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さぞ機嫌が悪いのだろうと思っていたが、翌朝のアレックスはいつも通りの態度だった。リュカのほうは、アレックスの顔を見ているだけで昨夜のあれやこれやを思い出してしまい、まったく落ち着かないというのに。
食堂で朝食を摂ってから詰所へ向かうアレックスを見送り、特別寮の前で待っていたテオドルと落ち合った。
ひと気のない場所へ移動したあと、昨日あったできごとを打ち明けると、テオドルはしばらくのあいだ固まって黙り込んでいた。いつも落ち着いている彼が動揺した様子を見せるのはめずらしかったが、当事者であるリュカでさえいまだに夢の中にいるような気分なのだから無理もない。
「アレックス隊長に抱いてもらえたら、そのときは第二王子殿下に話をしにいくよ。きっと、アレックス隊長の役に立たない俺は騎士団を追い出されてしまうと思うけど。……それまでお父様への報告は待ってほしいんだ」
「……でも、そのままサイファートから魔力を供給されていれば、おまえはここにいられるんじゃないのか? 第二王子の望みだと知れば、旦那様も承諾するだろ」
確かにリュカの行為はウィルフリッドの望みに沿ったことだが、父に対価を求められて彼が応じるとは思えない。第二王子に直接取り入るのが無理だとわかったら、父は公爵家のサイファートを標的とするだろう。
「俺がいやなんだ。お父様の思惑にアレックス隊長を巻き込みたくない。迷惑をかけたくないんだ。……それに、アレックス隊長に男娼として抱かれるのはいやだ」
「おまえ……」
「アレックス隊長のことが好きなんだ。これが叶わない想いだってわかってる。終わったら、ちゃんとお父様の命令にも従う。男娼としてたくさん稼ぐ代わりに、メアリーを自由にしてもらえるようお願いするつもりだ。だから、もう少しだけ待ってほしい。……迷惑かけて、ごめん」
こちらを見据えるテオドルの顔は、怒りで真っ赤に染まっている。リュカの選択は、きっとテオドルを怒らせるだろうと思っていた。
「ふざけるなよ。そんなこと、迷惑なんて思ってねえよ。おまえは、俺がただ旦那様の命令通りに動いてるだけだと思ってたのか?」
「ううん、思ってないよ。いつも、お父様の目を盗んで助けてくれてる。でも……テオドルはもっと騎士団にいたかったよね。俺の都合で振り回してごめん」
テオドルが、騎士の訓練や側仕えの仕事とまじめに向き合っていることを知っている。幼いころから騎士にあこがれていたのを知っている。
「俺はうれしいんだよ。ずっと旦那様の命令通りになんでも従ってたおまえが、はじめて自分の望みを口にした。はじめて俺に願いを言ってくれた」
「テオドル……」
「そんなの、叶えてやるに決まってるだろ。俺も、俺のできることをやってやるよ」
「うん。ありがとう。でも、無理しないでね」
テオドルはきっと父を説得するつもりなのだろう。あの父がそう簡単に意思を曲げるとは思えなかったが、その気持ちがうれしい。
もしテオドルが望むなら、騎士団に残してもらえるようウィルフリッドに頼んでみようと思った。
食堂で朝食を摂ってから詰所へ向かうアレックスを見送り、特別寮の前で待っていたテオドルと落ち合った。
ひと気のない場所へ移動したあと、昨日あったできごとを打ち明けると、テオドルはしばらくのあいだ固まって黙り込んでいた。いつも落ち着いている彼が動揺した様子を見せるのはめずらしかったが、当事者であるリュカでさえいまだに夢の中にいるような気分なのだから無理もない。
「アレックス隊長に抱いてもらえたら、そのときは第二王子殿下に話をしにいくよ。きっと、アレックス隊長の役に立たない俺は騎士団を追い出されてしまうと思うけど。……それまでお父様への報告は待ってほしいんだ」
「……でも、そのままサイファートから魔力を供給されていれば、おまえはここにいられるんじゃないのか? 第二王子の望みだと知れば、旦那様も承諾するだろ」
確かにリュカの行為はウィルフリッドの望みに沿ったことだが、父に対価を求められて彼が応じるとは思えない。第二王子に直接取り入るのが無理だとわかったら、父は公爵家のサイファートを標的とするだろう。
「俺がいやなんだ。お父様の思惑にアレックス隊長を巻き込みたくない。迷惑をかけたくないんだ。……それに、アレックス隊長に男娼として抱かれるのはいやだ」
「おまえ……」
「アレックス隊長のことが好きなんだ。これが叶わない想いだってわかってる。終わったら、ちゃんとお父様の命令にも従う。男娼としてたくさん稼ぐ代わりに、メアリーを自由にしてもらえるようお願いするつもりだ。だから、もう少しだけ待ってほしい。……迷惑かけて、ごめん」
こちらを見据えるテオドルの顔は、怒りで真っ赤に染まっている。リュカの選択は、きっとテオドルを怒らせるだろうと思っていた。
「ふざけるなよ。そんなこと、迷惑なんて思ってねえよ。おまえは、俺がただ旦那様の命令通りに動いてるだけだと思ってたのか?」
「ううん、思ってないよ。いつも、お父様の目を盗んで助けてくれてる。でも……テオドルはもっと騎士団にいたかったよね。俺の都合で振り回してごめん」
テオドルが、騎士の訓練や側仕えの仕事とまじめに向き合っていることを知っている。幼いころから騎士にあこがれていたのを知っている。
「俺はうれしいんだよ。ずっと旦那様の命令通りになんでも従ってたおまえが、はじめて自分の望みを口にした。はじめて俺に願いを言ってくれた」
「テオドル……」
「そんなの、叶えてやるに決まってるだろ。俺も、俺のできることをやってやるよ」
「うん。ありがとう。でも、無理しないでね」
テオドルはきっと父を説得するつもりなのだろう。あの父がそう簡単に意思を曲げるとは思えなかったが、その気持ちがうれしい。
もしテオドルが望むなら、騎士団に残してもらえるようウィルフリッドに頼んでみようと思った。
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