【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)

文字の大きさ
26 / 35

26 いやです ※

 その夜も、アレックスがリュカに性器を入れることはなかった。
 深いくちづけで魔力を吹き込まれながら、身体中を触られ、舐められ、甘噛みされた。
 アレックスは魔力が馴染んだら共鳴反応が落ち着くだろうと言っていたが、リュカの身体はずっと熱く、アレックスからあたえられる刺激であっさりと登り詰めた。リュカばかりが達していて、最後にアレックスの性器をリュカが手で扱く、という昨夜と同じ流れになった。

 ふと目を覚ますと、部屋の中は暗く、まだ夜は明けていなかった。魔力の供給が終わったあと、またそのままアレックスのベッドで寝てしまったらしい。
 足元のほうがぼんやりと明るいことに気づき、身体を起こしてそちらを見ると、窓辺に置かれたランプに火が灯っていた。
 アレックスは着替えている最中のようで、シャワーを浴びたあとで寝間着に着替えているのかと思ったが、彼が袖を通していたのは私服だった。騎士団でなにかあったのなら制服を着るはずなので、こんな夜更けにも関わらず私用で外出するつもりなのだ。そうわかって、行き先にも思い当たった。

「……アレックス隊長、どこへ行くんですか?」
「ああ、起こしたか。見送りは不要だから寝ていろ」
「もしかして、娼館へ行くんですか?」

 沈黙は肯定だった。
 思い返してみれば、昨夜も今夜もアレックスは一度しか射精していない。一度では発散する魔力の量が足りていなかったのだ。

「おい、なにをしている」

 アレックスの前で膝をつき、着替えの途中でベルトが緩んだままの腰に触れると、低い声が落ちてきた。

「足りなかったんですよね?」
「だとしても、おまえがそんなことをする必要はない」
「どうしてですか? 俺が娼婦のようにふるまえないからですか? 俺が男だからですか? 気が乗らないのなら目を閉じていてください。大丈夫です、俺にもできますから」

 アレックスの腰に触れていた手を下着の中に忍ばせ、まだ兆していない性器を取り出す。それを見てアレックスは眉をつりあげた。

「やめろと言っている」

 地を這うような低い声で言って、アレックスがリュカの肩を押しのける。

「いやです」

 アレックスがほかの相手を抱くと考えただけで、胸が押しつぶされそうになる。こんなのは勝手な嫉妬で、リュカには止める権利などないのかもしれない。
 でも、もしアレックスが経験の薄いリュカに手加減をしていて、代わりに娼婦を相手に魔力を発散しようとしているのなら、リュカにもまだできることがある。アレックスを引き留めることができる。
 じっと水色の瞳を見据えていると、アレックスは深いため息を吐き出した。

「そこまで言うならやってみろ。ただし、よくなければおまえを魔法で眠らせてでも娼館へ行くからな」
「……はい、わかりました」

 リュカが頷くのを見て、アレックスがベッドへ腰を下ろす。好きにしろ、とでも言いたげにベッドへ両手をつき、挑発するような笑みを浮かべた。だが、その笑みはすぐに崩れた。

「……っ」

 いままでのようにリュカが手で施すと思っていたのか、性器に顔を近づけたリュカを見て、アレックスが驚きに目を見開く。
 最初は性器を手で持ち上げ、口内に溜めた唾液を塗りつけるようにして全体を丹念に舐めた。それから、舌をちろちろと動かして先端を舐め、同時に指で幹を扱く。

「……おい、どこで覚えてきた?」

 そう尋ねてくるアレックスの声は、かなり低かった。こちらを見下ろす瞳は怒りに染まっている。アレックスの性器は徐々に硬くなっているので、あまりにもリュカの口淫が下手で怒っているというわけではなさそうだった。

「秘密、です」

 性器の先端にくちづけてからリュカが言うと、アレックスはますます眉をつりあげ、睨みつけてきた。性器が反応していることがうれしくなって思わず笑ってしまったが、そのせいで余計に怒らせてしまったらしい。

「はじめてで不安だったのですが、反応してもらえてうれしいです」
「……はじめて、だと?」

 アレックスは未経験だと偽られたことに怒っていたのかもしれないが、リュカは口淫を実践で覚えたわけではない。娼館でたったひとりだけ仲のよかった男娼が、王子を誘惑するなら必要だろうと教えてくれた技だった。果物や野菜を性器に見立てて練習したので、本物の性器を舐めるのはこれがはじめてだ。

「はい、はじめてです。……気持ちよくありませんか?」
「いや……悪くない」
「よかったです」

 リュカが目を細めて笑うと、どうしてかアレックスは目を見開いた。
 アレックスが気持ちいいのなら、うれしいに決まっている。いつもたくさん気持ちよくしてもらっている分、少しでも返したかった。このくらいじゃ足りない。もっと、気持ちよくさせたい。
 水色の瞳から怒りが消えたのを確認して、リュカはふたたび性器を咥え込んだ。くびれの部分までを口に含み、舌先でくぼみを刺激しながら、ときおり先端を吸い上げる。手の中で次第に性器が張り詰めていって、舌先にぬるりとした感触と塩味を感じた。

「はあ……っ」

 口から性器を離すと、リュカの唇と性器のあいだで透明な糸が伸びて、舌先でそれを舐め取った途端、アレックスが熱いため息を吐き出した。艶めかしい吐息と苦悶の表情にリュカの背中はぞくりと震え、腰に甘いものが響く。

「んう……っ、ん……」

 ――アレックス隊長をもっと気持ちよくさせたい。もっと、もっと、気持ちよくさせたい。

 そう思いながら、血管の浮きはじめた性器をもう一度奥まで飲み込んでいった。張り詰めた性器を頬張ると口の中がいっぱいで苦しくなったが、アレックスが興奮しているというよろこびのほうがずっと大きい。
 最初は歯を立てないよう慎重に顔を前後させるだけで精一杯だったが、次第に慣れてくると細かな動きもできるようになった。性器の裏側に舌を押し当て、顔を引くときは性器を吸い上げるように。ときおり指で双球に刺激を加えるのも忘れない。
 教えてもらったことを思い出しながら、ひとつひとつの動きを丁寧に心がけ、やさしく愛撫していった。

「ふあ……ッ、ん……う、ぐ……っ」

 抜き差しはおのずと速くなり、次第に深く性器を飲み込んでいく。熱く硬い性器に口内を擦られるのが気持ちよくて、夢中で性器をしゃぶった。
 口の中に自然と溜まった唾液に先走りが混じり、いやらしい匂いと味でいっぱいになる。自分の口から響く淫らな水音や、ときおりアレックスの唇から漏れる声に、耳も刺激されていく。

「……っ、は」

 リュカの髪を掻き回すアレックスの指先が、耳を掠めていく。もっと、もっと、と深く咥え込んでいるうち、性器の先端が喉の入り口に当たり、リュカの身体が跳ね上がる。思わず息を吸い込んでしまい、性器を締めつけた途端、アレックスが掠れた声を吐き出した。

「もういい、離せ……っ!」

 アレックスの限界が近いのだ。緩く首を振りながら性器の抜き差しを続け、そのまま出してください、と視線だけで訴える。ふたりの視線がかちあった瞬間、口の中で性器が膨らみ、熱い粘液が放たれた。

「く……ッ!」
「――ん、うッ!」

 低く呻く声がずくんと腰に響き、同時にリュカも絶頂していた。口内で跳ねる性器から吐き出される精液を、一滴たりともこぼしたくない。口からあふれる前にそれを嚥下すると、アレックスが血相を変えて叫んだ。

「おい、吐き出せ! おまえにはまだ早い!」

 なにが早いのかわからないが、もう遅い。リュカはすべてを飲み込んでからゆっくりと性器を口から引き抜き、最後に先端のくぼみに溜まった分まで吸い上げてから唇を離した。さらには精液で汚れた性器に舌を這わせ、きれいに舐め取る。

「お、まえ……飲んだのか?」

 アレックスに尋ねられた次の瞬間、異変が起こった。
 どくん、と心臓がひときわ大きく跳ね上がり、ばくばくと心音がうるさく鳴り出す。汗が次から次へと滲み出し、身体が熱く、息が苦しい。
 荒い呼吸を繰り返していると、アレックスに肩をつかまれた。

「おい」
「ああああああ――ッ!」

 強く肩をつかまれたわけではなく、ただ肩に手を置かれただけだ。それなのに、びりびりと身体に痺れが走って、リュカはふたたび絶頂していた。

「くそ、やはりな。急激に魔力を摂取しすぎたせいだ」

 アレックスに身体を抱え上げられ、ベッドの上に乗せられる。たったそれだけのことが刺激になって、口から喘ぎがこぼれ続ける。

「あッ、あ……んあ……」
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。