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ここだけの話
しおりを挟む「えーっ、あー……勘?」
シンが適当に誤魔化すと、エリシアの視線はますます厳しくなった。かなり適当すぎる言い訳だったのも、エリシアが気に食わなかったのだろう。
完全に疑いが強くなっている。これはまずい。仕方なくエリシアを手招きして、耳元でささやく。
「これは内々の話だから言うなよ? ミリア様の話では、学園に人を鑑定できる神官を招致するそうなんだ」
「……それってかなりレアスキルよ? かなり高位の神官じゃない!」
「しーっ! だから声を落として!」
思わず声が上ずったエリシアに、シンは人差し指を顔の前に突き出して、静かにしてほしいとジェスチャーでも伝える。
シンもスマホで鑑定できてしまうし、目の前の人物でなくても調べられてしまうチート系道具があるが、本来なら稀少な能力なのだ。
「そんなすごい方がお招きされるなんて」
「うん、ちょうど僕らがドーベルマン伯爵家にお招きされる日だから。それで、例の二人を調べるみたい。学園がすごい騒ぎになるだろうから、巻き込まれないようにってミリア様の配慮だよ」
「それは、うん、なるわね。二人の神子様は学園でも話題だし、本物でも偽物でも大問題だわ。どちらかは違うだろうし……」
エリシアも難しい顔をしているが、納得してくれたようだ。変に野次馬根性のあるタイプでなくてよかった。見に行きたいなんて言われたらどうしようと思っていたのだ。
事の重大性を理解し、エリシアはシンの曖昧な態度にも納得した。これは大声で話していい内容ではない。
「さてと、そろそろ部活に戻らなきゃ! 可愛い子たちが待っているわ!」
そう言ってエリシアは立ち上がった。箱に白マンドレイクを突っ込み、ぎゅうぎゅうに詰めて何とか全部入れた。それを持って、エリシアの大好きな可愛い子に会いに行く。
彼女に手を振って見送ったシンに、ずっと隠れて聞いていたレニたちが近づいていく。
「シン君、言っちゃってよかったんですか?」
レニが心配そうに聞くが、シンなりに人は選んでいる。無闇に話したりしない。
「エリシアは大丈夫だよ。あの子もマラミュートのロリコンに絡まれているから、トラブルはこれ以上抱えたくないだろうし」
「う、それは……確かに、そうですけど」
エリシアの悲惨な状態を思い出して、レニは口ごもる。
「それにやけにエリシアのことを気にしていたんだよね。ミリア様。気のせいかもだけど」
現在、兄のセブランが詐欺に遭ってロリコンとの縁談が持ち上がりかけているエリシア。
そのロリコンの生産地であるマラミュート公爵家は、責任を持って対処してくれるはずだ。勝手に家名を使われ他所のご令嬢に迫ったのだから、マラミュート公爵家としても沽券にかかわるだろう。
(ミリア様、シン君のママさん気分やもんなー。カノジョ候補は気になるやろ)
(レニとは仲が良いでござるが、どーもあの二人は恋愛面にドライでござるからなー)
互いに安全地帯でいて欲しいと思っているのだろう。爛れ腐った人間関係の修羅場を見た者同士、通ずるものがあるのだ。
ビャクヤとカミーユは、余計なことを言わないでお口にチャックだ。アイコンタクトのみで済ませる。
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