31 / 42
熊VSヴァリアンツ軍
しおりを挟む
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ガルアアアアアアアア!」
スパンと快音が響き、切断された三本の爪が宙に舞って、手負いの獣の悲鳴がこだまする。
「引くぞ!」
「は、はいっ!」
俺はすぐさま、倒れていた兵士を起こして後ろにさがる。
「だれか、援護しろ!」
爪を弾き飛ばされたストーンベアが怒り狂って、おれに腕を振り下ろしてくる。
もの凄い迫力だ。
やはり、知識で知っているゲームと、実際に経験するのでは大違いだ。
だが、侮ってもらっちゃ困る。
おれだって、若い頃はそれなりに暴れてきたんだ。
「領主を舐めんな、くそクマがぁぁ!」
破滅の剣に雷の魔力を乗せて、渾身の一撃を放つ。
鮮血が飛び散る。
ストーンベアの太い腕が宙に舞った。
「いまだッ! やれえい!」
俺がそう言い切るが早いか、目にも止まらぬ速さで駆け出してきた女が、動きを止めているストーンベアの前に躍り出て、水の魔力を付与した剣を振った。
副団長のキアンだ。
「水刃!」
水の魔力は剣の切っ先から刀身の三倍以上の長まで伸びて、まるで水の鞭のようにしなり、ストーンベアを横一線に切断した。
散々暴れた魔獣は、上半身をドサリと地面に落として沈黙した。
トドメの一撃を決めた女が返り血を拭いながら、深く息を吐く。
「ふうー、流石にこうも数多いとしんどいな。あっ、ルドルフ様! 見ていましたかこのわたしの活躍を!」
「あ、ああ」
颯爽とストーンベアを倒したキアンが笑顔を見せる。
「どうです、私を団長に昇格する気になりましたか?」
こんな時にまで、わざわざ昇級のアピールをするとは、ブレないなこいつ。
「一応考えておこう。見事な一撃であった」
「ありがとうございます、日頃から訓練してきた甲斐がありましたわ! ルドルフ様も、魔獣の固い爪を一撃で弾き飛ばすとは流石ですね」
「たまたまだ。いきなり体を動かしたせいで、身体があちこち痛いわ」
正直、破滅の剣のおかげだ。
勇者ではない俺にはコイツの能力を引き出せないが、チート武器なだけあって頑丈で刃こぼれしないし、切れ味も凄まじい。
ハイネがなにを言っても受け取らないので、倉庫に腐らせるよりはマシかと思い持ってきたが、正解だったようだ。
「それよりお前は別の部隊を指揮していただろ。そっちのストーンベアは倒したのか?」
「もちろんです! あそこにぶっ倒れております」
キアンが指さした先にはもう一体のストーンベアが、袈裟斬りで真っ二つになって倒れていた。
「やるじゃないか。ここまで強いとは驚いたぞ」
「えへへ、常に団長の座ねらい日々研鑽を積み重ねておりますので」
ライトブルーの髪をいじりながら、キアンが照れた様子でそう言う。
「あと二体いたはずだが、そっちの方はどうなった?」
「臨時顧問殿のサポートで兵士達が一匹殺ったみたいです。最後の一匹は……今終わったみたいですね」
キアンが言い終わると、ドーンと爆発音が鳴り火柱が上がる。
そちらに目を向けると、何故か上半身裸になっているエドワードが、剣を持った手を空に掲げてガッツポーズをとっていた。
「ぬうおおおおお! ついに、鎧ごとぶった斬ったどー!」
そう叫ぶエドワードは、一人だけ異様に泥だらけだった。
「流石です団長! はじめて見直しましたよ」
どうやら、わざと鎧を解除しないで戦っていたらしい。そのことを自慢して、珍しく部下の兵士たち称えられていた。
折角弱点を教えてやったのにそれを無視する意味が分からない。
「ちっ、ルドルフ様。次ストーンベアがでたら私に任せてください。必ずや、鎧ごとぶっ殺してやります」
遠目からエドワードを見ていたキアンが悔しそうにそうつぶやく。
いや、だからなんでそうなるんだ。
アホな真似してるからアイツだけ苦戦して泥だらけになってんだろ。
「駄目だ。この先も長いんだ。力は温存しておけ」
「くっ……命令なら仕方ないですね」
ここは既に獣深森の中層だ。
俺達が森に入ってから三日経過している。
ストーンベア以外の魔獣とも何度も交戦していた。
キアンもエドワードも威勢は良いが、度重なるゲリラ的な魔獣の襲撃に、明らかに疲労の色が見えている。
他の兵士達に関しては、程度の差はあるが、半数以上がどこかしらに傷を負っている状態だ。油断はできない。
しかし、引き返すつもりはない。
俺がゲームで発見したミスリル鉱石の場所まで半分以上までのとこまできている。
目的地まであと少しだ。
―――そして、二日後
俺達はついに目的地へと辿りつくのであった。
「ガルアアアアアアアア!」
スパンと快音が響き、切断された三本の爪が宙に舞って、手負いの獣の悲鳴がこだまする。
「引くぞ!」
「は、はいっ!」
俺はすぐさま、倒れていた兵士を起こして後ろにさがる。
「だれか、援護しろ!」
爪を弾き飛ばされたストーンベアが怒り狂って、おれに腕を振り下ろしてくる。
もの凄い迫力だ。
やはり、知識で知っているゲームと、実際に経験するのでは大違いだ。
だが、侮ってもらっちゃ困る。
おれだって、若い頃はそれなりに暴れてきたんだ。
「領主を舐めんな、くそクマがぁぁ!」
破滅の剣に雷の魔力を乗せて、渾身の一撃を放つ。
鮮血が飛び散る。
ストーンベアの太い腕が宙に舞った。
「いまだッ! やれえい!」
俺がそう言い切るが早いか、目にも止まらぬ速さで駆け出してきた女が、動きを止めているストーンベアの前に躍り出て、水の魔力を付与した剣を振った。
副団長のキアンだ。
「水刃!」
水の魔力は剣の切っ先から刀身の三倍以上の長まで伸びて、まるで水の鞭のようにしなり、ストーンベアを横一線に切断した。
散々暴れた魔獣は、上半身をドサリと地面に落として沈黙した。
トドメの一撃を決めた女が返り血を拭いながら、深く息を吐く。
「ふうー、流石にこうも数多いとしんどいな。あっ、ルドルフ様! 見ていましたかこのわたしの活躍を!」
「あ、ああ」
颯爽とストーンベアを倒したキアンが笑顔を見せる。
「どうです、私を団長に昇格する気になりましたか?」
こんな時にまで、わざわざ昇級のアピールをするとは、ブレないなこいつ。
「一応考えておこう。見事な一撃であった」
「ありがとうございます、日頃から訓練してきた甲斐がありましたわ! ルドルフ様も、魔獣の固い爪を一撃で弾き飛ばすとは流石ですね」
「たまたまだ。いきなり体を動かしたせいで、身体があちこち痛いわ」
正直、破滅の剣のおかげだ。
勇者ではない俺にはコイツの能力を引き出せないが、チート武器なだけあって頑丈で刃こぼれしないし、切れ味も凄まじい。
ハイネがなにを言っても受け取らないので、倉庫に腐らせるよりはマシかと思い持ってきたが、正解だったようだ。
「それよりお前は別の部隊を指揮していただろ。そっちのストーンベアは倒したのか?」
「もちろんです! あそこにぶっ倒れております」
キアンが指さした先にはもう一体のストーンベアが、袈裟斬りで真っ二つになって倒れていた。
「やるじゃないか。ここまで強いとは驚いたぞ」
「えへへ、常に団長の座ねらい日々研鑽を積み重ねておりますので」
ライトブルーの髪をいじりながら、キアンが照れた様子でそう言う。
「あと二体いたはずだが、そっちの方はどうなった?」
「臨時顧問殿のサポートで兵士達が一匹殺ったみたいです。最後の一匹は……今終わったみたいですね」
キアンが言い終わると、ドーンと爆発音が鳴り火柱が上がる。
そちらに目を向けると、何故か上半身裸になっているエドワードが、剣を持った手を空に掲げてガッツポーズをとっていた。
「ぬうおおおおお! ついに、鎧ごとぶった斬ったどー!」
そう叫ぶエドワードは、一人だけ異様に泥だらけだった。
「流石です団長! はじめて見直しましたよ」
どうやら、わざと鎧を解除しないで戦っていたらしい。そのことを自慢して、珍しく部下の兵士たち称えられていた。
折角弱点を教えてやったのにそれを無視する意味が分からない。
「ちっ、ルドルフ様。次ストーンベアがでたら私に任せてください。必ずや、鎧ごとぶっ殺してやります」
遠目からエドワードを見ていたキアンが悔しそうにそうつぶやく。
いや、だからなんでそうなるんだ。
アホな真似してるからアイツだけ苦戦して泥だらけになってんだろ。
「駄目だ。この先も長いんだ。力は温存しておけ」
「くっ……命令なら仕方ないですね」
ここは既に獣深森の中層だ。
俺達が森に入ってから三日経過している。
ストーンベア以外の魔獣とも何度も交戦していた。
キアンもエドワードも威勢は良いが、度重なるゲリラ的な魔獣の襲撃に、明らかに疲労の色が見えている。
他の兵士達に関しては、程度の差はあるが、半数以上がどこかしらに傷を負っている状態だ。油断はできない。
しかし、引き返すつもりはない。
俺がゲームで発見したミスリル鉱石の場所まで半分以上までのとこまできている。
目的地まであと少しだ。
―――そして、二日後
俺達はついに目的地へと辿りつくのであった。
121
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏芽みかん
ファンタジー
生まれながらに強大な魔力を持ち、聖女として大神殿に閉じ込められてきたレイラ。
けれど王太子に「身元不明だから」と婚約を破棄され、あっさり国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中出会った剣士ステファンと狼男ライガに拾われ、冒険者デビュー。おいしいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
一方、魔物が出るようになった王国では大司教がレイラの回収を画策。レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる