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ここにいる理由 後半②
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状況を噛み砕いていくと段々と怒りが沸いてくる。不敬で処罰できないとの話にも後押しされたのかもしれない。
そもそも見知らぬ世界からなんでもかんでも呼び寄せて、それで困ってる人がいるのだから理由があっても許されることじゃない。
つい前のめりで訴える。
「魔獣が国を襲ったらどうするつもりなんですか? 私のことだって…極悪人だったら大変なことになってたじゃない」
私の言葉にキョトンとするアミーラ様はクスクスと笑う。
「そんなことが気になるのね…ふふっ、おかしな人だわ。自分の国でもあるまいし。まあでも、そうね。魔獣は国境で抑えられてるし、貴女だって悪人じゃなかった。それでいいでしょ」
「それは結果論です。いったいどうしてこんなことを?」
「どうして…ね」
アミーラ様は何でもないことのように言いのけて持っていたカップへ砂糖を入れて、ティースプーンで混ぜ始めた。呟くように続ける。
「…私ね。ずっと欲しいものがあったのよ」
「欲しいもの?」
「さっき、フェルに話した例え話。あれは私の気持ちも含まれていたの。でもね、私は諦めないわ」
その言葉に…気づいてしまう。彼女が何を望んでいたのか。震えそうになる唇で問いかける。
「手に入れたい品は……フェル、ですか」
「ええ。さすがに貴女でも分かったのね」
「なら、直接伝えれば良いじゃないですか」
こんな遠回しなことなどせず、たくさんの人に迷惑なんか掛けないで……。
私なんて、喚んだりしないで……彼と出会わせるような真似なんかしないで、ちゃんと伝えれば良かったのに。
二人は同じ世界に住んでいるのだから。
私の言葉に、アミーラ様が盛大な溜め息を吐いた。
「そんな単純な話じゃないのよ。王女の婚約者になれる資格は侯爵以上。そして私は、安易に外へ出られる状況じゃなかったの。いろいろあってね」
「だから魔獣を呼び寄せ、戦果を上げさせ一部の騎士に爵位を与えた」
「そう。わかってるじゃない。真意を隠すために爵位を与える部隊はいくつか選んでお父様に打診したわ。そして、貴女」
「私、は……」
「おかしいと思わなかった? 明らかに世界が違うのに言語も通じて、文字も読めたでしょう? それに、小国でも入出国記録は録ってるのよ? 見知らぬ人間が迷い込んだら、普通はすぐに警吏に引き渡される。それがなかったのは私のおかげなのよ」
確かに違和感はあった。でも、そういうものだと飲み込んでしまったのは思い込みのせい。
黙り込むと、彼女は続ける。
「貴女は私の術式を通ったの。言語は共有したわ。じゃなきゃ、私の代わりとして役に立たないじゃない?」
「代わりとして、何をさせようと?」
アミーラ様の口元へが緩く上がる。
「分かるでしょ? あの日、貴女をフェルと出逢うように仕組んだの」
「別の人と出逢う可能性もありました」
「そしたらまた策を考えたわ。でもね、彼のことを知っていれば難しくなかったのよ。あのとき、あの瞬間、あの場所に行かせることは」
「っ! そ、それでもこれは……彼が受け入れなければ、貴女の計画は成り立ちませんでした」
「けど彼は受け入れたのでしょう? 私の策が全てを上回ったってことだわ」
「っ!」
勝ち誇ったかのように笑って続ける。
「彼が私と同じ姿形をした者を愛し、その者がいなくなればその愛はそっくりそのまま私のもの。だから、あらゆる時代、世界を巡って貴女を見つけたのよ。その権利はあるでしょう?」
「でも私の代わりを彼は断りました」
「今は、ね。だけど貴女が二度と会えない異世界の者だったと知ったらどうかしら?」
アミーラ様は、その時のことを考えたのだろう。堪えきれないようにフフッと笑う。
「始めは確かに私を拒むかもしれないわ。でもね、きっと耐えきれなくなるの。人はそれほどまでに弱いのだから。そうしてだんだんと私を求めるようになる。そうすれば、いずれ彼は私と婚姻を結ぶことになるのよ」
勝手なことを連ねる彼女に、怒りが膨らんでいく。意地のように言葉を吐き出した。
「私が彼の傍を離れない、と言ったらどうしますか?」
一瞬、動きを止めた彼女は怒ることもなく私を見つめる。先程以上に深い笑みを浮かべたかと思うと、同じ黒髪を肩から払いのけた。
「それは出来ない……いえ、貴女はしないでしょうね」
「しない?」
「魔獣を喚ぶにしても貴女を喚ぶにしても、異なる世界からの召喚術を使っているのよ。魔力は相当消耗したわ。私一人では成し得なかった」
「……」
他に協力者がいるのだろうか。それになんの関係があるのかと思いつつ、問いかける。
「それは、いったい誰の?」
「お父様にご協力いただいたわ。許可は取ってないけど。闇商会から集めた禁忌の魔具を使って、お父様とその側近から関係者まで魔力を収集したの。おかげで皆倒れてしまったけどね。でも、国の実権も握れたのだから一石二鳥だわ」
その言葉に唖然とした。
そもそも見知らぬ世界からなんでもかんでも呼び寄せて、それで困ってる人がいるのだから理由があっても許されることじゃない。
つい前のめりで訴える。
「魔獣が国を襲ったらどうするつもりなんですか? 私のことだって…極悪人だったら大変なことになってたじゃない」
私の言葉にキョトンとするアミーラ様はクスクスと笑う。
「そんなことが気になるのね…ふふっ、おかしな人だわ。自分の国でもあるまいし。まあでも、そうね。魔獣は国境で抑えられてるし、貴女だって悪人じゃなかった。それでいいでしょ」
「それは結果論です。いったいどうしてこんなことを?」
「どうして…ね」
アミーラ様は何でもないことのように言いのけて持っていたカップへ砂糖を入れて、ティースプーンで混ぜ始めた。呟くように続ける。
「…私ね。ずっと欲しいものがあったのよ」
「欲しいもの?」
「さっき、フェルに話した例え話。あれは私の気持ちも含まれていたの。でもね、私は諦めないわ」
その言葉に…気づいてしまう。彼女が何を望んでいたのか。震えそうになる唇で問いかける。
「手に入れたい品は……フェル、ですか」
「ええ。さすがに貴女でも分かったのね」
「なら、直接伝えれば良いじゃないですか」
こんな遠回しなことなどせず、たくさんの人に迷惑なんか掛けないで……。
私なんて、喚んだりしないで……彼と出会わせるような真似なんかしないで、ちゃんと伝えれば良かったのに。
二人は同じ世界に住んでいるのだから。
私の言葉に、アミーラ様が盛大な溜め息を吐いた。
「そんな単純な話じゃないのよ。王女の婚約者になれる資格は侯爵以上。そして私は、安易に外へ出られる状況じゃなかったの。いろいろあってね」
「だから魔獣を呼び寄せ、戦果を上げさせ一部の騎士に爵位を与えた」
「そう。わかってるじゃない。真意を隠すために爵位を与える部隊はいくつか選んでお父様に打診したわ。そして、貴女」
「私、は……」
「おかしいと思わなかった? 明らかに世界が違うのに言語も通じて、文字も読めたでしょう? それに、小国でも入出国記録は録ってるのよ? 見知らぬ人間が迷い込んだら、普通はすぐに警吏に引き渡される。それがなかったのは私のおかげなのよ」
確かに違和感はあった。でも、そういうものだと飲み込んでしまったのは思い込みのせい。
黙り込むと、彼女は続ける。
「貴女は私の術式を通ったの。言語は共有したわ。じゃなきゃ、私の代わりとして役に立たないじゃない?」
「代わりとして、何をさせようと?」
アミーラ様の口元へが緩く上がる。
「分かるでしょ? あの日、貴女をフェルと出逢うように仕組んだの」
「別の人と出逢う可能性もありました」
「そしたらまた策を考えたわ。でもね、彼のことを知っていれば難しくなかったのよ。あのとき、あの瞬間、あの場所に行かせることは」
「っ! そ、それでもこれは……彼が受け入れなければ、貴女の計画は成り立ちませんでした」
「けど彼は受け入れたのでしょう? 私の策が全てを上回ったってことだわ」
「っ!」
勝ち誇ったかのように笑って続ける。
「彼が私と同じ姿形をした者を愛し、その者がいなくなればその愛はそっくりそのまま私のもの。だから、あらゆる時代、世界を巡って貴女を見つけたのよ。その権利はあるでしょう?」
「でも私の代わりを彼は断りました」
「今は、ね。だけど貴女が二度と会えない異世界の者だったと知ったらどうかしら?」
アミーラ様は、その時のことを考えたのだろう。堪えきれないようにフフッと笑う。
「始めは確かに私を拒むかもしれないわ。でもね、きっと耐えきれなくなるの。人はそれほどまでに弱いのだから。そうしてだんだんと私を求めるようになる。そうすれば、いずれ彼は私と婚姻を結ぶことになるのよ」
勝手なことを連ねる彼女に、怒りが膨らんでいく。意地のように言葉を吐き出した。
「私が彼の傍を離れない、と言ったらどうしますか?」
一瞬、動きを止めた彼女は怒ることもなく私を見つめる。先程以上に深い笑みを浮かべたかと思うと、同じ黒髪を肩から払いのけた。
「それは出来ない……いえ、貴女はしないでしょうね」
「しない?」
「魔獣を喚ぶにしても貴女を喚ぶにしても、異なる世界からの召喚術を使っているのよ。魔力は相当消耗したわ。私一人では成し得なかった」
「……」
他に協力者がいるのだろうか。それになんの関係があるのかと思いつつ、問いかける。
「それは、いったい誰の?」
「お父様にご協力いただいたわ。許可は取ってないけど。闇商会から集めた禁忌の魔具を使って、お父様とその側近から関係者まで魔力を収集したの。おかげで皆倒れてしまったけどね。でも、国の実権も握れたのだから一石二鳥だわ」
その言葉に唖然とした。
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