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21 魔力過剰体質
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「リュカをアレックスの側仕えにしたのは、リュカが魔力欠乏体質で、アレックスが魔力過剰体質だからなんだ。魔力過剰体質は王族の血筋からごくまれに出る体質で、定期的に魔力を発散させる必要がある。魔力量の多い状態が長時間続くと、魔力が暴走して周りに危険が及ぶ可能性もあるんだ」
アレックスは、だれかに頼まれてリュカを側仕えにしたと言っていた。それはウィルフリッドのことだったのだ。
アレックスは公爵家の令息だと聞いている。ウィルフリッドの従兄弟でもある。つまりはアレックスも王族の血を引いているということだ。
魔力暴走とは、魔力量の多い人間や魔法を学んでいない人間が意図せず魔法を使い、暴発させてしまうことだ。魔力量の少ないリュカには当然ながらそんな経験はないし、実際に見たこともない。魔力暴走に陥ると、物を壊したり、周りの人間にけがを負わせたりといった危険性があるらしい。
「アレックスがリュカに魔力を供給すれば、アレックスは魔力を消費できて、リュカも体調がよくなる。だから、アレックスにはリュカに魔力を供給するよう言っておいたんだけどね」
「おまえに言われなくても、魔力は供給している」
「えっ?」
思わず声を上げ、まじまじとアレックスの顔を見つめてしまった。一瞬だけ視線が合ったが、すぐに逸らされた。
「リュカには心当たりがないようだけど?」
あきれた声でウィルフリッドが問いかける。もちろん、リュカにはそんな覚えがなかった。
「心当たりがないのは当然だ。こいつが寝ているときに供給しているからな」
「……どうやって?」
「口移しで」
アレックスの返事に、ウィルフリッドは深いため息を吐き出した。
「いくら魔力を供給するためだとしても、それはマナー違反だよ、アレックス」
「寝ている人間に血を飲ませることはできないからな。口移ししかないだろう」
「そういう問題じゃないよ、あきれたな。……しかし、口移しでは魔力が足りないんじゃないか。リュカ、きみの体調は?」
「あの……俺、実はほかのひとにも魔力を供給してもらっていて」
「は?」
低い声を出したのは、アレックスだった。
「だれだ? まさか、ハルネスじゃないだろうな?」
「ち、違います。以前、アレックス隊長に話した幼なじみのテオドルです」
「あいつか……」
アレックスにとって、ハルネスはよほど嫌いな相手らしい。
「つまりは魔力が足りていなかったということだね。今後は、アレックスだけに供給してもらいなさい。魔法資格の持っていない相手から魔力を供給してもらって、なにかあったらことだからね」
「おい、ウィルフリッド」
リュカが返事できずにいると、アレックスがウィルフリッドを窘めるような声で呼んだ。
「アレックス。きみだって魔力がまだ余っているんだろう。毎晩のように寮を抜け出しているそうじゃないか。だから娼館通いなんて不名誉なことを言われるんだよ」
ウィルフリッドの指摘が図星だったのか、アレックスが眉間に皺を寄せる。
「話は以上だよ」
そう言って、紅茶を飲み干したウィルフリッドがソファから立ち上がる。リュカも見送るために腰を上げ、廊下に通じるドアへと近づいていったが、アレックスはソファに座ったままだった。
側近がドアに先回りしたところで振り向いたウィルフリッドが、ぞっとするほど冷やかな視線をアレックスに向ける。
「もし、きみがリュカに魔力を供給しないのなら、ほかの騎士にリュカを任せるからそのつもりで。――たとえば、私とかね」
それから、ウィルフリッドはにっこりと笑みを浮かべてリュカを見た。
「リュカ、アレックスがきみに十分な魔力をあたえないようなら、私のところにおいで。いつでもきみが私の部屋に入れるよう、手配しておくから」
「……あ、ありがとうございます」
頭を下げると、ウィルフリッドがリュカに顔を寄せ、耳打ちしてくる。
「アレックスが考えを改めないようなら、私の部屋へ行くと言ってみなさい」
「……はい、わかりました」
「アレックスに抱いてもらえるといいね」
からかうような声音にささやかれ、顔が熱くなった。
「かわいいね、リュカ」
今度は、アレックスにも聞こえるような声量で言う。
ウィルフリッドがなにを考えているのかまったく読めなかったが、彼にはなにか考えがあるのだろう。リュカの頭をやさしく撫でてから、ウィルフリッドは顔を離していった。
アレックスは、だれかに頼まれてリュカを側仕えにしたと言っていた。それはウィルフリッドのことだったのだ。
アレックスは公爵家の令息だと聞いている。ウィルフリッドの従兄弟でもある。つまりはアレックスも王族の血を引いているということだ。
魔力暴走とは、魔力量の多い人間や魔法を学んでいない人間が意図せず魔法を使い、暴発させてしまうことだ。魔力量の少ないリュカには当然ながらそんな経験はないし、実際に見たこともない。魔力暴走に陥ると、物を壊したり、周りの人間にけがを負わせたりといった危険性があるらしい。
「アレックスがリュカに魔力を供給すれば、アレックスは魔力を消費できて、リュカも体調がよくなる。だから、アレックスにはリュカに魔力を供給するよう言っておいたんだけどね」
「おまえに言われなくても、魔力は供給している」
「えっ?」
思わず声を上げ、まじまじとアレックスの顔を見つめてしまった。一瞬だけ視線が合ったが、すぐに逸らされた。
「リュカには心当たりがないようだけど?」
あきれた声でウィルフリッドが問いかける。もちろん、リュカにはそんな覚えがなかった。
「心当たりがないのは当然だ。こいつが寝ているときに供給しているからな」
「……どうやって?」
「口移しで」
アレックスの返事に、ウィルフリッドは深いため息を吐き出した。
「いくら魔力を供給するためだとしても、それはマナー違反だよ、アレックス」
「寝ている人間に血を飲ませることはできないからな。口移ししかないだろう」
「そういう問題じゃないよ、あきれたな。……しかし、口移しでは魔力が足りないんじゃないか。リュカ、きみの体調は?」
「あの……俺、実はほかのひとにも魔力を供給してもらっていて」
「は?」
低い声を出したのは、アレックスだった。
「だれだ? まさか、ハルネスじゃないだろうな?」
「ち、違います。以前、アレックス隊長に話した幼なじみのテオドルです」
「あいつか……」
アレックスにとって、ハルネスはよほど嫌いな相手らしい。
「つまりは魔力が足りていなかったということだね。今後は、アレックスだけに供給してもらいなさい。魔法資格の持っていない相手から魔力を供給してもらって、なにかあったらことだからね」
「おい、ウィルフリッド」
リュカが返事できずにいると、アレックスがウィルフリッドを窘めるような声で呼んだ。
「アレックス。きみだって魔力がまだ余っているんだろう。毎晩のように寮を抜け出しているそうじゃないか。だから娼館通いなんて不名誉なことを言われるんだよ」
ウィルフリッドの指摘が図星だったのか、アレックスが眉間に皺を寄せる。
「話は以上だよ」
そう言って、紅茶を飲み干したウィルフリッドがソファから立ち上がる。リュカも見送るために腰を上げ、廊下に通じるドアへと近づいていったが、アレックスはソファに座ったままだった。
側近がドアに先回りしたところで振り向いたウィルフリッドが、ぞっとするほど冷やかな視線をアレックスに向ける。
「もし、きみがリュカに魔力を供給しないのなら、ほかの騎士にリュカを任せるからそのつもりで。――たとえば、私とかね」
それから、ウィルフリッドはにっこりと笑みを浮かべてリュカを見た。
「リュカ、アレックスがきみに十分な魔力をあたえないようなら、私のところにおいで。いつでもきみが私の部屋に入れるよう、手配しておくから」
「……あ、ありがとうございます」
頭を下げると、ウィルフリッドがリュカに顔を寄せ、耳打ちしてくる。
「アレックスが考えを改めないようなら、私の部屋へ行くと言ってみなさい」
「……はい、わかりました」
「アレックスに抱いてもらえるといいね」
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「かわいいね、リュカ」
今度は、アレックスにも聞こえるような声量で言う。
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