117 / 134
ここにいる理由 後半①
しおりを挟む
王女様の部屋はこれまで見た中で、どこよりもきらびやかだった。
広く開放感溢れる一画に溢れる宝石の数々。
遠くの壁際に、王女付きの侍女たちが最低限の人数。近衛の方々は隣に続く扉の側に待機させられている。
アミーラ様は大きな猫脚のソファに腰を下ろし、私にも座るよう勧めた。その申し出を有り難く受け、座ると急に態度が一変する。
先程まで厳かさが鳴りを潜め、深く背もたれに寄りかかった彼女は足を組み、用意されていたカップを手に取る。
ひと口含んで飲み下した後、声をかけてくる。
「ねえ。さっきのどうだったかしら?」
いきなりの砕けた話し方と雰囲気に戸惑ってしまう。だけど気づかない彼女はなおも訊いてくる。
「ルミ、聞いてるの?」
「あ、ごめんなさい。さっきのとは、どういう意味でしょう?」
「深刻さが出てたかしらってこと。フェルはあの話、信じたかしら?」
「もしかして……嘘をついたんですか?」
話の流れからそう言っただけだけど、アミーラ様はピクリと眉を動かし、カップをソーサーに置いた。直後、鋭い視線を向けてくる。
「その発言は不敬に値するわ。でも…貴女はこの国の民じゃないから処罰するのは無理ね。国、というより世界かしら」
その含んだ言い方が気になってしまう。その疑問を投げ掛けた。
「世界?」
「ええ」
「あの。先程、私を調べたと仰いましたが、どこまで知っているのですか?」
「調べてなんかいないわ」
「え?」
「そんなことしなくても全て知ってるもの」
「どういうことですか?」
訊けば、彼女は怪訝な視線を向けてきた。
「本当に分かっていなかったのかしら」
「何をですか?」
「全てよ。あなたがこの場にいる理由、存在している理由、その全部」
「……」
そんなことを言われても知らないものは知らない。無言で返したら、一拍置いて楽しげな声を出された。
「あらヤダ、本当に分かっていなかったなんて……てっきり自身の役割を理解した上で行動していたのかと思ったわ。ふふっ…そう。ならこれから貴女もつらくなるわね」
クスクスとひとしきり笑ったあと、アミーラ様は優雅な笑みのまま続けた。
「この国に貴女を喚んだのは私なのよ」
「……あなたが私を?」
どういう意味なのか、と混乱する。アミーラ様はジッと私を見てひとつ息を吐いて続けた。
「そう。私の魔力を源にしてるのに貴女には何も伝わってないのね」
「魔力……」
「ええ。説明するのは面倒だけれど…つまり、ルミ。貴女は私が魔術を使って召喚したのよ。別の世界から」
「別の世界……」
薄々気づいていたけど、改めて言われると受け入れがたい。でも彼女はさらに困惑することを言った。
「ついでに、これも教えてあげる。あの魔獣たち、それも私が喚び寄せたの」
「何を、言って…」
国の騎士たち……フェル達を戦場に駆り出す原因を、その主たる国王の娘がおこなっていた。国王たる父親が倒れているのに。
聞かされた話が理解出来ずに頭を巡っていった。
広く開放感溢れる一画に溢れる宝石の数々。
遠くの壁際に、王女付きの侍女たちが最低限の人数。近衛の方々は隣に続く扉の側に待機させられている。
アミーラ様は大きな猫脚のソファに腰を下ろし、私にも座るよう勧めた。その申し出を有り難く受け、座ると急に態度が一変する。
先程まで厳かさが鳴りを潜め、深く背もたれに寄りかかった彼女は足を組み、用意されていたカップを手に取る。
ひと口含んで飲み下した後、声をかけてくる。
「ねえ。さっきのどうだったかしら?」
いきなりの砕けた話し方と雰囲気に戸惑ってしまう。だけど気づかない彼女はなおも訊いてくる。
「ルミ、聞いてるの?」
「あ、ごめんなさい。さっきのとは、どういう意味でしょう?」
「深刻さが出てたかしらってこと。フェルはあの話、信じたかしら?」
「もしかして……嘘をついたんですか?」
話の流れからそう言っただけだけど、アミーラ様はピクリと眉を動かし、カップをソーサーに置いた。直後、鋭い視線を向けてくる。
「その発言は不敬に値するわ。でも…貴女はこの国の民じゃないから処罰するのは無理ね。国、というより世界かしら」
その含んだ言い方が気になってしまう。その疑問を投げ掛けた。
「世界?」
「ええ」
「あの。先程、私を調べたと仰いましたが、どこまで知っているのですか?」
「調べてなんかいないわ」
「え?」
「そんなことしなくても全て知ってるもの」
「どういうことですか?」
訊けば、彼女は怪訝な視線を向けてきた。
「本当に分かっていなかったのかしら」
「何をですか?」
「全てよ。あなたがこの場にいる理由、存在している理由、その全部」
「……」
そんなことを言われても知らないものは知らない。無言で返したら、一拍置いて楽しげな声を出された。
「あらヤダ、本当に分かっていなかったなんて……てっきり自身の役割を理解した上で行動していたのかと思ったわ。ふふっ…そう。ならこれから貴女もつらくなるわね」
クスクスとひとしきり笑ったあと、アミーラ様は優雅な笑みのまま続けた。
「この国に貴女を喚んだのは私なのよ」
「……あなたが私を?」
どういう意味なのか、と混乱する。アミーラ様はジッと私を見てひとつ息を吐いて続けた。
「そう。私の魔力を源にしてるのに貴女には何も伝わってないのね」
「魔力……」
「ええ。説明するのは面倒だけれど…つまり、ルミ。貴女は私が魔術を使って召喚したのよ。別の世界から」
「別の世界……」
薄々気づいていたけど、改めて言われると受け入れがたい。でも彼女はさらに困惑することを言った。
「ついでに、これも教えてあげる。あの魔獣たち、それも私が喚び寄せたの」
「何を、言って…」
国の騎士たち……フェル達を戦場に駆り出す原因を、その主たる国王の娘がおこなっていた。国王たる父親が倒れているのに。
聞かされた話が理解出来ずに頭を巡っていった。
64
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる