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ヒロインが変。敵の襲来。
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最近は理不尽な出来事ばかり続き、我が家の空気は重苦しくなっていた気がする。
それもまあ、俺がストレスでイライラして家族の雰囲気を台無しにしきたのが主な原因なのだが。
しかし、今日は珍しく我が家は華やいだ空気が充満している。
その華やかさを運んできた空気洗浄機のような少女のミラは、なぜかソファーに座る俺の隣を独占して、グイっと身を乗り出してきた。
「それでルドルフ様は家庭的な女性はタイプでしょうか?」
「……ええと、まあ好きだが」
「なーるほど~」
なるほどって、一体こんな情報なに使うんだろう。
「すまんが、さっきからこんな会話ばっかりだが、なにか意味でもあるのか?」
「おおありです。色々と今後の参考にするので」
「その色々を詳しく教えてほしいんだが……」
そうつぶやくが、ミラはメモをとるのに必死でこちらの言葉は完全にスルーしている。無駄に距離が近いせいで、彼女が動くたびに、彼女の甘い匂いが意識しなくても香ってくる。
「父上嘘だろ、まさか本当にそっち方面で?」
向かいのソファーに座るジンも愕然とした表情でなにやらぶつくさ呟いてる。やたらと視線が冷たいのは気のせいだろうか?
そもそも、ジンの席にミラが座るはずだったのに、どうしてこの子は俺の隣に座ってるんだ。
「家庭的な人がタイプとのことですが、実は私も料理とか得意でして……ちなみに、料理はお肉とお魚どっちが好きです? 私は断然魚派ですけど!」
「んー、やっぱり俺は男だからな。がっつり脂の乗った肉料理の方が……」
「で、ですよね! 私食べるのは魚派だけど、料理はお肉の方が得意なんで。あーあ、気が合いそうで良かった!」
なにそのズルすぎる回答。
それだとどっち選んでも気が合うことにならんか?
「あれルドルフ様?」
すると、不意にミラが俺の上着の襟を掴み、グイっと顔を近づけてくる。
ダメだこの子。完全に距離感がバグってやがる。
元々距離が近かったのに、もたれ掛かるように上半身を俺の胸に預けてくる。
やたらとやわらかい感触が……。
なにとは言わないが当たってる。
「ミ、ミラ殿? 流石にこれは近すぎる気がするんだが」
「ごめんなさい。ルドルフ様の服が乱れていたので、つい」
そう言って、ミラが俺の服を直す。どうやら、ジンと取っ組み合いになった時にシャツのボタンが外れて、襟が乱れていたようだ。
気をつかってくれるのはありがたいが……身体を密着させた必要あったか?
人の服を正す前に、まずは己の心の整えて欲しい。
いかん、完全に相手のペースに飲み込まれている。このままで一向に話が進まない。
それと、自分から抱き着いてきたくせに、ポッと顔を赤らめて恥ずかしそうにするな。まるで俺が抱き寄せたみたいじゃないか!
時間が経つごとに、俺を見つめるジンの目つきが険しくなっていく。ちがう、勘違いだ。やめてくれ。俺は鼻の下を伸ばしてるわけじゃない。だからその裏切り者をみるような目をやめろ!
「で、ルドルフ様が年内に再婚する予定の話でしたっけ?」
「全然違うわ! 一言もそんな話題はあがってないし、待ってくれ。今日はこんな話をするためにミラ殿に来てもらった訳ではない」
多分このままだと不毛な会話が永遠と続く気がする。
「ゴホン」
軽く咳払いをして、俺は隣にいるミラに向き直る。
ゲームの時に何度も目にした見慣れた姿だが、現実だと美人すぎてパンチ力がヤバイな。うっかり気を抜くと、つい見惚れてしまいそうだ。
倍以上歳の離れた相手に、何やってるんだか俺は。最近は失態ばかりだから、いい加減、ここらで挽回して失敗を取り返さなくてはいないのに。
「ミラ殿聞いてくれ。君を呼んだのは、お願いしたいことがあってだね」
「……お願いですか?」
ミラが可愛らしくちょこんと首をかしげる。
ゲーム中には一度も拝めなかったやたらとあざとい仕草。どうもゲームとの印象が違う。やりづらいな。元はクール系美女だったのに……これも全部俺のせいなのか?
「ルドルフ様のお願いだったらなんでもします」
「あ、ありがたい」
初対面でこんなに信用されてるのは甚だ謎だが、後に聖女となるミラの協力が無条件で得られるなら、これほど心強いことはない。
ミラにはぜひハイネと親交を深めてほしい。
それが今日彼女を呼び寄せた理由だ。
ハイネがミラの魅力に惹かれて、魔剣士学校に興味を持ってくれれば良し。それだけでなく、優秀なミラに刺激されてハイネも戦士としての目覚めてくれれば完璧だ。男子というものは、好きな相手には格好つけて強い姿を見せたくなる生き物。
すこし動機は不純かもしれない。けれど、ゲームで恋仲だった二人だからこそ、現実でも惹かれ合うだろう。
ハイネのこれまでの態度から、追放するのは正直諦めてる。けれど、魔剣士学園に入学さえしてしまえば、あとはどうにかやる気を刺激して、勇者覚醒イベントまで進める方法もあるかもしれない。
どうにかして元のシナリオに軌道修正するのだ。
なので、ハイネと仲良くなり一緒に魔剣士学園に入学するよう誘って欲しいとミラに伝えた。
「そのような話ならお任せください! あたしもルドルフ様の家族とは、今後の関係もあり親交を深める必要があると思っていたところなので!」
「今後の……関係?」
はて、それはどういう意味だろう?
この節々に感じる違和感の正体はなんなのか。
「ふふふ、まずは外堀からってやつです」
ボソボソとミラが聞き取れないほどの小声でつぶやく。
さっきからずっと背筋が寒いのは何故だ。
「ただし、私からも条件があります!」
「わざわざ屋敷まで来てくれたんだ。もちろん出来る限りの願いに応えよう」
ミラは後に聖女に覚醒する超重要キャラだ。
ハイネにとっても必要不可欠な人物だし、協力を惜しむつもりはない。
「それで、その条件とやらは?」
「はい、魔剣士学園に入学するまでの三カ月の間、私この家に泊めて欲しいのです!」
「……ん?」
「だから、私をこの家に泊めて欲しいです!」
「えっ?」
ちょっと待って。
どうして、この話の流れでミラが家に泊まることになるんだ。元々日帰りの予定だったのに。そりゃ、ハイネと仲良くなるために、数日宿泊していかないかと誘うつもりはあったが、三カ月は流石に想定していないぞ?
「いくらんでも三カ月は……親御さんも心配するだろ?」
「その心配はいりません。両親は放任主義なんで子供の自由を優先してくれるに違いありません」
「……でもな」
申し出自体はありがたいが、ミラの行動がここまで変化するのはシナリオにひどく影響するかもしれない。
「あたしは活気あるヴァリアンツ領を見て感激したんです。この地に住む人達がこんなにもいきいきしてるのは、ルドルフ様をはじめヴァリアンツ家の皆様が素晴らしいからにほかなりません。なので、ヴァリアンツ家の方々と親交を深めて、どのように領地経営をしているなど色々学びたいと思っております。この条件が飲めないなら、ルドルフ様のお願いに協力できません!」
「っ、それは困る。分かった。条件を飲もう。その代わり、ハイネの説得をたのんだぞ」
「はい、まかせてください、ルドルフ様ぁ」
だからなんでくっついてくるんだ!
俺はやたらとテンションの高いミラを引きはがして深いため息を吐いた。
◇ ジン視点
(私はいったいなにを見せられているのだろう)
見の前で繰り広げられる自分より年下の少女と、父親の、まるで付き合いたてのカップルのような甘ったるいイチャイチャを見ながらジンは困惑していた。
まず、色々ツッコミどころはあるが、ルドルフがハイネを魔剣士学園に入学させるつもりだとジンは初めて知った。そして、そのためにミラを呼んだことも。
しかし、それはおかしな話ではなかろうかと、ジンは思う。
だって、ハイネは文官を目指してるのだし、そもそも祝福の儀で無属性という判定を受けたのだから、絶対に戦闘向きではない。そんなハイネを魔剣士学園に通わせようなどと、頭がどうかしている。
むしろ、父上こそミラが屋敷に留まることを望んでるようにしか見えない。可愛らしい少女を三カ月も家に滞在させるのを即座に許可したのがその証拠だ。
みよ、あのデレデレとした父上の顔を!
あんな表情、幼い頃に母上達と父上が会話していたのを見た時以来である。
そんな風に、冷めた気分でジンがルドルフ達を見守っていると、やがてミラはハイネに挨拶をすると言って、客間から出て行った。
ジンはゴクリと唾を飲んで、一連の流れの真意を聞くために口を開く。
「ち、父上。随分と楽しそうな様子でしたが……」
「あ、ああ。ハハハまったくまいったよ。最近の子は随分と人の距離が近いのだな」
照れ隠しをするように父上が笑う。
そんな訳はないとおもいつつも、ジンは覚悟を決めて聞く。
「……父上、私になにか隠してることがあるのではないですか?」
「なっ、か、隠し事なんてあるわけないだろ!」
これまで見た事ない程動揺した態度でルドルフがそう返事を返す。
ジト目で見つめると、ルドルフはさらにあたふたとする。
どうやら何かを隠しているのは間違いなさそうだと、ジンは確信する。
しかし、ルドルフには話すつもりがないらしい。
ならば、こっちらから暴いてやるだけだとジンは思う。ルドルフの一挙手一投足を見逃さずに、隠している真相に辿りついてやると決意する。
そして、都合の良いことに執事のジェフが新しい来客が訪ねてきたことを告げた。
「ルドルフ様、ディズモン伯爵様がお見えです」
それは、最近ヴァリアンツ領で悪事を働く男の名前だった。
それもまあ、俺がストレスでイライラして家族の雰囲気を台無しにしきたのが主な原因なのだが。
しかし、今日は珍しく我が家は華やいだ空気が充満している。
その華やかさを運んできた空気洗浄機のような少女のミラは、なぜかソファーに座る俺の隣を独占して、グイっと身を乗り出してきた。
「それでルドルフ様は家庭的な女性はタイプでしょうか?」
「……ええと、まあ好きだが」
「なーるほど~」
なるほどって、一体こんな情報なに使うんだろう。
「すまんが、さっきからこんな会話ばっかりだが、なにか意味でもあるのか?」
「おおありです。色々と今後の参考にするので」
「その色々を詳しく教えてほしいんだが……」
そうつぶやくが、ミラはメモをとるのに必死でこちらの言葉は完全にスルーしている。無駄に距離が近いせいで、彼女が動くたびに、彼女の甘い匂いが意識しなくても香ってくる。
「父上嘘だろ、まさか本当にそっち方面で?」
向かいのソファーに座るジンも愕然とした表情でなにやらぶつくさ呟いてる。やたらと視線が冷たいのは気のせいだろうか?
そもそも、ジンの席にミラが座るはずだったのに、どうしてこの子は俺の隣に座ってるんだ。
「家庭的な人がタイプとのことですが、実は私も料理とか得意でして……ちなみに、料理はお肉とお魚どっちが好きです? 私は断然魚派ですけど!」
「んー、やっぱり俺は男だからな。がっつり脂の乗った肉料理の方が……」
「で、ですよね! 私食べるのは魚派だけど、料理はお肉の方が得意なんで。あーあ、気が合いそうで良かった!」
なにそのズルすぎる回答。
それだとどっち選んでも気が合うことにならんか?
「あれルドルフ様?」
すると、不意にミラが俺の上着の襟を掴み、グイっと顔を近づけてくる。
ダメだこの子。完全に距離感がバグってやがる。
元々距離が近かったのに、もたれ掛かるように上半身を俺の胸に預けてくる。
やたらとやわらかい感触が……。
なにとは言わないが当たってる。
「ミ、ミラ殿? 流石にこれは近すぎる気がするんだが」
「ごめんなさい。ルドルフ様の服が乱れていたので、つい」
そう言って、ミラが俺の服を直す。どうやら、ジンと取っ組み合いになった時にシャツのボタンが外れて、襟が乱れていたようだ。
気をつかってくれるのはありがたいが……身体を密着させた必要あったか?
人の服を正す前に、まずは己の心の整えて欲しい。
いかん、完全に相手のペースに飲み込まれている。このままで一向に話が進まない。
それと、自分から抱き着いてきたくせに、ポッと顔を赤らめて恥ずかしそうにするな。まるで俺が抱き寄せたみたいじゃないか!
時間が経つごとに、俺を見つめるジンの目つきが険しくなっていく。ちがう、勘違いだ。やめてくれ。俺は鼻の下を伸ばしてるわけじゃない。だからその裏切り者をみるような目をやめろ!
「で、ルドルフ様が年内に再婚する予定の話でしたっけ?」
「全然違うわ! 一言もそんな話題はあがってないし、待ってくれ。今日はこんな話をするためにミラ殿に来てもらった訳ではない」
多分このままだと不毛な会話が永遠と続く気がする。
「ゴホン」
軽く咳払いをして、俺は隣にいるミラに向き直る。
ゲームの時に何度も目にした見慣れた姿だが、現実だと美人すぎてパンチ力がヤバイな。うっかり気を抜くと、つい見惚れてしまいそうだ。
倍以上歳の離れた相手に、何やってるんだか俺は。最近は失態ばかりだから、いい加減、ここらで挽回して失敗を取り返さなくてはいないのに。
「ミラ殿聞いてくれ。君を呼んだのは、お願いしたいことがあってだね」
「……お願いですか?」
ミラが可愛らしくちょこんと首をかしげる。
ゲーム中には一度も拝めなかったやたらとあざとい仕草。どうもゲームとの印象が違う。やりづらいな。元はクール系美女だったのに……これも全部俺のせいなのか?
「ルドルフ様のお願いだったらなんでもします」
「あ、ありがたい」
初対面でこんなに信用されてるのは甚だ謎だが、後に聖女となるミラの協力が無条件で得られるなら、これほど心強いことはない。
ミラにはぜひハイネと親交を深めてほしい。
それが今日彼女を呼び寄せた理由だ。
ハイネがミラの魅力に惹かれて、魔剣士学校に興味を持ってくれれば良し。それだけでなく、優秀なミラに刺激されてハイネも戦士としての目覚めてくれれば完璧だ。男子というものは、好きな相手には格好つけて強い姿を見せたくなる生き物。
すこし動機は不純かもしれない。けれど、ゲームで恋仲だった二人だからこそ、現実でも惹かれ合うだろう。
ハイネのこれまでの態度から、追放するのは正直諦めてる。けれど、魔剣士学園に入学さえしてしまえば、あとはどうにかやる気を刺激して、勇者覚醒イベントまで進める方法もあるかもしれない。
どうにかして元のシナリオに軌道修正するのだ。
なので、ハイネと仲良くなり一緒に魔剣士学園に入学するよう誘って欲しいとミラに伝えた。
「そのような話ならお任せください! あたしもルドルフ様の家族とは、今後の関係もあり親交を深める必要があると思っていたところなので!」
「今後の……関係?」
はて、それはどういう意味だろう?
この節々に感じる違和感の正体はなんなのか。
「ふふふ、まずは外堀からってやつです」
ボソボソとミラが聞き取れないほどの小声でつぶやく。
さっきからずっと背筋が寒いのは何故だ。
「ただし、私からも条件があります!」
「わざわざ屋敷まで来てくれたんだ。もちろん出来る限りの願いに応えよう」
ミラは後に聖女に覚醒する超重要キャラだ。
ハイネにとっても必要不可欠な人物だし、協力を惜しむつもりはない。
「それで、その条件とやらは?」
「はい、魔剣士学園に入学するまでの三カ月の間、私この家に泊めて欲しいのです!」
「……ん?」
「だから、私をこの家に泊めて欲しいです!」
「えっ?」
ちょっと待って。
どうして、この話の流れでミラが家に泊まることになるんだ。元々日帰りの予定だったのに。そりゃ、ハイネと仲良くなるために、数日宿泊していかないかと誘うつもりはあったが、三カ月は流石に想定していないぞ?
「いくらんでも三カ月は……親御さんも心配するだろ?」
「その心配はいりません。両親は放任主義なんで子供の自由を優先してくれるに違いありません」
「……でもな」
申し出自体はありがたいが、ミラの行動がここまで変化するのはシナリオにひどく影響するかもしれない。
「あたしは活気あるヴァリアンツ領を見て感激したんです。この地に住む人達がこんなにもいきいきしてるのは、ルドルフ様をはじめヴァリアンツ家の皆様が素晴らしいからにほかなりません。なので、ヴァリアンツ家の方々と親交を深めて、どのように領地経営をしているなど色々学びたいと思っております。この条件が飲めないなら、ルドルフ様のお願いに協力できません!」
「っ、それは困る。分かった。条件を飲もう。その代わり、ハイネの説得をたのんだぞ」
「はい、まかせてください、ルドルフ様ぁ」
だからなんでくっついてくるんだ!
俺はやたらとテンションの高いミラを引きはがして深いため息を吐いた。
◇ ジン視点
(私はいったいなにを見せられているのだろう)
見の前で繰り広げられる自分より年下の少女と、父親の、まるで付き合いたてのカップルのような甘ったるいイチャイチャを見ながらジンは困惑していた。
まず、色々ツッコミどころはあるが、ルドルフがハイネを魔剣士学園に入学させるつもりだとジンは初めて知った。そして、そのためにミラを呼んだことも。
しかし、それはおかしな話ではなかろうかと、ジンは思う。
だって、ハイネは文官を目指してるのだし、そもそも祝福の儀で無属性という判定を受けたのだから、絶対に戦闘向きではない。そんなハイネを魔剣士学園に通わせようなどと、頭がどうかしている。
むしろ、父上こそミラが屋敷に留まることを望んでるようにしか見えない。可愛らしい少女を三カ月も家に滞在させるのを即座に許可したのがその証拠だ。
みよ、あのデレデレとした父上の顔を!
あんな表情、幼い頃に母上達と父上が会話していたのを見た時以来である。
そんな風に、冷めた気分でジンがルドルフ達を見守っていると、やがてミラはハイネに挨拶をすると言って、客間から出て行った。
ジンはゴクリと唾を飲んで、一連の流れの真意を聞くために口を開く。
「ち、父上。随分と楽しそうな様子でしたが……」
「あ、ああ。ハハハまったくまいったよ。最近の子は随分と人の距離が近いのだな」
照れ隠しをするように父上が笑う。
そんな訳はないとおもいつつも、ジンは覚悟を決めて聞く。
「……父上、私になにか隠してることがあるのではないですか?」
「なっ、か、隠し事なんてあるわけないだろ!」
これまで見た事ない程動揺した態度でルドルフがそう返事を返す。
ジト目で見つめると、ルドルフはさらにあたふたとする。
どうやら何かを隠しているのは間違いなさそうだと、ジンは確信する。
しかし、ルドルフには話すつもりがないらしい。
ならば、こっちらから暴いてやるだけだとジンは思う。ルドルフの一挙手一投足を見逃さずに、隠している真相に辿りついてやると決意する。
そして、都合の良いことに執事のジェフが新しい来客が訪ねてきたことを告げた。
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