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グランドベゼル編
2 新たな風
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side 八神秀
「ヴァネッサさん。ご無沙汰してるな」
「あら、秀さん。それに皆様も。お元気でしたか?」
ヴァネッサさんはいつものように紫を基調とした花柄で綺麗な着物を着て仕事に励んでいた。ただ少し気になる点があるなぁ。
「まあなぁ。それで宿を八人分取りたいんだが……」
「ええ。構いませんよ。ちょうどいつもの部屋が空いておりますから、そちらをお使いください」
「ありがてぇ」
「では、私はこれでーーー」
「ちょっと待ってくれ。ドレイクの旦那はどうしたんだ?」
そう、この宿の経営主であるドレイクの旦那が見当たらねぇ。ただ買い物に出てるだけってのも考えられるが……。
「それは……」
「お父さんはね、別のお仕事でいないんだよぉー?」
言い渋るヴァネッサさんの背後からぴょこっと現れたベル。ヴァネッサさんの代わりに答えるかのようにはっきりとしゃべった。
「こら、ベル!」
「別の仕事?」
俺はベルの顔と並行になるようにしゃがんだ。
「うん!この国を守る大事なお仕事なんだって、お父さん言ってたもん」
「ベル!」
「んんんんー」
ヴァネッサさんはこれ以上ベルが余計なことを話さないようにベルの口を塞いでしまった。
これ以上は無理そうだなぁ。
「すまねぇな、ヴァネッサさん。ドレイクの旦那になんかあったのかもしれねぇと思って、少し気になっただけなんだ」
「あ、いえ。こちらこそお見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません」
「じゃ、俺たちは行くわ。部屋、ありがとなぁ」
俺たちは廊下を歩きいつもの部屋へと入る。エルは隣の部屋。俺と湊とリュウはこの部屋だ。
「戻って早々だが、波乱の予感だな」
俺たちはひとまずテーブルを囲んで畳に座った。そして湊が第一声を放った。
「だな。俺たちを巻き込まねぇってんなら構わねぇんだがなぁ……」
「それに越したことはないが、万が一火の粉がこちらに降りかかる可能性もあるだろう」
湊も俺と同じ考えみてぇだな。
「その辺はイオリに聞けばあらかた分かりそうなもんだが……」
イオリが今どこにいるかなど俺たちにわかるはずがない。おそらくイオリとともにこの国を影から守るドレイクの旦那もこの宿を離れている。俺たちは現在、イオリたちの情報を何も手に入れられない状況下にある。
「期待できそうにはないな」
冷静な判断を下す湊。
「天を呼ぶか?」
天なら少なくとも手をこまねいている今の状態よりは有益な情報を手に入れられる。
だがまあ……。
「そこまでしなくてもいいだろう。変に気負っても仕方がない」
ま、そうだよな。
「とりあえず頭の片隅にでも入れとく程度に留めておくかぁ」
先ほどの違和感をどうするかについて、湊と大体の方針を決めた。まあ、今後もしイオリとドレイクの旦那に会えた時は、しっかり話しねぇとなぁ。
「あ、あの……何の話……?」
「ああ、わりぃなぁ。リュウにはつまんねぇ話だったよな」
リュウがいたことすっかり忘れてたぜ。馬鹿か俺は。別に聞かれたくねぇ話じゃねぇとしても、時と場所を考えろよなぁ。
「えと、秀兄ちゃんも、湊兄ちゃんも……怖い顔、してたから……何か、あったのかな、って……」
おいおい、心配してくれてたのかよ。いい奴すぎねぇか?こんなに純真無垢じゃぁ、簡単に誘拐とかされそうなんだがぁ?
「んんっ。リュウのその気持ち、すげぇ嬉しいぜ。優しいなぁ、お前は」
俺はノアにするように優しくリュウの頭を撫でた。なーんか、幼い頃のノアやシンを思い出すなぁ。
「わっ……」
「秀。加減しろ」
「あ?……わりぃ。ちょい力入れすぎたみてぇだ」
湊に注意され手を止めた時には、リュウのさらさらで整った髪はぼさぼさ髪へと一転していた。「秀は優しいけど結構荒いよな」とノアに度々言われることはあったが、どうやら本当にそうみてぇだ。
俺は自分にそこまで荒さがあるとは思ってなかったんだがなぁ……。
「大丈夫、だよ……?」
「そうか。まあなんだぁ?俺たちがちょい気にしすぎてるだけっつうか……ともかく心配はいらねぇから。なぁ、湊」
「ああ。仮に何かあれば可能な限り共有する」
おいおい、『可能な限り』は余計だろ。
「すみません。お邪魔してもいいですか?」
障子を開けて入ってきたのはエルだ。エルはいつもはおろしたままの髪を後ろでひとつに縛っていた。
「構わねぇぞ。……その姿を見るにもう特訓をしてぇのか?」
「あ、はい!時間が余ってしまったのでせっかくならと……秀さんは今お時間空いてたりしますか?」
ドレイクの旦那のことは気になるが、まあそんな急ぐことでもねぇしなぁ。
「別にいいぞ。俺も暇してたしなぁ」
俺は立ち上がりエルとともに部屋を出た。行き先はいつも通りアクロポリスを出てすぐの森だ。
さて、今日もエルをいい感じに鍛えてやるとするかぁ。
side九条湊
エルの特訓に付き合うため、秀はさっさと部屋から出て行った。気がかりなこともあるが秀のあの様子から察するに、それは後回しにするようだ。俺としても頭の片隅に置く程度で構わないと思っていた。
さて、これからどうするか。
リュウとはあまり話をしたことはない。まして二人きりになるなど初めてのこと。何をするのがいいのか見当もつかない。
俺は秀とは違い全く社交的ではない。愛想も悪いだろう。会話も下手な方だ。子供からしたら余計に近寄りがたい部類の人間だ。ノアとシンは小さい頃からずっと俺を慕ってくれていたが、それはともにいた時間が長かったことに起因しているだろう。
現にあの村の子供は俺を見た途端逃げ出した。俺は普通に彼らを見ただけだったが、彼らからすれば俺が睨みつけたように見えたのかもしれない。俺は目つきが悪いというか、鋭いらしいからな。
「湊兄ちゃん……!」
「ん……?なんだ?」
「秀兄ちゃんと、エルお姉ちゃんは、どこ行ったの?」
「ここからすぐの森だ。秀はエルの頼みでエルを鍛えているんだ」
「そっか……」
「「……」」
部屋に静寂が広がる。俺もリュウも何を話せばいいかわからないといった感じだ。どうやら似た者同士が揃ってしまったらしい。
「俺たちも外に行くか」
「え……?」
「腹減ってないか?」
「えと……」
『グゥ~』
リュウが答えるより先にリュウのお腹が正直に答えた。リュウは顔を真っ赤にしている。
「決まりだな。行くぞ」
「う、うん」
俺はリュウの手を引き外へ出た。なんとなく手を繋いでしまったがリュウは気にしていなさそうだ。
今日も人が多いな。昼間というのもあるのだろうが….…。
大通りとはいえこれほどいると鬱陶しいな。
「何か食べたいものとかあるか?」
「……甘い物、食べたい……」
甘い物か……。確かカズハがドハマリしたケーキ屋があったな。そこに行くか。
「了解」
宿から十分ほど歩き、俺とリュウは目当ての店へとたどり着いた。スイーツの園だ。
外観は桃色や黄色を使っており女性からの評価が高そうだ。
ドアを開けるとカランカランという鈴の音が鳴った。店内に入ると、左手にはいくつかのテーブルが置かれており、イートインスペースが設けられていることがわかる。
ケーキを注文するため俺たちはそのまままっすぐ進んだ。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたらお声がけください」
ショーケースにはイチゴが乗ったケーキやチョコレートが主体のケーキなど、数多くのケーキが並んでいた。ケーキの専門店だけあって種類が豊富だ。
どれが美味しいんだ?俺にはさっぱりわからない。
「リュウ、どれがいい?」
「……チョコがいい……」
チョコレートケーキか。だがそれだけでも十種類はあるな。
……仕方ない。
「注文をいいか」
「はい。どうぞ」
「この店のチョコレートケーキ全種類ひとつずつ頼む」
「……へ?」
なんだ?伝わらなかったのか?
「あ、はい。かしこまりました」
なんだ。理解してたのか。ならなぜあのような表情をしたのか。
「あら、お兄さん。そんなにケーキがお好きなんですねー」
これ見よがしに煌びやかなアクセサリーをつけまくった女が話しかけてきた。化粧も濃い。
「…………」
「無視ー?てか、よく見たらあなた、すっごいイケメンじゃないー?」
俺の顔をじろじろと観察してくる。うざいなこの女。
「ちょ、そんな、睨むことないじゃない」
「邪魔だ。失せろ」
「ひっ……!」
女は怯え切った様子で店内から出て行った。
「はぁ……」
たまに歩いている時に女に声をかけられることがある。適当にあしらってはいるが、今回の女は少々うざかった。
なぜ俺に声をかけるのか。全くもって意味がわからない。
「お待たせしました。チョコバナナケーキがおひとつ、ザッハトルテがおひとつ……」
店員は商品名を淡々と挙げていく。
「……以上でよろしかったでしょうか」
「ああ」
店員は白い箱を二つ差し出した。
「どうも」
さて、早く宿に戻ってリュウにケーキを食べさせてやるか。
「リュウ、ひとつ持ってくれるか」
「うん……!」
「ん?お前は確か……湊だったか?」
帰ろうとした矢先、聞き覚えのある声に名を呼ばれた。前を向くと思った通りの人物がいた。
「グレンギルド長」
「久しいな。そっちの子は……お前の弟か?お前同様、随分と整った顔立ちをしている」
「いや、弟ではないが……仲間ではあるな。あなたは何故ここに?」
「俺か?俺は愛しい妹に頼まれちまってな。仕事の合間を縫ってきたんだよ」
カズハから聞いてはいたが、ギルド長は俗に言うシスコンというやつらしいな。前に「これがなければ今も独り身じゃないんだけどねー」とカズハが呆れたように話していた。
「なるほど。……では俺たちはこれで」
シスコンギルド長と話すことは特にない。さっさと戻ろう。
「あ、そうだ。ノアズアークにちょいとお願いがあるんだ」
俺は足を止めた。俺たちの所属先のトップからの頼み事。話も聞かずに去ることはできないだろう。
「ふぅ。何か?」
「そう睨むなって。そんな大したことじゃない。……ここ二、三日前のことなんだが、魔物の動きが妙に活発化していてな。魔物の討伐依頼が殺到しているんだ」
「ふむ。討伐依頼はそんなになかったと記憶しているが?」
「確かお前たちはどこかに遠出していたんだったか?なら知らないのも無理はない。ただ、その依頼量がかなり膨大でな。現在アクロポリスに滞在している冒険者でも手に負えない状況だ。それとかなりの数の大帝国師団員も動いているらしいが、それでも思ったより減っていない」
「なるほど。それは一大事だな。……ノアにも話しておこう」
どの程度の魔物がいるかは知らないが、新たな形となったノアズアークを試すにはちょうどいい機会かもしれないな。
side ノア=オーガスト
数秒の眩しい輝きが消滅した。そして何事もなかったかのように、セツナはこちらへと近づいてきた。
「お疲れ、セツナ。精霊との契約ってやつはできたのか?」
「まあ、一応」
「なんかすごかったねー。私も精霊契約の瞬間を見たことあったけど、あんなに光り輝いてるのを見たのは初めてだったよー」
「ま、まさか、そんな!」
心底驚いた様子の精霊士長。その顔からは驚きとそれから歓喜が見てとれた。そしてセツナへと猛ダッシュした。
「青龍様の契約者様が現れるなんて……!ああ、私はなんて幸運なのでしょう!!」
セツナの手を鷲掴み、興奮する精霊士長。ちょっとこの人変だな。変人だ、うん。
「離せ!」
セツナは乱暴に精霊士長の手を振り解いた。
「はっ!申し訳ない。あまりの嬉しさに、大変無礼な振る舞いをしてしまいました」
「えーと、なんでそんな興奮してるんだ?」
反省してますといった面持ちの精霊士長にオレは問いかけた。青龍ってなんだ?
「それはですね、最上位精霊様の契約者様がここにいるセツナさんだと分かったからですよ」
「最上位精霊?」
どっかで聞いた単語だな。たぶんクロードが教えてくれたとは思うけど……忘れちった。
「最上位精霊様は全部で五体存在します。土の最上位精霊たる黄龍様、雷の最上位精霊たる白虎様、火の最上位精霊たる朱雀様、水の最上位精霊たる玄武様、そして風の最上位精霊たる青龍様です。精霊界の王たるこの五体の精霊様の契約者様は、精霊に最も愛された存在なのです。私は心底羨ましい」
五体の最上位精霊、ね。あそこにある像も五体だったけど、もしかして……。
「そしてこの精霊殿では五体の最上位精霊様を祀るべく、あのように最上位精霊様を模した像を置いているのです」
あ、やっぱりそうなんだ。
「まさか青龍様の契約者様に会えるとは……っ……どうやら私は一生涯の運を使い果たしてしまったようです」
え、普通そこまで言う?本当に精霊が大好きなんだな、この人。
「へぇ。そんなにすごいんだ、あいつ」
「ええ、青龍様は風の王と言っても過言ではありませんから。……んんっ、さて、これで精霊様との契約は終了になります。皆様お疲れ様でした」
こうして精霊殿を後にしたオレたちは一旦宿に戻ることにした。部屋に行くと幸せそうにケーキを頬張るリュウとそれを微笑ましく見守る湊がいた。まるで兄弟みたいだったな。
それから夕飯の時間になったぐらいで秀とエルが戻ってきた。秀はエルの上達ぶりにご満悦の様子だった。秀曰く、エルは覚えが早いし氣の操作性能も高くて鍛え甲斐があるらしい。
そして就寝前のこと。湊から最近魔物の動きが活発化したせいで魔物の討伐依頼が殺到して困っているという話を聞いた。スイーツの園でたまたまグレンギルド長と会って頼まれたらしい。
オレはその依頼を引き受けることにした。もちろん、みんなの意見も聞いてから決めたことだ。魔物の活発化の原因は不明だけど、これを見過ごしたらさらに大きな厄災になりかねないしな。
翌朝。オレたちは早速討伐依頼をこなしていた。依頼ボードに貼られた依頼書を複数枚とり、それぞれ分かれて依頼を片付けていった。オレとシン、湊とリュウとセツナ、秀とエルとカズハといった感じだ。
依頼された場所によっては丸一日かかるものとかもあったから、チームによっては一日ひとつしか依頼完了ができなかった時もあったけど、たいてい一日で三つか四つはクリアしていた。
そして、それを一週間ほど続けた結果、魔物の討伐依頼は通常通りまでその数を減少させていた。
「いやー、助かった。お前たちのおかげで討伐依頼の数は激減。あとは他の冒険者たちでも十分対処できる」
オレたちは今、ギルド長室へ来ている。今日の朝いつも通り討伐依頼を受けようとしたら、アリアさんに呼び止められここまで案内されたのだ。
「オレたちとしてもいい戦闘経験になったし、そこまで礼を言われるようなことはしてないと思うけどなー」
そう。この一週間でみんなかなり成長しているのだ。神仙族のオレたちは例外だけど、他のみんなの成長が著しい。
カズハは刀捌きが断然良くなってたし、エルは氣弾をかなり上手く使えるようになってた。もしかしたら、二人とも師匠となんら遜色ないとこまできてるかもしれない。
リュウは元々魔物と戦ったことがあまりなく、最初は手こずっていたらしいけど、今ではひとりでCランクの魔物も相手にできるほどになったそうだ。
セツナは魔物との戦闘経験の薄さという点ではリュウと同じだけど、最近契約した最上位精霊青龍の力を存分に使って難なく魔物を討伐したそうだ。
オレが言うのもおかしな話かもしれないけど……もしかしなくてもこのパーティ、かなーり強いのでは?
「やはりノアズアークは桁違いに強い。お前たちは知らないかもしれないが、ノアズアークという名は冒険者界隈ではかなり噂になっているぞ」
「噂?」
「そうだ。あの伝説のパーティ『ジ・オメガ』の再来だ、ってな具合にな」
ジ・オメガ……?初めて聞いた名前だ。
「あそうだ。こんなに強いんだったらすぐにでもAランクパーティにでも押し上げるか」
「え?!いやいやいや、いいよそんなの」
急にAランクになんてなったら絶対に悪目立ちするだろ。
「前にも言ったけど、コツコツやるのがオレは好きなんだ。勝手にAランクにされるのは、困る」
オレはランクを上げること自体よりも、ランクを上げるまでの過程の方が大事なタイプなんだ。
「そういえばそうだったな。なら仕方ないか」
「じゃあオレたちはこれでーーー」
「あー待て待て。まだ話は終わってないぞ」
オレたちが部屋を出ようとすると、呼び止められてしまった。
「……?」
「実はな、オスカーさんがお前たちに会いたいと言っていてな。時間が空いた時にでも会いに行ってやってくれ」
オスカーさんがオレたちに会いたい?なんかやらかしたっけ、オレたち……。
「わかった」
「いや悪いなボウズども。俺の我儘を聞いてもらってよー」
グレンギルド長に言われた通り、オレは大帝国師団の寮へと来た。一度ザナックたちの件で行ったことがあったし、今日は討伐依頼をしようとしてただけで他に用事はなかったからな。
ひとりで行こうかと思ったけど、シンは絶対についていくと聞かずじまい。秀と湊もオスカーさんと少し話がしたいと言い、カズハたちも暇だから行こうかなという感じになり、結局全員で押しかけることになってしまった。
オスカーさんにちょうど向かい合う形でオレが座り、右隣にはシンとリュウ、左隣にはカズハとエルが座っている。そして秀と湊はオレたちの後ろに立っている。
「いやそれはいいんだけど、なんでオレたちを?」
「理由は二つだ。ひとつはダスクの件だ。前に協力を要請したのは覚えてるかー?」
……そういえばお願いされた気がする。
「ああ、まあ」
「でだな、どうも最近ダスクの動きがきっぱりみられなくなっちまったんだよ」
うん、それはそうだろうなー。
「何か知ってることはねぇかと思ってな」
「えっと、実は……」
オレは正直に全てを話した。ただ一点、グリム・リーパーの正体は隠して、な。
「……なるほどなぁ。お前たちでダスクを壊滅させちまってたってことか……。よくやったぞ、ボウズ!これで俺はようやくこの任務から解放されるぞー!ガッハッハ」
豪快に、高らかに笑うオスカーさん。
「そろそろ片付けたらどうだなんだと他の師団長らから言われててなぁ。正直うんざりしていたんだ。こっちはこれ以上ないくらいに超大真面目にやっとるわ!ってな。だが居場所が掴めない以上、どうしようもないときた。そんなこんなで地団駄を踏んでいたら、ボウズどもが片付けてたっつう話じゃないか。俺は今、天にも昇る気分だぞ!ガッハッハ」
またもや高らかな笑い声を上げるオスカー師団長。
よっぽど嬉しかったみたいだな。
「そりゃよかったなぁ、オスカーの旦那」
「だがまあ一応ダスクが壊滅したことはこの目で確かめなければならないからなー……。全く面倒なものだ」
「んで、もうひとつの理由ってのは?」
「おうそうだったなぁ。あまりの嬉しさで忘れるところだった……。ボウズ!」
オスカーさんはオレの方へと向き直った。
「は、はい」
「俺と手合わせをしてはくれねぇか?」
「ヴァネッサさん。ご無沙汰してるな」
「あら、秀さん。それに皆様も。お元気でしたか?」
ヴァネッサさんはいつものように紫を基調とした花柄で綺麗な着物を着て仕事に励んでいた。ただ少し気になる点があるなぁ。
「まあなぁ。それで宿を八人分取りたいんだが……」
「ええ。構いませんよ。ちょうどいつもの部屋が空いておりますから、そちらをお使いください」
「ありがてぇ」
「では、私はこれでーーー」
「ちょっと待ってくれ。ドレイクの旦那はどうしたんだ?」
そう、この宿の経営主であるドレイクの旦那が見当たらねぇ。ただ買い物に出てるだけってのも考えられるが……。
「それは……」
「お父さんはね、別のお仕事でいないんだよぉー?」
言い渋るヴァネッサさんの背後からぴょこっと現れたベル。ヴァネッサさんの代わりに答えるかのようにはっきりとしゃべった。
「こら、ベル!」
「別の仕事?」
俺はベルの顔と並行になるようにしゃがんだ。
「うん!この国を守る大事なお仕事なんだって、お父さん言ってたもん」
「ベル!」
「んんんんー」
ヴァネッサさんはこれ以上ベルが余計なことを話さないようにベルの口を塞いでしまった。
これ以上は無理そうだなぁ。
「すまねぇな、ヴァネッサさん。ドレイクの旦那になんかあったのかもしれねぇと思って、少し気になっただけなんだ」
「あ、いえ。こちらこそお見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません」
「じゃ、俺たちは行くわ。部屋、ありがとなぁ」
俺たちは廊下を歩きいつもの部屋へと入る。エルは隣の部屋。俺と湊とリュウはこの部屋だ。
「戻って早々だが、波乱の予感だな」
俺たちはひとまずテーブルを囲んで畳に座った。そして湊が第一声を放った。
「だな。俺たちを巻き込まねぇってんなら構わねぇんだがなぁ……」
「それに越したことはないが、万が一火の粉がこちらに降りかかる可能性もあるだろう」
湊も俺と同じ考えみてぇだな。
「その辺はイオリに聞けばあらかた分かりそうなもんだが……」
イオリが今どこにいるかなど俺たちにわかるはずがない。おそらくイオリとともにこの国を影から守るドレイクの旦那もこの宿を離れている。俺たちは現在、イオリたちの情報を何も手に入れられない状況下にある。
「期待できそうにはないな」
冷静な判断を下す湊。
「天を呼ぶか?」
天なら少なくとも手をこまねいている今の状態よりは有益な情報を手に入れられる。
だがまあ……。
「そこまでしなくてもいいだろう。変に気負っても仕方がない」
ま、そうだよな。
「とりあえず頭の片隅にでも入れとく程度に留めておくかぁ」
先ほどの違和感をどうするかについて、湊と大体の方針を決めた。まあ、今後もしイオリとドレイクの旦那に会えた時は、しっかり話しねぇとなぁ。
「あ、あの……何の話……?」
「ああ、わりぃなぁ。リュウにはつまんねぇ話だったよな」
リュウがいたことすっかり忘れてたぜ。馬鹿か俺は。別に聞かれたくねぇ話じゃねぇとしても、時と場所を考えろよなぁ。
「えと、秀兄ちゃんも、湊兄ちゃんも……怖い顔、してたから……何か、あったのかな、って……」
おいおい、心配してくれてたのかよ。いい奴すぎねぇか?こんなに純真無垢じゃぁ、簡単に誘拐とかされそうなんだがぁ?
「んんっ。リュウのその気持ち、すげぇ嬉しいぜ。優しいなぁ、お前は」
俺はノアにするように優しくリュウの頭を撫でた。なーんか、幼い頃のノアやシンを思い出すなぁ。
「わっ……」
「秀。加減しろ」
「あ?……わりぃ。ちょい力入れすぎたみてぇだ」
湊に注意され手を止めた時には、リュウのさらさらで整った髪はぼさぼさ髪へと一転していた。「秀は優しいけど結構荒いよな」とノアに度々言われることはあったが、どうやら本当にそうみてぇだ。
俺は自分にそこまで荒さがあるとは思ってなかったんだがなぁ……。
「大丈夫、だよ……?」
「そうか。まあなんだぁ?俺たちがちょい気にしすぎてるだけっつうか……ともかく心配はいらねぇから。なぁ、湊」
「ああ。仮に何かあれば可能な限り共有する」
おいおい、『可能な限り』は余計だろ。
「すみません。お邪魔してもいいですか?」
障子を開けて入ってきたのはエルだ。エルはいつもはおろしたままの髪を後ろでひとつに縛っていた。
「構わねぇぞ。……その姿を見るにもう特訓をしてぇのか?」
「あ、はい!時間が余ってしまったのでせっかくならと……秀さんは今お時間空いてたりしますか?」
ドレイクの旦那のことは気になるが、まあそんな急ぐことでもねぇしなぁ。
「別にいいぞ。俺も暇してたしなぁ」
俺は立ち上がりエルとともに部屋を出た。行き先はいつも通りアクロポリスを出てすぐの森だ。
さて、今日もエルをいい感じに鍛えてやるとするかぁ。
side九条湊
エルの特訓に付き合うため、秀はさっさと部屋から出て行った。気がかりなこともあるが秀のあの様子から察するに、それは後回しにするようだ。俺としても頭の片隅に置く程度で構わないと思っていた。
さて、これからどうするか。
リュウとはあまり話をしたことはない。まして二人きりになるなど初めてのこと。何をするのがいいのか見当もつかない。
俺は秀とは違い全く社交的ではない。愛想も悪いだろう。会話も下手な方だ。子供からしたら余計に近寄りがたい部類の人間だ。ノアとシンは小さい頃からずっと俺を慕ってくれていたが、それはともにいた時間が長かったことに起因しているだろう。
現にあの村の子供は俺を見た途端逃げ出した。俺は普通に彼らを見ただけだったが、彼らからすれば俺が睨みつけたように見えたのかもしれない。俺は目つきが悪いというか、鋭いらしいからな。
「湊兄ちゃん……!」
「ん……?なんだ?」
「秀兄ちゃんと、エルお姉ちゃんは、どこ行ったの?」
「ここからすぐの森だ。秀はエルの頼みでエルを鍛えているんだ」
「そっか……」
「「……」」
部屋に静寂が広がる。俺もリュウも何を話せばいいかわからないといった感じだ。どうやら似た者同士が揃ってしまったらしい。
「俺たちも外に行くか」
「え……?」
「腹減ってないか?」
「えと……」
『グゥ~』
リュウが答えるより先にリュウのお腹が正直に答えた。リュウは顔を真っ赤にしている。
「決まりだな。行くぞ」
「う、うん」
俺はリュウの手を引き外へ出た。なんとなく手を繋いでしまったがリュウは気にしていなさそうだ。
今日も人が多いな。昼間というのもあるのだろうが….…。
大通りとはいえこれほどいると鬱陶しいな。
「何か食べたいものとかあるか?」
「……甘い物、食べたい……」
甘い物か……。確かカズハがドハマリしたケーキ屋があったな。そこに行くか。
「了解」
宿から十分ほど歩き、俺とリュウは目当ての店へとたどり着いた。スイーツの園だ。
外観は桃色や黄色を使っており女性からの評価が高そうだ。
ドアを開けるとカランカランという鈴の音が鳴った。店内に入ると、左手にはいくつかのテーブルが置かれており、イートインスペースが設けられていることがわかる。
ケーキを注文するため俺たちはそのまままっすぐ進んだ。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたらお声がけください」
ショーケースにはイチゴが乗ったケーキやチョコレートが主体のケーキなど、数多くのケーキが並んでいた。ケーキの専門店だけあって種類が豊富だ。
どれが美味しいんだ?俺にはさっぱりわからない。
「リュウ、どれがいい?」
「……チョコがいい……」
チョコレートケーキか。だがそれだけでも十種類はあるな。
……仕方ない。
「注文をいいか」
「はい。どうぞ」
「この店のチョコレートケーキ全種類ひとつずつ頼む」
「……へ?」
なんだ?伝わらなかったのか?
「あ、はい。かしこまりました」
なんだ。理解してたのか。ならなぜあのような表情をしたのか。
「あら、お兄さん。そんなにケーキがお好きなんですねー」
これ見よがしに煌びやかなアクセサリーをつけまくった女が話しかけてきた。化粧も濃い。
「…………」
「無視ー?てか、よく見たらあなた、すっごいイケメンじゃないー?」
俺の顔をじろじろと観察してくる。うざいなこの女。
「ちょ、そんな、睨むことないじゃない」
「邪魔だ。失せろ」
「ひっ……!」
女は怯え切った様子で店内から出て行った。
「はぁ……」
たまに歩いている時に女に声をかけられることがある。適当にあしらってはいるが、今回の女は少々うざかった。
なぜ俺に声をかけるのか。全くもって意味がわからない。
「お待たせしました。チョコバナナケーキがおひとつ、ザッハトルテがおひとつ……」
店員は商品名を淡々と挙げていく。
「……以上でよろしかったでしょうか」
「ああ」
店員は白い箱を二つ差し出した。
「どうも」
さて、早く宿に戻ってリュウにケーキを食べさせてやるか。
「リュウ、ひとつ持ってくれるか」
「うん……!」
「ん?お前は確か……湊だったか?」
帰ろうとした矢先、聞き覚えのある声に名を呼ばれた。前を向くと思った通りの人物がいた。
「グレンギルド長」
「久しいな。そっちの子は……お前の弟か?お前同様、随分と整った顔立ちをしている」
「いや、弟ではないが……仲間ではあるな。あなたは何故ここに?」
「俺か?俺は愛しい妹に頼まれちまってな。仕事の合間を縫ってきたんだよ」
カズハから聞いてはいたが、ギルド長は俗に言うシスコンというやつらしいな。前に「これがなければ今も独り身じゃないんだけどねー」とカズハが呆れたように話していた。
「なるほど。……では俺たちはこれで」
シスコンギルド長と話すことは特にない。さっさと戻ろう。
「あ、そうだ。ノアズアークにちょいとお願いがあるんだ」
俺は足を止めた。俺たちの所属先のトップからの頼み事。話も聞かずに去ることはできないだろう。
「ふぅ。何か?」
「そう睨むなって。そんな大したことじゃない。……ここ二、三日前のことなんだが、魔物の動きが妙に活発化していてな。魔物の討伐依頼が殺到しているんだ」
「ふむ。討伐依頼はそんなになかったと記憶しているが?」
「確かお前たちはどこかに遠出していたんだったか?なら知らないのも無理はない。ただ、その依頼量がかなり膨大でな。現在アクロポリスに滞在している冒険者でも手に負えない状況だ。それとかなりの数の大帝国師団員も動いているらしいが、それでも思ったより減っていない」
「なるほど。それは一大事だな。……ノアにも話しておこう」
どの程度の魔物がいるかは知らないが、新たな形となったノアズアークを試すにはちょうどいい機会かもしれないな。
side ノア=オーガスト
数秒の眩しい輝きが消滅した。そして何事もなかったかのように、セツナはこちらへと近づいてきた。
「お疲れ、セツナ。精霊との契約ってやつはできたのか?」
「まあ、一応」
「なんかすごかったねー。私も精霊契約の瞬間を見たことあったけど、あんなに光り輝いてるのを見たのは初めてだったよー」
「ま、まさか、そんな!」
心底驚いた様子の精霊士長。その顔からは驚きとそれから歓喜が見てとれた。そしてセツナへと猛ダッシュした。
「青龍様の契約者様が現れるなんて……!ああ、私はなんて幸運なのでしょう!!」
セツナの手を鷲掴み、興奮する精霊士長。ちょっとこの人変だな。変人だ、うん。
「離せ!」
セツナは乱暴に精霊士長の手を振り解いた。
「はっ!申し訳ない。あまりの嬉しさに、大変無礼な振る舞いをしてしまいました」
「えーと、なんでそんな興奮してるんだ?」
反省してますといった面持ちの精霊士長にオレは問いかけた。青龍ってなんだ?
「それはですね、最上位精霊様の契約者様がここにいるセツナさんだと分かったからですよ」
「最上位精霊?」
どっかで聞いた単語だな。たぶんクロードが教えてくれたとは思うけど……忘れちった。
「最上位精霊様は全部で五体存在します。土の最上位精霊たる黄龍様、雷の最上位精霊たる白虎様、火の最上位精霊たる朱雀様、水の最上位精霊たる玄武様、そして風の最上位精霊たる青龍様です。精霊界の王たるこの五体の精霊様の契約者様は、精霊に最も愛された存在なのです。私は心底羨ましい」
五体の最上位精霊、ね。あそこにある像も五体だったけど、もしかして……。
「そしてこの精霊殿では五体の最上位精霊様を祀るべく、あのように最上位精霊様を模した像を置いているのです」
あ、やっぱりそうなんだ。
「まさか青龍様の契約者様に会えるとは……っ……どうやら私は一生涯の運を使い果たしてしまったようです」
え、普通そこまで言う?本当に精霊が大好きなんだな、この人。
「へぇ。そんなにすごいんだ、あいつ」
「ええ、青龍様は風の王と言っても過言ではありませんから。……んんっ、さて、これで精霊様との契約は終了になります。皆様お疲れ様でした」
こうして精霊殿を後にしたオレたちは一旦宿に戻ることにした。部屋に行くと幸せそうにケーキを頬張るリュウとそれを微笑ましく見守る湊がいた。まるで兄弟みたいだったな。
それから夕飯の時間になったぐらいで秀とエルが戻ってきた。秀はエルの上達ぶりにご満悦の様子だった。秀曰く、エルは覚えが早いし氣の操作性能も高くて鍛え甲斐があるらしい。
そして就寝前のこと。湊から最近魔物の動きが活発化したせいで魔物の討伐依頼が殺到して困っているという話を聞いた。スイーツの園でたまたまグレンギルド長と会って頼まれたらしい。
オレはその依頼を引き受けることにした。もちろん、みんなの意見も聞いてから決めたことだ。魔物の活発化の原因は不明だけど、これを見過ごしたらさらに大きな厄災になりかねないしな。
翌朝。オレたちは早速討伐依頼をこなしていた。依頼ボードに貼られた依頼書を複数枚とり、それぞれ分かれて依頼を片付けていった。オレとシン、湊とリュウとセツナ、秀とエルとカズハといった感じだ。
依頼された場所によっては丸一日かかるものとかもあったから、チームによっては一日ひとつしか依頼完了ができなかった時もあったけど、たいてい一日で三つか四つはクリアしていた。
そして、それを一週間ほど続けた結果、魔物の討伐依頼は通常通りまでその数を減少させていた。
「いやー、助かった。お前たちのおかげで討伐依頼の数は激減。あとは他の冒険者たちでも十分対処できる」
オレたちは今、ギルド長室へ来ている。今日の朝いつも通り討伐依頼を受けようとしたら、アリアさんに呼び止められここまで案内されたのだ。
「オレたちとしてもいい戦闘経験になったし、そこまで礼を言われるようなことはしてないと思うけどなー」
そう。この一週間でみんなかなり成長しているのだ。神仙族のオレたちは例外だけど、他のみんなの成長が著しい。
カズハは刀捌きが断然良くなってたし、エルは氣弾をかなり上手く使えるようになってた。もしかしたら、二人とも師匠となんら遜色ないとこまできてるかもしれない。
リュウは元々魔物と戦ったことがあまりなく、最初は手こずっていたらしいけど、今ではひとりでCランクの魔物も相手にできるほどになったそうだ。
セツナは魔物との戦闘経験の薄さという点ではリュウと同じだけど、最近契約した最上位精霊青龍の力を存分に使って難なく魔物を討伐したそうだ。
オレが言うのもおかしな話かもしれないけど……もしかしなくてもこのパーティ、かなーり強いのでは?
「やはりノアズアークは桁違いに強い。お前たちは知らないかもしれないが、ノアズアークという名は冒険者界隈ではかなり噂になっているぞ」
「噂?」
「そうだ。あの伝説のパーティ『ジ・オメガ』の再来だ、ってな具合にな」
ジ・オメガ……?初めて聞いた名前だ。
「あそうだ。こんなに強いんだったらすぐにでもAランクパーティにでも押し上げるか」
「え?!いやいやいや、いいよそんなの」
急にAランクになんてなったら絶対に悪目立ちするだろ。
「前にも言ったけど、コツコツやるのがオレは好きなんだ。勝手にAランクにされるのは、困る」
オレはランクを上げること自体よりも、ランクを上げるまでの過程の方が大事なタイプなんだ。
「そういえばそうだったな。なら仕方ないか」
「じゃあオレたちはこれでーーー」
「あー待て待て。まだ話は終わってないぞ」
オレたちが部屋を出ようとすると、呼び止められてしまった。
「……?」
「実はな、オスカーさんがお前たちに会いたいと言っていてな。時間が空いた時にでも会いに行ってやってくれ」
オスカーさんがオレたちに会いたい?なんかやらかしたっけ、オレたち……。
「わかった」
「いや悪いなボウズども。俺の我儘を聞いてもらってよー」
グレンギルド長に言われた通り、オレは大帝国師団の寮へと来た。一度ザナックたちの件で行ったことがあったし、今日は討伐依頼をしようとしてただけで他に用事はなかったからな。
ひとりで行こうかと思ったけど、シンは絶対についていくと聞かずじまい。秀と湊もオスカーさんと少し話がしたいと言い、カズハたちも暇だから行こうかなという感じになり、結局全員で押しかけることになってしまった。
オスカーさんにちょうど向かい合う形でオレが座り、右隣にはシンとリュウ、左隣にはカズハとエルが座っている。そして秀と湊はオレたちの後ろに立っている。
「いやそれはいいんだけど、なんでオレたちを?」
「理由は二つだ。ひとつはダスクの件だ。前に協力を要請したのは覚えてるかー?」
……そういえばお願いされた気がする。
「ああ、まあ」
「でだな、どうも最近ダスクの動きがきっぱりみられなくなっちまったんだよ」
うん、それはそうだろうなー。
「何か知ってることはねぇかと思ってな」
「えっと、実は……」
オレは正直に全てを話した。ただ一点、グリム・リーパーの正体は隠して、な。
「……なるほどなぁ。お前たちでダスクを壊滅させちまってたってことか……。よくやったぞ、ボウズ!これで俺はようやくこの任務から解放されるぞー!ガッハッハ」
豪快に、高らかに笑うオスカーさん。
「そろそろ片付けたらどうだなんだと他の師団長らから言われててなぁ。正直うんざりしていたんだ。こっちはこれ以上ないくらいに超大真面目にやっとるわ!ってな。だが居場所が掴めない以上、どうしようもないときた。そんなこんなで地団駄を踏んでいたら、ボウズどもが片付けてたっつう話じゃないか。俺は今、天にも昇る気分だぞ!ガッハッハ」
またもや高らかな笑い声を上げるオスカー師団長。
よっぽど嬉しかったみたいだな。
「そりゃよかったなぁ、オスカーの旦那」
「だがまあ一応ダスクが壊滅したことはこの目で確かめなければならないからなー……。全く面倒なものだ」
「んで、もうひとつの理由ってのは?」
「おうそうだったなぁ。あまりの嬉しさで忘れるところだった……。ボウズ!」
オスカーさんはオレの方へと向き直った。
「は、はい」
「俺と手合わせをしてはくれねぇか?」
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