56 / 62
脱却3
3-5
しおりを挟む
「……まあ、飲み物くらいなら奢ってやるよ」
「やった~♪ ありがとう!」
今日のところは出来る限り付き合おうと決め、足を街の方へと向けた。
――……。
「本当に入るのか?」
「とーぜん☆」
声を弾ませる唐木に腕を引っ張られて入った場所は、漫画ネットカフェ。
(とことん付き合うとは決めたけど、ココに男二人で入ることになるとは思わなかったな……)
受付けで話をしている唐木の後ろで静かに控える。
出入りする客は俺達と同じで学生率が高い。
(まだ五時前だし、今日が始業式の学校も多いらしいからな。……こんな所知り合いに見られたら最悪だ)
「大河? また変な顔してどうしたのー?」
「……変ってなんだ。それより終わったのか?」
「バッチリ! さっ、行こ行こ~!」
カウンターから離れて二階へ続く階段を上がる。
前を歩く唐木が、仕切られた一角で立ち止まった。
「ソファーで一番広い個室にしてもらったから。十分に寛げると思うよ」
「それはどうも」
「あ! もちろん部屋代は僕も出すから心配しないでね。飲み物だけ大河持ちだけど」
「いいから。早く入れよ」
トンと唐木の背中を押す。
(まったく、しっかりしているというかちゃっかりしているというか……)
とりあえず荷物を下ろして飲み物を取りに行くという唐木に俺の分も頼んだ。
一人になって少し考える。
(唐木の方は良しとして、問題はあと兄貴だよな。俺、殴られたりするのか?)
李煌さんがもう言ってくれてあると切り出しやすいが…。
(ダメだな。李煌さんに頼るようじゃ進歩しない)
適当に持ってきた漫画を適当にパラパラと捲る。
「お待たせ~。一応砂糖とガムシロップ貰って来たけど、大河は入れなかったよね?」
「……いや、糖分欲しいから砂糖だけ入れる」
差し出されたホットコーヒーと砂糖を受け取ると、俺の隣に唐木も腰を落ち着けた。
「何読んでたの?」
「あ? んー……さあ?」
「さあ、って……あ、SFだね。僕もこれ読んだことあるよ」
「そんなに面白いのか?」
俺の膝から漫画を拾った唐木は一度頷いて表紙を開いた。
「面白いよ。はまると最後まで読まないと気がすまなくってさ。――て、やっぱり全然読んでなかったんだね」
「興味ないからな」
「それならわざわざ持って来なくてもいいのに……変なところで真面目だよねー」
唐木はくすくす笑いながら開いたばかりの漫画を閉じてテーブルに置くと、自分の分の飲み物、――香りからしてココアだろう――を飲んで一息ついたようだ。
直ぐに読む漫画を取りに行くのだろうと思っていたが、立ち上がる様子はない。
「――なんでココを選んだんだ? ネットが目的か? ……な訳ないか。パソコンならお前持ってたはずだもんな」
解読していくと、少し困った顔を俺に向けた。
「なんていうか……二人きりになれる場所が良かったんだよ」
「お前……」
「やった~♪ ありがとう!」
今日のところは出来る限り付き合おうと決め、足を街の方へと向けた。
――……。
「本当に入るのか?」
「とーぜん☆」
声を弾ませる唐木に腕を引っ張られて入った場所は、漫画ネットカフェ。
(とことん付き合うとは決めたけど、ココに男二人で入ることになるとは思わなかったな……)
受付けで話をしている唐木の後ろで静かに控える。
出入りする客は俺達と同じで学生率が高い。
(まだ五時前だし、今日が始業式の学校も多いらしいからな。……こんな所知り合いに見られたら最悪だ)
「大河? また変な顔してどうしたのー?」
「……変ってなんだ。それより終わったのか?」
「バッチリ! さっ、行こ行こ~!」
カウンターから離れて二階へ続く階段を上がる。
前を歩く唐木が、仕切られた一角で立ち止まった。
「ソファーで一番広い個室にしてもらったから。十分に寛げると思うよ」
「それはどうも」
「あ! もちろん部屋代は僕も出すから心配しないでね。飲み物だけ大河持ちだけど」
「いいから。早く入れよ」
トンと唐木の背中を押す。
(まったく、しっかりしているというかちゃっかりしているというか……)
とりあえず荷物を下ろして飲み物を取りに行くという唐木に俺の分も頼んだ。
一人になって少し考える。
(唐木の方は良しとして、問題はあと兄貴だよな。俺、殴られたりするのか?)
李煌さんがもう言ってくれてあると切り出しやすいが…。
(ダメだな。李煌さんに頼るようじゃ進歩しない)
適当に持ってきた漫画を適当にパラパラと捲る。
「お待たせ~。一応砂糖とガムシロップ貰って来たけど、大河は入れなかったよね?」
「……いや、糖分欲しいから砂糖だけ入れる」
差し出されたホットコーヒーと砂糖を受け取ると、俺の隣に唐木も腰を落ち着けた。
「何読んでたの?」
「あ? んー……さあ?」
「さあ、って……あ、SFだね。僕もこれ読んだことあるよ」
「そんなに面白いのか?」
俺の膝から漫画を拾った唐木は一度頷いて表紙を開いた。
「面白いよ。はまると最後まで読まないと気がすまなくってさ。――て、やっぱり全然読んでなかったんだね」
「興味ないからな」
「それならわざわざ持って来なくてもいいのに……変なところで真面目だよねー」
唐木はくすくす笑いながら開いたばかりの漫画を閉じてテーブルに置くと、自分の分の飲み物、――香りからしてココアだろう――を飲んで一息ついたようだ。
直ぐに読む漫画を取りに行くのだろうと思っていたが、立ち上がる様子はない。
「――なんでココを選んだんだ? ネットが目的か? ……な訳ないか。パソコンならお前持ってたはずだもんな」
解読していくと、少し困った顔を俺に向けた。
「なんていうか……二人きりになれる場所が良かったんだよ」
「お前……」
1
あなたにおすすめの小説
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる