<第一章完結>聖女は自分を呼んだ異世界を嘲笑う

詩海猫(8/29書籍発売)

文字の大きさ
28 / 29

10

しおりを挟む
クレイル視点です。



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*


バタンと扉が閉じ、ツキナ改めミス・サキサカが出て行くと、
「……嵐みたいだったね」
と感想を述べるウィルに、
「お前、一体何のつもりで……!」
と胸ぐらを掴み上げた。
「あー……すまん。出来れば感動の再会とかさせてあげたかったんだけど、彼女ほんとに用心深いよね」
「当たり前だろうっ!何故わざわざーー」
「君だって会いたかっただろ?無事を知ってホッとしたんじゃない?」
「そうだがっ……!」
「カンナ嬢とのことも知りたいんじゃない?」
「っ、……」
「まず彼女ーーここでは便宜上ツキナと呼ぶね?カンナ嬢とは無事に再会してる。知り合った経緯はカンナ嬢が迷子になった時発見したのがツキナ嬢ってことになってるけど、まあそういうことにしたんだろうね。カンナ嬢もすっかり懐いて“お姉さま“と呼んで慕っていて、今では留守がちなカンナ嬢の両親公認で家に泊まりに行ったりして、すっかり家族同様の付き合いらしいよ」
「……そうか……良かった」
(二人は今、幸せに暮らせているのだな)と手を放すと、
「その点については感謝する。だが先ほどの脅迫はーー」
「脅迫じゃないってば。あくまで情報収集と保護のためだって、カリンみたいなのが彷徨うろいて出くわしたら困るでしょ?まあ君からの話を聞いていたとはいえ、自主的に名乗り出てくる子がいるとは思わなかったけど」
「それはそうだがっ!」
彼女にはこれで要注意人物、いや敵認定されたろう。
今日の件がなければ、互いに知らない者同士で、仕事仲間として付き合うことができたかもしれないが、
「もう、無理だろうな……」


もしこちらでもう一度彼女に会えたなら、言いたいことが沢山あった。
詫びも、礼も、愛しているという言葉も。だが彼女が要らないというだろうことも容易に想像がついていた。


先ほどだってウィルのやった事に凄い剣幕で噛みついて批難していた。
その姿を思い出して、思わず苦笑が込み上げる。自分の知るツキナは、淡々として一方的に課せられた任務をこなし、感情を見せることはなかった。最後の最期まで、自分の心を垣間見せることなく、一人で逝った。
あの頃に比べたら、今の彼女の方がずっと人間らしい。


彼女は知らないだろう、あの時自分のお腹に新しい命が宿っていたことを。
話そうか迷ったが、見ず知らずの子供だったカンナ嬢をあそこまで可愛がって面倒を見ていた彼女だーー知ったら、きっと傷つくだろう。
「……死んだ後のことでまで、傷つける必要はないな」


やはり、黙っておくべきだろう。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

野生なら許される ――だけど人間は違う

ファンタジー
自宅へ帰ると、妻から「子どもができた」と知らされる。 それに夫は……。 ※複数のサイトに投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

異世界追放《完結》

アーエル
ファンタジー
召喚された少女は世界の役に立つ。 この世界に残すことで自分たちの役に立つ。 だったら元の世界に戻れないようにすればいい。 神が邪魔をしようと本人が望まなかろうと。 操ってしまえば良い。 ……そんな世界がありました。 他社でも公開

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

処理中です...