57 / 62
脱却3
3-6
しおりを挟む
「あ、勘違いしないでね。ちゃんと諦めるつもりだから。――それよりさ、」
「……?」
「魁里さんとは上手くいってるの?」
思いもよらなかった名前が上がって一瞬目を見開く。
「……兄貴? が、どうかしたのか?」
「ううん、どうもしてないけど……あの人って上のお兄さんのこと凄く大事にしてるみたいに感じたからさ。それって厄介でしょ?」
まったく、良く見ている友人だ。
厄介なのは寧ろこの友人なんじゃないだろうかと思えてくる。
じっと見据える俺の視線に、唐木が訝しむ。
「どうかした?」
「いや、まあ厄介であることは確かだけどな」
「その様子だと、まだ伝えられてないんだね。どうするつもりなの?」
「近いうちに言うつもりではいる」
砂糖が溶け込んだコーヒーを静かに啜る。
その甘みと香りが自然と気持ちを落ち着かせてくれた。
「あーっ、いいなー」
「は? ……何がだよ。てかもっと静かに話せないのか?」
足を投げ出して突然声を上げた唐木に驚き、眉間に皺を刻む。
「ごめんごめん」
と、声を顰めて言う唐木に小さく息を吐いた。
「……で、何がいいんだ?」
「やっぱり大河欲しいーって思って」
「――っゴホ」
「あ……大丈夫? はい、お手拭きあるよ」
コイツはわざと俺をからかっているのか。
(そうだったとしたら、性格悪過ぎるだろ…)
いまいち油断のならないこの友人に白い目を向け、少し零れたコーヒーをお手拭きで拭きとった。
――……。
夕方六時過ぎ。
もうすっかり外は暗い。
漫画ネットカフェを出て家路を急ぐ。
「お兄さんには連絡いれてあるんだよね」
「ああ、一応な」
それでも今日は早くに終わると言ってあったから、折り返しの返信がないと少し不安になる。
「なら、そんなに急がなくても大丈夫じゃない? 忙しくてメッセージ打てないだけかもしれないし」
「まあ……そうだろうけどな」
「それにさ、お兄さんのことだからこっちが連絡しなかったとしても心配になって向こうからして来る気がするし。それがないってことは大丈夫だよ」
家に近付くと、リビングの明かりがついていることに気付いてホッとした。
「じゃあ、また明日な」
「あ、少し心配だから僕もお兄さんに会っていっていいかな」
「? ……別にいいけど」
玄関のドアを開けると、音に気付いた李煌さんがリビングの方から出て来た。
「大河くん、お帰りなさい。メッセージ返せなくてごめんね」
近付く李煌さんからは、カレーの匂いがして空腹感が増した。
「ああ、大丈夫。手が話せなかったんだろ?」
「ちょっと夕飯の材料を買いに行ったりしててね。――あれ? 唐木くん?」
開けっ放しのドアの向こうに佇む唐木に、李煌さんが気付いて驚きの表情を浮かべた。
そんな李煌さんに唐木がペコリと頭を下げた。
「こんばんは。初詣以来ですね」
「そうだね。今日も大河くんと遊んでくれてありがとう」
「いえいえ。僕が強引に付き合って貰っちゃったんですよ。遅くまでお借りしました」
「ご丁寧にありがとう。またいつでも連れ出してあげて頂戴。でも暗くなる前に返してね」
「……?」
「魁里さんとは上手くいってるの?」
思いもよらなかった名前が上がって一瞬目を見開く。
「……兄貴? が、どうかしたのか?」
「ううん、どうもしてないけど……あの人って上のお兄さんのこと凄く大事にしてるみたいに感じたからさ。それって厄介でしょ?」
まったく、良く見ている友人だ。
厄介なのは寧ろこの友人なんじゃないだろうかと思えてくる。
じっと見据える俺の視線に、唐木が訝しむ。
「どうかした?」
「いや、まあ厄介であることは確かだけどな」
「その様子だと、まだ伝えられてないんだね。どうするつもりなの?」
「近いうちに言うつもりではいる」
砂糖が溶け込んだコーヒーを静かに啜る。
その甘みと香りが自然と気持ちを落ち着かせてくれた。
「あーっ、いいなー」
「は? ……何がだよ。てかもっと静かに話せないのか?」
足を投げ出して突然声を上げた唐木に驚き、眉間に皺を刻む。
「ごめんごめん」
と、声を顰めて言う唐木に小さく息を吐いた。
「……で、何がいいんだ?」
「やっぱり大河欲しいーって思って」
「――っゴホ」
「あ……大丈夫? はい、お手拭きあるよ」
コイツはわざと俺をからかっているのか。
(そうだったとしたら、性格悪過ぎるだろ…)
いまいち油断のならないこの友人に白い目を向け、少し零れたコーヒーをお手拭きで拭きとった。
――……。
夕方六時過ぎ。
もうすっかり外は暗い。
漫画ネットカフェを出て家路を急ぐ。
「お兄さんには連絡いれてあるんだよね」
「ああ、一応な」
それでも今日は早くに終わると言ってあったから、折り返しの返信がないと少し不安になる。
「なら、そんなに急がなくても大丈夫じゃない? 忙しくてメッセージ打てないだけかもしれないし」
「まあ……そうだろうけどな」
「それにさ、お兄さんのことだからこっちが連絡しなかったとしても心配になって向こうからして来る気がするし。それがないってことは大丈夫だよ」
家に近付くと、リビングの明かりがついていることに気付いてホッとした。
「じゃあ、また明日な」
「あ、少し心配だから僕もお兄さんに会っていっていいかな」
「? ……別にいいけど」
玄関のドアを開けると、音に気付いた李煌さんがリビングの方から出て来た。
「大河くん、お帰りなさい。メッセージ返せなくてごめんね」
近付く李煌さんからは、カレーの匂いがして空腹感が増した。
「ああ、大丈夫。手が話せなかったんだろ?」
「ちょっと夕飯の材料を買いに行ったりしててね。――あれ? 唐木くん?」
開けっ放しのドアの向こうに佇む唐木に、李煌さんが気付いて驚きの表情を浮かべた。
そんな李煌さんに唐木がペコリと頭を下げた。
「こんばんは。初詣以来ですね」
「そうだね。今日も大河くんと遊んでくれてありがとう」
「いえいえ。僕が強引に付き合って貰っちゃったんですよ。遅くまでお借りしました」
「ご丁寧にありがとう。またいつでも連れ出してあげて頂戴。でも暗くなる前に返してね」
0
あなたにおすすめの小説
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる