碧天のノアズアーク

世良シンア

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レグルス編

10 桃兎騒動Ⅲ

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side ノア=オーガスト

話し合いの末、オレ、シン、カズハ、カナタさんの四人と、秀の式神であるテンが南の村へ向かうこととなり、他のみんなは花畑で待機することになった。天はオレの肩にちょこんと乗っているのだが、天が同行しているのは連絡役としてが大きい。何かあればすぐに天にみんなのもとに飛んで行ってもらうつもりだ。

ちなみにここにリュウを連れて来なかったのは、オレの推測が外れて仮に花畑付近で桃兎が現れた時に、その姿を見知っているリュウがいればすぐに対処できるからだ。なんならリュウに飛び込んでくかもな。昨日のちんちくりんはめっちゃリュウに懐いてたし。

「カナタさんは、この国から出たことはないのか?」

現在、オレたちは南の村へ行くための道を歩いていた。

「ん……あ、ああ、まあ、な……」

カナタさんはなぜか歯切れが悪そうに答えた。

「てか、カナタでいい。さん付けされんのは慣れないんでな」

「じゃあ、カナタって呼ぶな。冒険者の先輩たるカナタからさ、なんかアドバイスあったら聴きたいなーって思ってたんだけど、なんかあったりする?」

「アドバイスだ?……んなもんないぞ。冒険者つっても……はは……最近はレグルスから、一歩も出てないからな」

カナタは乾いた苦笑とともに悲しげな顔をした。

「あー、そうだそうだ。俺もお前らに聞きたいことがあってよ」

カナタはすぐに気持ちを切り替え、軽く俯いていた顔を上げて、普段のような口ぶりでオレたちに問いかける。

「聞き込みん時、どうやって村の奴らから情報を聞き出したんだ?てっきり人間に話すことなんかなんもない、とか言われて追い返されるだろうなと思ってたんだがな」

「オレたちは、真摯に向き合った結果、どうにか話してもらったって感じだったなー。な、シン」

「ああ。兄さんの寛大な心のおかげだ。あの不遜な態度、叩き斬ってやってもよかったんだがな」

シンは軽く殺気を出し、冷ややかな目をした。いつもの数段は怖さが増してると思う。

「こらこら、怖いこと言わない言わない」

シンならほんとに殺りかねないから、兄であるオレがちゃんとリードを持ってないとまずいことになっちまう。

「私たちはねー、イケメン湊と超キュートな天使のリュウがいたおかげで、結構すんなりと聞き出せたよー」

「は?マジかよ、それ」

カナタは目を丸くした。

「マジマジ。私もこの国に来てからいろんな亜人たちから冷たい視線をもらってたし、情報ちゃんと聞けるかなーってちょっと不安だったんだけど、湊の顔面偏差値の高さに女性陣が見惚れてたし、それに加えてリュウの天使の笑顔に老若男女全員が虜になってたねー。ほら、あのコテッて首を傾げる感じの仕草あるでしょ?あれでもうみんなメロメロになってたよー」

「うわー、わかるなー、それ。オレも心を鷲掴みにされちゃうんだよなー。あの可愛さには勝てる気が全くしない」

「ねー。リュウって、もうずっと抱きしめてたいくらいの癒しパワーがあるんだよー。きっとカナタもハートを撃ち抜かれるよー」

カズハはウインクをしながら親指、人差し指、中指を立てた形でバンッと、カナタの胸元目掛けて手を軽く上げた。

「はは。俺は今まで生きてきてまだ一度もトキメキってやつを感じたことがないんだがな」

「ふっふっふ。そう強がってられるのも今のうち今のうち。リュウは世界一可愛いんだからねー!」

「どうやら見えてきたようですよ、皆様」

リュウに夢中なカズハを他所に、オレの肩に乗る天が目的の村を見つけてくれた。前を見れば、確かに家や畑がいくつかあるのがわかる。

「さてと、ちゃーんといてくれないと困るぞ、桃兎」

オレたちは村の中へと入っていった。急に現れた見知らぬ人物たちに、村の人々はかなり警戒しているらしく、家の中に逃げ帰ったり、距離をとって様子を窺ったりしていた。

「やっぱこうなるよなー。カナタ、頼んだ!」

「ったく、分かってたことだが、仕方がないな。俺が直々に調べてやろう」

カナタは辺りを軽く見渡し、一番近くにいた歳をとった老人に話しかけに行った。

「なあ、あんた。この辺で兎見かけなかったか?」

「うお、お、お前さん、亜人じゃないか!」

「……それがどうしたよ」

「なぜ人間なんかと一緒におるんじゃ?!あんな穢らわしいウジ虫どもといるなぞ、不幸になるぞ!」

老人が唾を撒き散らしながら、大声を発した。成り行きを見守ってたオレたちにもはっきりとその軽蔑の声が聞こえてきた。

「ウジ虫ってのは言い過ぎだろ、爺さんよ」

「あいつらは、人ではない!人の皮を被ったバケモノじゃ!魔物なんじゃ!」

そう喚き続ける爺さんに、カナタは深い深いため息をついた。

「はぁぁぁ……。やっぱどの国でも差別ってのはなくならないもんだな。めんどくせぇわ、ほんとによ」

カナタは少しだけ俯いて、後ろ首をぽりぽりと掻きながら何かを呟いた。ため息はなんとなく伝わったけど、その後何を言ったかまではよく聞き取れなかった。

「爺さん、アレだろ?昔人間のせいで酷い目にあったとか、そういうクチだよな?」

「酷い目なんて、そんな生優しいもんじゃないわい!わしのこの腕を見ろ!」

差し出された右腕は、虚空だった。つまり、爺さんにはもう腕がない、ということだ。

「…………」

カナタは無表情に無惨な爺さんの姿を見つめた。

「これは昔、奴隷として人間にこき使われた時に切り落とされたんじゃ!コーヒーひとつも入れられない腕なんかいらないよな、と嘲笑われながらのう!あの時のわしの気持ちがわかるか?!内臓という内臓を抉るかのような怒りが沸々とーーー」

「うっせぇよ!ジジイ!」

愚痴を言い続けた老人に、カナタはそれを上回る声量で怒鳴りつけた。老人も思わず口を止めて、目を丸くしたままカナタを見上げていた。

「お前だけが被害者じゃないんだよ、わかるか、なあ?それになぁ、お前はたかが腕を失った程度だろうが。俺の愛する家族は、大事な仲間たちは、もう………………」

カナタは唇を固く閉じ、涙を堪えるような表情をしていた。そして握り拳にぐっと力を込めているせいか、拳が小刻みに震えているように見えた。

「そ、そうか、お前さんも人間たちに傷つけられたんだな……。すまんな、わしばかり理不尽に不満をぶつけてしまって」

「……いや…………てか爺さん。兎、知らないのかよ」

「はて、兎かね?……おーおー、言われてみれば、ツノの生えた不思議な兎が村の祭壇に向かうのを見たわい」

「それだそれ。祭壇ってのは、あれか。ハクタクを祀るやつか」

「おお、そうじゃ。なんといってもハクタク様は、この国の守り神だからのう。祭壇を建てるのはどの村でも当然のーーー」

「ああもうそれはいいから。その祭壇ってのはどこにあんだよ」

「祭壇ならあっちにあるわい」

「助かった爺さん。じゃな」

カナタが話を終え、足早にこっちに歩いてきた。

「ったく、面倒な爺さんだった。だがま、桃兎の場所はわかった。この村の祭壇だ。祭壇はここからさらに南に歩いたらあるっぽいぞ」

「サンキュー、カナタ!そんじゃ早速向かおうぜ、その祭壇とやらにさ」

カナタの情報をもとに、オレたちは祭壇を目指して南に歩いていった。ここから見えないのを考慮すると、おそらくは森の中に祭壇があるっぽいな。

それにしても、真摯に向き合えば話せるはずって思ってたけど、あの老人にはさすがに効果なさそうだったよなー。やっぱカナタを連れてきて正解だったな!

「あっ。あれじゃないー?祭壇ってやつ」

鬱蒼とした木々の間を通り抜け、少しぬかるんだ地面や湿った葉が散らばる道を進んでいくと、少し開けた場所に出た。その中央には小さな石像が置かれていた。

「あ!」

その石像の真下、そこには鼻をピクピクと動かしながら石像を見上げるターゲットの姿があった。

「見つけた!」

オレはここにいる誰よりも速く駆け出した。その勢いで天を振り落としてしまったが、致し方なしだ。あとで謝ろう、うん。

そしてオレが走り出した直後、桃兎は石像から軽く距離を取っていた。それはまるで助走をつけるための距離を確保したかのようだった。

「キュイ!」

高らかな鳴き声を出した桃兎は、華麗なステップを踏むと、石像に対し思いっきり飛び蹴りをかました。

「は……?」

桃兎のこの渾身の一撃に、石像は無惨にもガラガラと音を立てて、あっけなく崩れてしまった。

「おいおい、イタズラがすぎんだろ、あのアホ兎……」

オレはその奇怪な行動に思わず足を止めて、桃兎を棒立ちで眺めてしまった。

「そういや、北の村に行った時も石像がなぜか壊れてて困ってるっつう話があったな」

「あ、私のとこでもそんな話してたよー。ハクタク様の麗しき石像がーってさ」

走り出したオレに追いついたカナタとカズハは思い出したように口々に話した。ちなみにシンはオレの隣で、やってやったぜ、みたいな態度をしている桃兎を、いつもの冷たい目で見ている。

「それはつまり、あのアホは村々の祭壇を壊して回ってるってことか?」

一体なぜに?

「あー、もしかしたら、あの粉々の石像、ただのハクタク像ってわけでもないかもしれないな」

「え?それってどういうことー?」

「あの花畑を取り囲むこの地域にしか伝わってない伝承らしいんだが、昔あの花畑の下に村を食い荒らす恐ろしい魔物を封印したんだと。あのハクタク像はそんときにハクタクが各村に自ら作り与えたらしい。人が作った石像ってんなら、ただの石の像の可能性が高いが、神獣が作った石の像なら、なんかしら不思議な力が宿っててもおかしくはないだろ?」

「なるほどな。つまりそれを正とするなら、あのアホはその魔物を復活さるために走り回っていた、ということになるってわけか」

魔物を復活させるって、そんなことして桃兎になんのメリットがあるんだ?それともただ単に好奇心で壊してみた、とかか?

「……面倒な兎だ」

殺気を隠しもしないシンは、ぴょんぴょんと跳ね回る兎を軽く睨んでいた。

「まあ何にせよ、あのアホを捕まえるのが先だ。伝承通りかどうかはその後にでも確かめればーーー」

『グゥオオオォォォォォ!!』

突然、ちょうどここから北側、つまりは花畑がある方向から、謎の雄叫びが響いた。

「「「…………」」」

オレたちは無言でお互いの顔を見合った。そしてオレは花畑の方角をじっと見つめる桃兎にこう叫んだのである。

「……何してくれてんだぁぁ!あのアホォォォォ!!」






side 八神秀

待機部隊として花畑で暇を持て余すことになった俺、湊、セツナ、リュウ、エル、カイトの計六人。ただ黙って座るだけってのも居心地が悪いと感じ、各々自由に過ごすこととなった。

セツナは湊を連れ出して近くの森で戦闘訓練に、エルとリュウは花畑に咲く花々をよく観察するために二人で歩き回っていた。

「秀様はSランク規模の氣を保有しておられるのですね」

「ああ。そういうあんたはどうなんだ?」

「私など、まだまだでございます。保有量はAランクほどあり、一般的な方々よりも多いのは事実ですが、何せ戦闘センスに恵まれてはおりませんから。宝の持ち腐れ、というものです」

俺はというと、情報収集も兼ねてカイトと談笑していた。この国に来てまだ二日。変な事に巻き込まれないためにも、早急に必要な情報を集めないとな。特にノアは自分から面倒事に突っ込むタイプだからよ。

「へぇ。俺の勘から言ったら、あんたは結構強そうに感じんだがなぁ」

「そう思っていただけるのは大変嬉しいですね」

「そういやあんた、亜人のわりに俺たちに全く敵意を持ってねぇな」

カイトだけじゃねぇ。同行者であるカナタもだ。二人とも猫の亜人らしいから、人間に対して恨みつらみを持っててもおかしくはないが、そういう感情は二人からは一切読み取れなかったんだよなぁ。

「そう、ですね。……おかしいですか?」

「いや、ちょっと気になったって程度のことだ。アンドレアスの旦那もあんたみたいなタイプだったからな。おかしいってわけじゃねぇが、珍しいとは思うぜ」

「珍しい……まあそうでしょうね」

ん?なんか含みのある言い方だなぁ、今の発言。

「あー……イノセントはBランクパーティなんだろ?二人だけでよくそこまで上げられたな」

「ええ、まあ。本当は……あ、いえ……カナタ様がお強いですからね」

……なーんかさっきから引っかかる言動が多いなぁ。他人の事情に首を突っ込むようなことは基本的にしたくねぇんだが、念の為頭の片隅にでも置いておくか。

「ノアズアークはCランクパーティでしたね。とてもそのランクに収まるような器には見えませんでしたが」

「ま、トロイメライをクリアしてねぇからな。それ以外の昇格条件はクリアしてんだけどよ、確か」

ギルドカードの裏面に氣を流せば、自分やパーティの魔物の討伐数や各魔物の情報を知ることが可能になっている。なんともまあ便利なカードだ。

「そうでしたか。トロイメライは、大帝国グランドベゼルの帝都アクロポリスに直接行かなければ受けられませんから。今すぐに昇格というのは現実的ではありませんね」

「そうだな。正直全体的に見てもBランクパーティの実力は十分にあるんだよなぁ。だから詐欺っちゃ詐欺だな、このCランクっつう肩書きはよ」

神仙族の俺たちを抜きにしても、カズハ、エル、リュウ、セツナの実力は並の冒険者よりもあると踏んでいる。エルの氣弾の精度もある程度実践に使えるほどには高くなってるし、カズハも最近じゃ湊と接戦でいい勝負をすることも少なくないようだな。

リュウはシンに買ってもらったあの短剣を使いながら、魔物を的確に倒せるようになった。魔物との戦いに慣れたのもあるんだろうが、もともとの身のこなしの良さも魔物を瞬殺できる理由のひとつだろう。

セツナに関しては、スポンジのような吸収力で着実に強くなってやがるな。空いた時間には黙々と森で弓を引くことが多いし、なんなら現在進行形で湊を動く的として使ってるかもな。

仮に湊の本気の動きを捉え、矢で射ることができようもんなら、世界一の弓使いになったと言っても過言じゃねぇんだが……いつかそれを成し遂げそうで恐ろしいんだよなぁ、あいつ。
まあそれと同時に、ちょっと楽しみでもあるんだが。

「詐欺、ですか……。私たちもある意味、詐欺師と呼ばれるに相応しいのかもしれませんね」

カイトは自嘲気味にそう口にした。

「ま、嘘つきって意味じゃ俺も同類だが、嘘つき全員が悪かと言ったらそうじゃねぇだろ。あんたもそうは思わねぇか?」

例えば相手を想った結果の嘘。それも結局は自己満足というか、自分勝手な善意の押し付けってやつだ。それにその行為で相手を傷つけちまったら本末転倒なんだろう。だがそこには確かに、相手を想う心ってのがある。だからそれを否定するのは、なんかちげぇんじゃねぇかと俺は思ってるんだよなぁ。

「……そうでしょうか。誰かを騙す行為は絶対悪そのものです。信じていた者に騙された者の痛みは、他の誰にも計り知ることなどできませんから……」

カイトはやけに真に迫った物言いで言葉を紡いだ。そして唇を強く固く結び、苦しみや悲しみに耐えるような、そんなもの悲しい表情をしていた。

「カイトお前、どっかで誰かに裏切られたかしただろ」

「……っ!」

カイトは俯いた顔を上げ、目を丸くして俺を見つめた。

「それも相当信頼してた奴に。じゃなきゃ、そんな弱々しい声や歪んだ顔にはなんねぇもんなぁ」

カイトは数秒間、身体を微動だにせず、ただただ固まっていた。

「………………ふぅぅ……」

沈黙の後、固まった身体をほぐすかのようにカイトは軽く息を吐き出した。そして左の首もとにある古傷に右手をそっと添えて、軽くさすった。

「これは、私が心から慕っていた父から受けた傷。あの時のことは、今でもはっきりと覚えています。殺し合う民衆を止めなければと、慌てて父に伝えに行った結果、部屋に飾られていた剣で切り付けられました。私はわけがわからず、その場から逃げ出してしまった。情けない男なんですよ、本当にね……」

カイトは自分を嘲笑っていた。さすっていた右手はいつのまにか首を強く掴んでおり、それはまるで自分の手で自分を締め殺そうとしているかのようだった。

「おい、力入りすぎだ」

「……っ!失礼しました。少し、取り乱してしまったようです……すみませんでした」

はっとしたカイトは右手をすぐに離し、軽く頭を下げて俺に謝罪を述べた。

「まあなんだ。悪かったな、変な話しちまってよ。お前の古傷を抉るつもりはなかったんだが、ちっとばかし詮索が過ぎたな」

「あ、いえ……みっともないところをお見せしてしまい、こちらこそすみませんでした」

すみません、ねぇ……。今のはこいつが謝るようなことはなんもねぇはずなんだがな。この感じだと、悪い意味で謝罪慣れしてそうだなぁ。

「ちょいと話は変わるんだが……カイトはよ、人に何かしてもらった時、ありがとうよりすみませんが出るタイプだろ」

「え……」

「それはお前の謙虚で礼儀正しい、良い性分なのかもしれねぇが、受け取る側としてはよ、謝られるより感謝された方が嬉しいんだぜ?」

「…………そう、なんですか……?」

カイトは、まるで何も知らない子どものように、純粋な目をしてそう聞いてきた。

誰にでもへりくだる姿勢ってのも考えもんだな、おい。なんかいい方法…………お、これならちょっと面白そうだなぁ。

「よし。ひとつゲームをしようぜ。俺が今から言うことを、カイトがカナタに言うんだ。それでカナタが笑ったら、俺の頼みをひとつ聞く。もし笑わなけりゃ、お前の頼みをひとつ俺が叶える。どうだ?やってみるか?」

「……分かりました」

カイトは少し躊躇いながらも、俺の提案を了承した。そして俺は、カイトにとある言葉を伝えた。それを聞いたカイトは、戸惑ったような表情や怪訝そうな顔をしていたが、俺はゴリ押すように「大丈夫だって。騙されたと思ってやってみろよ」と励ましたのだが…………その後すぐに、冷静に自分のこの行動を俯瞰し、心の中で自嘲した。

本当は首を突っ込む気なんてさらさらなかったんだがなぁ。はは、俺ってもしかして、お節介大好き野郎だったか?

『カタカタカタカタ……』

自分の利のない行動に内心呆れていたその時、妙な地響きがした。その小さな振動は徐々に大きくなり、足の裏や臀部、内臓から頭へと、一瞬にして駆け巡った。

『グゥオオオォォォォゥゥ!!』

そして一際大きな振動とドデカい物音とともに、野太い咆哮が響き渡った。

「うっせぇな、おい……!」
「……っ!」

俺とカイトは瞬時に耳を塞ぎ、音によるダメージを極力防ぐ。

「なんだってんだ、一体……」

咆哮が鳴り止み、その声の主を見れば、そこには花や木々をその身に纏った巨大な生物がいた。頭部は二つあり、片方は牛、もう片方は馬の頭のように見え、双方の目はギラギラと赤く輝いている。

さらには、空から花や土の塊なんかがバラバラと降り注いでいた。あのバケモンの咆哮の直前に聞こえた爆音は、あいつが地面から勢いよく飛び出した時の音だったってことだろう。その時飛び散ったものが今、空から降ってきてるっつうわけか。

「あれは……魔物なんでしょうか……?」

カイトは目を丸くしつつも、落ち着いた様子でバケモノを見据えていた。

牛と馬の頭を持った人型の木のバケモノ。そんなやつが、花畑の地中から突如として現れやがったってわけだ。

俺は立ち上がり、首を左右に動かしてコキッ、コキッと鳴らした。

「あー……とりあえずぶっ倒すか」

俺はかったるいなぁと思いながら、顎を軽く上げて首の後ろを軽く掻いた。

「ですね。村を破壊されても……困りますし」

カイトは膝下を軽くはたいた後に俺の隣に立ち、俺の言葉に同意を示した。

「カイト。お前の実力、この目で確かめさせてもらうぜ」

俺はニヤッとしながらカイトの横顔を見た。俺はカイトもそれに応えてくれると思っていた。

「……ええ……そう、ですね……」

だがその顔には、妙な影が差しているように感じた。
























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