった。
『さっきの二体の式神は会ったことがなかったが、割と新しいアヤカシなのかのう?』
落ち込んでいたはずの爺さんは、いつのまにやら本調子に戻ったらしく、普段のような口調で秀に声をかけた。
『はぁ?!なんでアヤカシのことも知ってんだよ!』
秀は前のめり気味に爺さんへと言葉を飛ばした。
『秀君。急に動いてはいけません。大人しくしててください』
『あ……すんません』
そんな秀をクロードさんは軽く諌めた。
『ハッハッハ。わしはこの世のすべて、なーんでも知っておるわ』
『……なら俺だけじゃなく湊のことも全部知ってるってことだよな?』
『ふむ。当然じゃよ』
爺さんは自信満々にうなづいた。
『じゃあ、湊の首に巻きついてる奴のこともわかるんだよな』
こいつは基本的に俺たちの一族にしか見えない神聖な生物だ。いくら爺さんたちが只者ではないといっても見えるはずがない。
『おい、秀。さすがにそれは……』
『もちろんわかっておる。九条家の守り神である夜刀神であろう?』
は……?なぜそのことを……いや待てよ。知っていることと見えていることはまた別問題だ。爺さんがこいつを……紫苑を可視化できているとは限らない。
だが、とはいえ……。
『随分と可愛らしい姿にはなっておるが、そやつから発せられる独特なオーラは主らと出会った時点で感じ取っておったし見えてもいたぞ。のう、クロード』
『ええ、まあ。それもあって秀君や湊君たちの素性は大方すぐに分かりました』
なんなんだこいつらは。いくらなんでも知りすぎている。身内にしか知れていないはずの情報まで……。
しかも紫苑が見えているというのはまずありえない。確かに紫苑が相手に見せようとすれば見せられるが今はそれをしていない。
ということはつまり……。
『おいマジか。爺さんだけじゃなくクロードさんまで紫苑のことわかってんのかよ……。一体全体どうなってんだぁぁぁ』
治療を終えた秀は地面に大の字に寝転がった。そして俺の気持ちを代弁するかのように、仰ぎ見る大空に向かって言い放った。
『まあまあ、よいではないか。そのうちお主らにもわしらのことを話してやろう。でなければフェアではないからのう。それとこの試合はわしの勝ちということでええのか?』
爺さんは寝転がる秀を覗き込んで言った。すると秀はムッとした顔をしながらも、軽く後頭部を掻きながら起き上がる。
『……そりゃ、誰がどう見ても爺さんの勝ちだろ』
『そうかそうか。ではお主らはわしの弟子になるということじゃな?』
『『え?』』
そんな話、どこでした?
『言ったであろう。わしに鍛えられる気はあるかと。そしたらお主がわしに勝負を挑んだ。結果、わしは勝った。ということはじゃ、お主らは今後、わしの鍛錬に付き合うということじゃ。つまりはわしの弟子になる、ということじゃろう。これでわしは師匠と呼ばれることになるのかのう。うむうむ。実にいい響きじゃな!』
『『……』』
まあ、爺さんに教われば俺たちがさらに強くなれることに違いないとは思う。が、爺さんを師匠とは絶対に呼びはしないと、俺は心に誓った。
秀と爺さんの試合後の夜、俺は里が襲撃された日以来話をしていなかった紫苑に、爺さんやクロードのことをどう思うか聞いてみることにした。
紫苑は黒い鱗に綺麗な青い瞳をもつ蛇のような姿をしていて、頭部には二本の角をもつ。そして九条家の守り神であり当主が代々契約する。
俺の場合は父さんが俺がまだ赤子であった頃に俺と紫苑の契約を実行していたらしい。そんな紫苑は俺のよき相棒だ。
『紫苑。あの二人のことどう思う?』
これまでおとなしくしていた紫苑は、俺の首から俺の目の前の床に移動して俺の問いかけに応じる。
『ふむ。私から言えるのはヴォルガとクロードを危険視する必要は全くないということだけだ』
やはり紫苑も俺たち同様あの二人を危険な存在とは思っていないようだ。なら、そこまで警戒する必要はないということか。
『そうか。……紫苑。なぜ爺さんとクロードはお前の姿が視認できたと思う?』
警戒する必要がなくなったといっても二人が未だ正体不明の人物たちであることに変わりはない。紫苑が見えるというのがいい証拠だろう。
『ふむ。その理由を私が教えることはできるが……。もう少し待て』
紫苑がこんなに曖昧なことを言うのは珍しいな。なにか思うところがあるのだろう。
『わかった』
その後結局紫苑はこのことについて触れることはなく、爺さんたち自身からその正体を聞くこととなったのだが……それはまた別の話だ。
side 八神秀
「今日こそは爺さんに勝ってやる」
「秀。大きな声を出すな。ノアとシンが起きるだろう」
「ああ、わりぃ」
俺を注意した湊はすやすやと眠るノアとシンの頭を優しく撫でている。その顔は湊がめったに見せない柔らかい笑みだった。
「湊ってノアとシンの前じゃすげー優しい顔するのに普段は無愛想というか無表情というか……。まあ、クールだよな」
「それはお前が子供っぽいだけじゃないのか」
「そりゃあ俺が湊よりガキっぽいところがあるのは認めるけどさ。それにしたって湊は子供らしさがないだろ」
「……別にどうでもいいだろ、そんなこと」
「それもそうか。湊は湊だしな。うし!とっとと飯食って爺さんに勝つぞ!」
里が壊滅し、この世界に足を踏み入れたばかりの時はまさかこんなにも居心地の良い日々を遅れることになるだなんて思ってもいなかった。ここで過ごす時間は里にいた時と同程度の穏やかな毎日だ。そしてそんな日々を過ごしていくうちに、いつの間にか根源界にきてから六年という月日が流れていた。
翌朝、長月の間で食事を済ませた後、クロードにまだ案内しきれていない部屋を紹介された。
長月の間を出て左に行くと三方向の分かれ道が出てくる。右手の階段を登ると食料庫である「弥生の間」と主に薬が保管された医療室である「如月の間」があり、左手の階段を登ると浴場である「師走の間」と道場である「霜月の間」がある。
残りの道を行くと調理場である「睦月の間」に着く。これで各部屋の紹介は終了したらしい。
その後ノアとシンの様子を見に行くため神無月の間に戻る途中、爺さんに会った。そして突然俺たちにこう問いかけた。
『秀に湊。お主ら、わしに鍛えられる気はあるかのう。わしがお主らをさらに強くしてやるぞ』
『そりゃあ強くなれるなら望む所だけどさ……爺さん、ほんとに強いのか?』
秀は爺さんの実力が半端ではないことを分かった上であえて言っているのだろう。腕試しをしたいといったところか。
『ほほう。言うではないか。ならば、わしとひと勝負してみるか?』
『おう、やってやろうじゃねぇか』
まあ、お互い全力を出すなんてバカな真似はしないだろうからノアやシンに危険が及ぶことはないと思うが、一応警戒しておくか。
卯月の間にあるゲートで下に移動した四人は木々が生い茂っていない広々とした草原に来ていた。クロードは結界を張り周りに被害が出ないようにしている。ちなみに内部にいるのは秀と爺さんだけである。
『秀よ。お主は八神家の血縁じゃから使うのは陰陽術じゃな。ならば、式神も当然持っているわけじゃのう。それは出さんでもよいのか?』
『はっ。それも知ってんのかよ、爺さん。あんたやっぱただもんじゃねぇな』
やはり秀が陰陽術の使い手であることを知っているのか。なら、確実に俺の刀氣術のとこも知っているな。
秀が人差し指と中指の二本の指を立てる。するとその間に白と黄金の光が入り混じった粒子を放ちながら、白い紙が生成された。
枚数は二枚のようで、人形のような形をしている。さらに、その中央の身体の部分には、縦に金色の不思議な文字が刻まれていた。
『我が呼びかけに答えよ。式神招来!』
その呼び声とともに、秀が二枚の紙……『式』を地面に投げれば、一瞬の淡い光が放たれた後に、二体の式神が現れる。
『煌、天、頼むぞ』
『『承知!』』
煌は雷獣と呼ばれる男の獣型の式神で黄色い電撃を体中に帯びており、雷系統の氣術を得意とする。天は八咫烏と呼ばれる男の獣型の式神で、デバフ効果のある氣術を得意とする。
『ふむ。なかなかいい式神じゃ。なによりその年で二体も召喚できるとは。おそらくは歴代でも随一の陰陽術師になるじゃろうて』
爺さんが何度か感心するように頷く。するとクロードが二人に声を飛ばす。
『先ほども言いましたが、相手を死に至らしめるような攻撃は厳禁です。私が、止め、と合図を出したら即刻終了とします。いいですね』
了承の返事を二人は頷きで表した。
『それでは、始め!』
……戦いが始まって数分が経った。今のところやや爺さんが押されているといった印象を受ける。だが、爺さんは武器を持っておらず素手で秀と渡り合っている。
『クソ!強いとは思ってたけどここまでとはな。陰陽術「氷雨」』
無数のつららのようなものが爺さんの上空から落とされていく。
『おお、おお、すごいのう。これではわしの足場もいつかはなくなってしまうではないか』
懸念する言葉とは裏腹に、爺さんは軽い口調で話し秀の氣術を軽々と避けていく。後方へと軽くジャンプを続け、爺さんは降り注ぐつららを次々にかわしていく。
『今だ!天!』
秀の合図に式神の天は爺さん目掛けて滑空した。
『「失光」……!』
天が爺さんの顔面に向かって大きく羽ばたく。すると黒がかった鋭い羽根が一直線に飛んでいった。この羽根は天が氣術で作り出したものだが、見ただけでは天自身の翼から本物の羽根が放たれたように見えるだろう。
『ぬぬ……!』
羽根が爺さんの身体へと刺ささった。しかし爺さんの身体にあるはずの傷口から出血はしていなかった。いや、傷口すらも見えないはずだ。なぜならこれは殺傷を目的とした術ではなく、爺さんの弱体化を狙ったものだからな。
『何も見えぬではないか……!』
これにはさすがの爺さんも狼狽えているようだ。
失光は、その文字通り対象の視界を暗闇に変えるものだ。その継続時間は刺さった羽根の量によって変化するらしい。
さて、ようやくあのニヤニヤとした余裕そうな表情がなくなったのは上々だが、このあと秀がどう動くのかが鍵になってきそうだ。
『煌!』
秀が名を呼ぶと、逆だった毛並みに電撃を纏った狼のような式神が大きく跳躍し秀の前に出る。そして口を大きく開け、その空白に電撃を溜めていく。
『「雷哮」!』
球体状となった電撃が一本の太い柱のように水平に放たれた。その先には視界を奪われて混乱する爺さんがいる。
上空からはつららが、前方からは電撃でできた光線が襲いかかっている。
これには爺さんも無傷とはいかないだろう……。
『……なーんてのう』
狼狽えていたはずの爺さんがニヤッと口角を上げた。その瞬間、爺さんは迫り来る電撃をするりとかわし、秀がいる方へ一直線に走り出した。
上空から降っているつららはお構いなしという勢いで突っ込んでいく。だというのに、つららはひとつたりとも命中せず、それどころか掠りすらもしていなかった。
『はあぁぁ……?!』
秀も大きく目を見開き、俺と同じく動揺を隠せずにいるようだ。
なぜ全く見えないはずだというのに、あんなにも俊敏に動けるんだ……?!
『第三の目でももっているのか、あの爺さんは……』
『ふふふ。驚きましたか?ヴォルガは普段は頼りにならないおバカさんですが、やるときはやる男です。特に戦闘面では、ね』
確かに爺さんからはものすごい氣の量を感じてはいたが、まさかここまでとは。俺たちの推測は想像以上に甘かったらしい。
『さて、今度はわしが攻めるとしよう』
爺さんはいつもの軽い感じの声とは全く違う重みのある声音を出す。
『破邪』
地面に突き刺さったままのつららの間隙さえも駆け抜けていく爺さんの手もとに、淡い光の粒子が発生し始めた。そしてその粒子は一本の棒状の何かへと形を構成していく。
それは金色に輝く槍だった。初めて爺さんが武器を取ったのだ。しかしそれがただの槍ではないことは秀も分かっているのだろう。焦りの顔が伺える。
『では……行くぞ』
爺さんは先ほどまでと違い、身体を軽くかがめて重心を落とした。そして超速で一直線に秀へと突っ込む。その様はまるで爺さんと槍が一体化した一本の巨大な槍のようで、言い表せないほどの威圧と迫力があった。
『くそっ……「岩壁」!』
『ドガーン!!』
秀が言葉を放つとほぼ同時に、轟音と衝撃が辺りに響く。砂埃が舞っているためどうなったのかはまだみえないがおそらくは……。
『……ッ。あっぶねぇ……』
秀の前には分厚い壁がいくつか形成され、爺さんの攻撃はその岩壁を何枚も貫いてはいた。だが、秀にはギリギリ届いてはいなかった。
立ち上がった秀の眼前には、まさに目と鼻の先に槍先があった。秀を守った最後の岩壁には、先っちょだけ突き出た槍先と底を中心に広がる大きなひび跡が残っている。
『ほう?これを凌ぐとは、やるではないか』
爺さんが槍を抜くと、岩壁は大きな音を立てて崩れ落ちた。同時に他の巨大な穴の空いた壁も一気に瓦解する。
『はっ。俺はまだ本気を出してはいないんだぜ』
秀は強気に爺さんへと言葉をぶつける。内心では震えているかもしれないが、俺も秀もここで弱気なところを見せるような、やわな鍛え方はしていない。
『言うではないか。ならばお主の全力をこのわしに見せてみよ!』
爺さんは槍を振り上げた。そして秀目掛けて勢いよく振り下ろす。
『『秀様!』』
式神たちが秀の名前を叫ぶ。先ほどの爺さんの攻撃ですでに秀の近くに戻ってきていたとはいえ、煌も天も爺さんの攻撃を食い止める、あるいは秀を守るには時間も距離も足りない。
『そこまでです!』
いつのまにか隣からいなくなっていたクロードの合図で、爺さんは攻撃を止めた。
勢いよく振り下ろされたはずの槍がピタリと制止したわけだが、行き場を失ったその勢いは、衝撃波となって周囲の物体を襲った。
式神たちや木々はその衝撃波に晒され、飛ばされないようにと耐え忍んでいる。そして、爺さんの槍はといえば、あと数センチで秀に当たるところで静止していた。
『……ふぅー。クロード、なぜ止めたのじゃ。これからが本番じゃろうて』
爺さんは不機嫌そうに結界を解除し近づいてきたクロードへ問いかけた。
『あなたはバカですか。これ以上やったら秀君の命に関わります。まだ動き足りないのであれば……私が代わりにお相手しますが?』
『なな、なんじゃと!そ、それだけは嫌じゃー!!』
まるで子どものように叫ぶ爺さん。さっきまでの威厳はもう跡形もなく消えていた。
『なら、これでこの試合は終わりです。秀君もいいですね』
『あ、ああ。……煌、天ありがとな』
秀は目の前で心配そうに見つめる式神たちに礼を言う。
『秀様。お役に立てず申し訳ない』
『私も秀様のお力になれず……』
煌と天は主人たる秀へと謝る。
あの二人は秀の式神の中ではトップクラスの強さを誇るわけではないが、その辺のやつらに負けるほど決して弱くもない。その式神と秀を相手に楽々と戦っていた爺さんは、やはり侮れない人物だ。
『いや、お前らは十分やってくれた。助かったよ』
秀は落ち込む煌と天の頭を撫でた。
『次も頼んだ』
『『はい!』』
二人は顔を上げ元気よく大きな声を出す。そして二人の姿がこの場から消えた。
秀が元の場所へと帰したのだろう。俺も正確なことは知らないが、実は世の中には知られていない、式神たちの世界というのがあるらしい。
ちなみに、秀が契約した式神は全部で九体存在しているが、俺もまだ全員に会ったことがあるわけではない。秀の力不足でまだ招来できない式神がいるようで、早くまた会いてぇなとぼやいていた気がする。
『秀。大丈夫か』
俺は傷だらけの秀へと声をかけた。
『おう。まあな。けどあの爺さん、強すぎるって』
『俺たちの予想をはるかに超えていたな』
『まったくだぜ。俺らのオヤジたちよりもつえぇぞ』
『ああ。そうみたいだな』
『秀君、大丈夫ですか?』
爺さんへの説教が終わったのか、クロードが秀の体を心配した。爺さんはその後ろをうつむきながらとぼとぼとついてくる。
さっきまでの威厳あるオーラはどこにいったのやら……。
『まあ、なんとかな』
『擦り傷が多い。それに服もボロボロですね。すぐに治療しましょう』
『ああ、こんくらい問題ないですって。里にいた頃なんか、こんなん日常茶飯事だったし……』
秀は座りながら自分の傷を軽く観察していた。そんな秀の傷だらけの腕を手に取って、クロードは秀の顔を鋭い目で見た。
『ダメですよ。怪我は早く治すに限ります。放置しててもなんのいいこともないんですから。わかりましたか?』
『う……わかりましたよ』
異論を言わせない圧のある言動に、秀は抵抗できずに治療を受け入れた。クロードは傷口に薬を塗り込み、ひどいところには布を貼っていく。そして最後には包帯を丁寧に巻いていった。
『さっきの二体の式神は会ったことがなかったが、割と新しいアヤカシなのかのう?』
落ち込んでいたはずの爺さんは、いつのまにやら本調子に戻ったらしく、普段のような口調で秀に声をかけた。
『はぁ?!なんでアヤカシのことも知ってんだよ!』
秀は前のめり気味に爺さんへと言葉を飛ばした。
『秀君。急に動いてはいけません。大人しくしててください』
『あ……すんません』
そんな秀をクロードさんは軽く諌めた。
『ハッハッハ。わしはこの世のすべて、なーんでも知っておるわ』
『……なら俺だけじゃなく湊のことも全部知ってるってことだよな?』
『ふむ。当然じゃよ』
爺さんは自信満々にうなづいた。
『じゃあ、湊の首に巻きついてる奴のこともわかるんだよな』
こいつは基本的に俺たちの一族にしか見えない神聖な生物だ。いくら爺さんたちが只者ではないといっても見えるはずがない。
『おい、秀。さすがにそれは……』
『もちろんわかっておる。九条家の守り神である夜刀神であろう?』
は……?なぜそのことを……いや待てよ。知っていることと見えていることはまた別問題だ。爺さんがこいつを……紫苑を可視化できているとは限らない。
だが、とはいえ……。
『随分と可愛らしい姿にはなっておるが、そやつから発せられる独特なオーラは主らと出会った時点で感じ取っておったし見えてもいたぞ。のう、クロード』
『ええ、まあ。それもあって秀君や湊君たちの素性は大方すぐに分かりました』
なんなんだこいつらは。いくらなんでも知りすぎている。身内にしか知れていないはずの情報まで……。
しかも紫苑が見えているというのはまずありえない。確かに紫苑が相手に見せようとすれば見せられるが今はそれをしていない。
ということはつまり……。
『おいマジか。爺さんだけじゃなくクロードさんまで紫苑のことわかってんのかよ……。一体全体どうなってんだぁぁぁ』
治療を終えた秀は地面に大の字に寝転がった。そして俺の気持ちを代弁するかのように、仰ぎ見る大空に向かって言い放った。
『まあまあ、よいではないか。そのうちお主らにもわしらのことを話してやろう。でなければフェアではないからのう。それとこの試合はわしの勝ちということでええのか?』
爺さんは寝転がる秀を覗き込んで言った。すると秀はムッとした顔をしながらも、軽く後頭部を掻きながら起き上がる。
『……そりゃ、誰がどう見ても爺さんの勝ちだろ』
『そうかそうか。ではお主らはわしの弟子になるということじゃな?』
『『え?』』
そんな話、どこでした?
『言ったであろう。わしに鍛えられる気はあるかと。そしたらお主がわしに勝負を挑んだ。結果、わしは勝った。ということはじゃ、お主らは今後、わしの鍛錬に付き合うということじゃ。つまりはわしの弟子になる、ということじゃろう。これでわしは師匠と呼ばれることになるのかのう。うむうむ。実にいい響きじゃな!』
『『……』』
まあ、爺さんに教われば俺たちがさらに強くなれることに違いないとは思う。が、爺さんを師匠とは絶対に呼びはしないと、俺は心に誓った。
秀と爺さんの試合後の夜、俺は里が襲撃された日以来話をしていなかった紫苑に、爺さんやクロードのことをどう思うか聞いてみることにした。
紫苑は黒い鱗に綺麗な青い瞳をもつ蛇のような姿をしていて、頭部には二本の角をもつ。そして九条家の守り神であり当主が代々契約する。
俺の場合は父さんが俺がまだ赤子であった頃に俺と紫苑の契約を実行していたらしい。そんな紫苑は俺のよき相棒だ。
『紫苑。あの二人のことどう思う?』
これまでおとなしくしていた紫苑は、俺の首から俺の目の前の床に移動して俺の問いかけに応じる。
『ふむ。私から言えるのはヴォルガとクロードを危険視する必要は全くないということだけだ』
やはり紫苑も俺たち同様あの二人を危険な存在とは思っていないようだ。なら、そこまで警戒する必要はないということか。
『そうか。……紫苑。なぜ爺さんとクロードはお前の姿が視認できたと思う?』
警戒する必要がなくなったといっても二人が未だ正体不明の人物たちであることに変わりはない。紫苑が見えるというのがいい証拠だろう。
『ふむ。その理由を私が教えることはできるが……。もう少し待て』
紫苑がこんなに曖昧なことを言うのは珍しいな。なにか思うところがあるのだろう。
『わかった』
その後結局紫苑はこのことについて触れることはなく、爺さんたち自身からその正体を聞くこととなったのだが……それはまた別の話だ。
side 八神秀
「今日こそは爺さんに勝ってやる」
「秀。大きな声を出すな。ノアとシンが起きるだろう」
「ああ、わりぃ」
俺を注意した湊はすやすやと眠るノアとシンの頭を優しく撫でている。その顔は湊がめったに見せない柔らかい笑みだった。
「湊ってノアとシンの前じゃすげー優しい顔するのに普段は無愛想というか無表情というか……。まあ、クールだよな」
「それはお前が子供っぽいだけじゃないのか」
「そりゃあ俺が湊よりガキっぽいところがあるのは認めるけどさ。それにしたって湊は子供らしさがないだろ」
「……別にどうでもいいだろ、そんなこと」
「それもそうか。湊は湊だしな。うし!とっとと飯食って爺さんに勝つぞ!」
里が壊滅し、この世界に足を踏み入れたばかりの時はまさかこんなにも居心地の良い日々を遅れることになるだなんて思ってもいなかった。ここで過ごす時間は里にいた時と同程度の穏やかな毎日だ。そしてそんな日々を過ごしていくうちに、いつの間にか根源界にきてから六年という月日が流れていた。
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