極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん

文字の大きさ
12 / 22
王子様との関係

デートのお誘い

しおりを挟む
 秦斗君と付き合い始めてから、丸二週間経った。

 その最初の一週間は、私にとっては壮絶な一週間だった。

 ひそひそ話や冷ややかすぎる視線、根も葉もない噂。

 それは二週間経った今でも収まっている気配はないけど、最初の一週間と比べたら格段に減っていると思う。

 私の気のせいかもしれないけど……あはは。

 気のせいじゃなくても、気のせいだと無理にでも自分を納得させなきゃ毎日を無事に過ごせない気がしている。

 あんまり気にしないほうが、精神衛生上いいと思うし……。

 今のところ、登下校以外で秦斗君と関わっていないのが救いだと思っている。

 もし秦斗君とクラスまで同じだったら……そう考えるだけで胃が痛くなってくる。

 注目されることなんて慣れていないのに、これ以上一緒となると……。

 ……考えるだけでも怖くなってきた。

「結衣さん、帰ろうか。」

「う、うんっ……。」

 今日も秦斗君は、私を呼びに来てくれる。

 これは仮交際を始めた時からで、大丈夫だよ?と言っても却下されちゃうんだ。

 どうして頑なに却下するのかは分からないし、秦斗君が考えることは私にはさっぱりだ。

 私の頭が幼稚なだけか、秦斗君が心配性なのか……私にはよく分からない。

「そういえばさ、結衣さんって遊園地とか興味ある?」

「遊園地……? うん、あるよっ。」

 帰り道尋ねられた質問に、正直に軽く頷いてみせる。

 興味がある……というよりかは、好きっていうほうが近い。

 幼い頃から、行く回数こそ少なかったけど遊園地は大好きだ。

 遊園地って思いっきり遊べるし、いろんな未知の体験ができるしっ。

 そうすると秦斗君はふふっと頬を綻ばせると、嬉しそうに目を細めた。

「よかったらなんだけど、土曜日一緒に遊園地行かない? 知り合いから新しくできた遊園地のチケットもらってさ、誰と一緒に行こうか迷ってたところなんだ。」

「え、それ……私でいいの?」

 誘ってもらえたのは嬉しいし、もちろん行きたいとは思っている。

 けどその前に、疑問が口を突いて出てしまった。

 ……私なんかと一緒に行っても、楽しくないと思うよ。

 自分でこんな悲しいこと言いたくないけど、それは分かりきっていることだ。

「結衣さんじゃなきゃダメ。」

 そう勝手に一人で沈んで落ち込んだ私に、間髪入れずに言われた言葉。

 短い言葉だったけど、ぐわっと心を大きく揺さぶられる。

 私じゃなきゃ、か。

 秦斗君がどんな気持ちで言ってくれたのか知りたいところではあるけど、さすがにそこまで考えちゃうのはダメだよね。

 聞いてしまったら、秦斗君の今までの気持ちを台無しにしてしまう。私に気を遣わせないような言い回しをしてくれている優しい秦斗君に、そんな態度は取りたくない。

 ……それに、秦斗君の言葉からは安心できるオーラが滲み出ている。

 私を必要としてくれてるみたいで、一緒に楽しんでもいいって言われてるみたいで……。

 秦斗君がよければ、ぜひ行かせてほしい!

「うん、私……秦斗君と一緒に遊園地行きたいっ!」

「ふふ、そう言ってくれてありがとう。」

 ふわっと微笑んだ秦斗君を見ると、ぽかぽか温かい気持ちになってくる。

 ……――ドキッ

 え……?

 秦斗君の笑顔を見たと同時に、急にドキドキと心臓が高鳴りだした。

 な、何で……こんなドキドキするんだろう……?

 これまでにも秦斗君にドキドキすることはあったけど、今回のはいつもと違うような……。

「結衣さん?」

「っ、ど、どうしたのっ?」

「いや……なんだかすごく悩んでる感じだったから、大丈夫かなって思って……」

 そう言って、不安な影を落とした秦斗君。

 わっ、心配かけちゃってる……!

 秦斗君に余計な心配をかけないように、私は慌てて口早に弁解した。

「うん、大丈夫!」

「本当?」

「ほ、ほんとだよっ?」

 まだ心配だと言いそうな秦斗君に、何度も大きく頷く。

 秦斗君ってば心配性なのかな? やたらと私のこと気にしてくれるし……。

 そうだったらちょっと嬉しいかも、ふふっ。まるで私のことを一番に見てくれてるみたいで。

 ……って、あれ?

 わ、私、何考えて……っ。

 “見てくれてる”なんて自意識過剰すぎだし、そんなこと今まで思ったことなかったのに。

 私、少し変だ。

 さっきからだけど、秦斗君といると自分が自分じゃないみたい。

 今だって、普段の私じゃ考えられないようなことを思ってしまってる。

 ……何でこんなこと、思ってるんだろ。

 心にもやもやってフィルターがかかってる感じがして、定まらないこの気持ち。

 曖昧で正体が分からない、そんなふわふわした気持ちのはずなのに。

 ――少しだけ、幸せな気持ちになるのはどうしてだろう。

 初めて抱く感情に、私は戸惑うことしかできない。

 この気持ちに正解を出したいと、ここで初めて強く思った。



 翌日、早速私は紗代ちゃんに相談することにした。

 今まで男の子とおでかけ……とかしたことないから、何をどうすればいいのかさっぱり。

 右も左も分からないから、私よりも遥かに女子力が高い紗代ちゃんに聞いてみようと思ったんだ。

「氷堂とデートするのね~。ふふふ、せっかくなんだから楽しんできなさいよ~。」

「や、やっぱりデートになるのかな……。」

「そりゃあそうでしょ。男子と出かけるのはデート以外の何物でもないでしょ。」

 もぐもぐとメロンパンを頬張りつつあっけらかんと、紗代ちゃんは言ってのける。

 実は昨日、私もネットでちょこっと調べてみたんだ。男の子と出かけることについて。

 でもネットにはいろんな考えの人がいて、どれを信じればいいか私には全く分からなかった。

 だから、信頼してる紗代ちゃんからこうやって情報を得ようとしている。

 ……だけどどの記事にも共通して出てきた言葉は、“デート”。

 それまでは単なるお出かけだと思ってたから、変に意識してしまう。

「デートって言われても……私、どうすればいいと思う? こういうの初めてで何にも分からなくて……」

「まぁそっか。結衣って男子と接点なかったし、そりゃそうなるよね。」

 なるほどねーと納得して、完全に理解したと言わんばかりの表情になる紗代ちゃん。

 そんな表情をした紗代ちゃんは、顎に手を当てて少しだけ考え込む仕草をする。

 その直後、はっと何かを思いついたように紗代ちゃんは目を見開いて手を打った。

「そういうことなら、あたしがプロデュースしてあげよっか? 今日にでも一緒に服買いに行こうよっ、アドバイスくらいならできるし!」

「い、いいのっ!?」

「もっちろん! このあたしにドーンと任せなさい!」

 紗代ちゃん、頼もしい……!!

 まさかプロデュースしてもらえるなんて……紗代ちゃんはどれだけ心が寛大なのだろう。

 でも紗代ちゃんに手助けしてもらえるのは、私からしたらとてもありがたい。それはもう、ありがたすぎるくらいに。

「それじゃあねっ、今日はコーデ決めよっか! それから軽めのメイクとかしていって……」

 もうスケジュールを練ってくれているのか、スマホを開いて何やら呟きながらフリックしている。

 その時おもむろに紗代ちゃんは「あ。」と声を上げた。

「そういや結衣、メガネどうする?」

「……これは、つけておきたいかも。」

 紗代ちゃんの疑問に、少し後ろめたい気持ちを抱えて返す。

 度が入ってる本当のメガネじゃないから、秦斗君と仮とはいえ付き合ってるから……メガネは外したほうがいいと分かってる。

 ……けどまだ、勇気が出ない。

「そっか、りょーかいっ。」

「……ありがとう紗代ちゃん。」

 ぱっと肯定してくれた紗代ちゃんに、感謝で胸が詰まる。

 私はこの、紗代ちゃんのさりげない気遣いが本当に好きだ。

「紗代ちゃんのこと、やっぱり大好きっ。」

「え? な~に~よ~? そんなこと言ってくれちゃって~。あたしのほうが結衣好きだもんねー!」

「わっ……! さ、紗代ちゃんっ!?」

「んーっ、マジで結衣可愛すぎでしょ~! こんないい子を氷堂になんかあげたくないわ~っ!!」

 勢いよく抱き着かれて転びそうになったけど、ギリギリでなんとか耐える。

 そしてお返しと言うように私もぎゅっと抱きしめ返した。

 ……こういうところに救われてるよ、私は。

 私の味方は間違いなく紗代ちゃんだ。それはきっと揺るがない。

「んじゃ早速、放課後ショッピングモール行きますか!」

「分かったっ!」

 大きな声で高らかに宣言する紗代ちゃんにつられ、元気に返事する。

 どうなるかまだ不安だけど、楽しみだなぁっ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

処理中です...