染まらない花

煙々茸

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脱却3

3-4

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「……へぇ……どんな人?」
「綺麗で……優しい人だ」
「そっか。……良かったね」
 声音は変わっていないから至って平気そうに思えるが、顔が見えないから不安が募る。
(お前は今、どんな顔をしてるんだ? 本当はどう思ってるんだ……?)
 もう友人としてはいられないのか、それともそれすらも超えて嫌いな人間の部類に入ったのか……。
「唐木――」
「それって、お兄さんでしょ?」
(……えっ――)
 聞き間違いだろうか……。
「一番上のお兄さん、李煌さんだよね」
 名前が出たことで聞き間違いでないことを確信した。
「……知ってたのか」
「僕を誰だと思ってるの?」
 振り向いた唐木の顔は、僅かに口角を上げてはいるが、少し無理をしているように見えた。
 そうさせているのが俺だろうから、何も言えないが……。
(俺はスッキリしても、コイツはそうじゃない。分かっていたはずだけど、やっぱり堪えるな……)
 ふと唐木が足を止めて、一歩俺に近付いた。
「ちょっとお! 大河にそんな顔されたら大人しく諦めるしかなくなるじゃない」
「……は?」
「まあ自分の顔なんて自分からは見えないから? 仕方ないかもしれないけど。今酷い顔してるよ、大河。イケメンが台無しだ」
 最後の付け足しは不要だと思うが、はっきりと指摘されて口元が震えた。
「……や、それはお前――」
「僕のこと心配してる? 悪いとか思ってるんでしょ」
「……」
「大河って賢いはずだよねえ? こういうことになると意外と頭回らないんだね」
 この発言にはムッときた。
「どういう意味だ」
「気に触ったなら謝るけど、僕の気持ちに大河が同調するのはおかしいよ。僕が辛いと思ってるからそんな顔するんでしょ?」
「っ……」
「そんなの優しさでもなんでもないからね。逆に心外だよ。――まあ、振られてガッカリしない人間はいないだろうけど、辛いままでいる人間もそういないから」
「……唐木」
 またゆっくりと歩き出す彼の後を追う。
「大河が言い難いことを頑張って打ち明けてくれたことは分かるよ。だから僕は救われたし、スッキリした気持ちもある」
「……」
「それを勝手に僕の気持ちを想像で埋めないで欲しいんだ。辛いだけってわけじゃないんだから」
 またクルッと振り返った唐木の顔は、さっきとは違っていつもの元気な笑顔だった。
 それを見て、肩の力が抜けた。
(俺なんかよりも全然カッコイイよ、お前は)
 慣れない事にぐだぐだ考える俺なんかより、強くてカッコイイ。
(……なんて、今更か)
 そう思いながら口元を緩めると、
「うん、やっと笑ったね。僕の大事な親友なんだから、僕と居る時は笑っててもらわないと」
 ニヘヘと変な笑い方をする唐木に思わず小さく噴き出す。
「ふっ。何だそれ、照れ笑いか?」
「もー! そういう事は突っ込まなくていいの!」
「はいはい」
「それよりさ、どこか寄ってかない? 何か温かい物飲みたいな~」
 唐木がチラリと意味深に目配せしてきて、あぁ、と俺は嘆息した。
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