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第11話 侍女以上、恋未満
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クロエが目を覚ましたのは、夜明けより少し前だった。
胸の奥に薄いざわめきが残り、夢と現の境がはっきりしない。
けれど、今の胸騒ぎは夢のせいではない気がしてならなかった。
妙に静かな朝。鳥の鳴き声が遠く霞んで聞こえる。
窓を開けると、外には朝霧のような白い靄が漂っていた。
夜の気配がまだ残っている王城――どこか異様な静けさ。
寝衣のまま部屋を出ようとしたところで、廊下の端に人影が見えた。
「……リディア?」
声を掛けると、彼女は驚いたように振り返った。
リディアは王妃付きの侍女で、普段は温和で気立ての良い女性だ。
「クロエ様、もうお目覚めに?」
「ええ。どうかされたのですか? まだ夜明け前なのに。」
「……下層の回廊で騒ぎがあったようなのです。警備の兵が慌ただしく動いておりました。私は念のために王妃陛下のお部屋の様子を確認して……」
「騒ぎ、ですか。」
その言葉に、昨日ノエルが言っていたことが頭をよぎる。
「――ルシアン公爵家が何かを仕掛けるかもしれない。」
まさか、それが現実になり始めているのではないか。
クロエは急ぎ身支度を整えると、王妃の私室へ向かった。
幸い王妃セレーネはすでに起きており、平静を保っていた。
クロエの顔を見るなり、彼女は微笑した。
「心配して来てくれたのね。ありがとう、クロエ。けれど大丈夫よ。夜明け前に侵入者らしき影があったものの、すでに兵によって防がれたわ。」
「侵入者……!」
「ええ。しかし目的はまだ分かっていません。宰相府が調べているところでしょう。」
クロエの背筋に冷たいものが走った。
この城に忍び込むなど、ただの盗賊ではあり得ない。
しかもノエルの執務棟に近い区域――まるで殿下を狙ったようだった。
「殿下のご無事をお確かめします。」
クロエは深く礼をしてその場を飛び出した。
執務棟に近づくと、兵たちの声があちこちで響く。
「侵入経路は確認したか!」「西の塔の警備を二倍に増やせ!」
その合間を縫って中へ駆け込むと、ノエルは既に目を覚まし、騎士団長と状況を報告していた。
「……ああ、クロエ。君も来たのか。」
一瞬彼女の顔を見ると、ノエルの表情が和らぐ。
「ご無事でなによりです、殿下。」
「心配をかけましたね。だが、何かがおかしい。」
ノエルが机の上に広げた地図を指差す。
「侵入者は南門から入った形跡を残している。だが、門番は“誰も通らなかった”と証言している。つまり、協力者が内部にいる可能性がある。」
「内部に……?」
その言葉が重く響く。
ノエルの視線が彼女に向き直る。
「クロエ、王妃陛下の侍女として多くの人と接している君に頼みたい。誰か怪しい動きをしている者がいれば報告してほしい。」
「承知いたしました。」
「ただし、危険を感じたらすぐ知らせてください。何が起きても、一人で抱え込んではいけません。」
その言葉に、胸が震えた。
彼が彼女を気遣う声には、職務を超えた温かさがあった。
「殿下……ご心配ばかりおかけしてしまいますね。」
「心配して当然だ。君は僕の侍女で、僕にとって――」
そこでノエルは言葉を切った。
数秒の間が流れる。
「――王城の誰よりも信頼している存在だ。」
その声音が低く、静かに響く。
クロエは思わず目を伏せた。
信頼。それは誇りであり、何よりも危うい響きを持つ言葉。
「ありがとうございます。私も、殿下をお支えできることを誇りに思っております。」
彼の瞳がわずかに揺れた。
触れれば壊れてしまいそうな静寂が流れる。
その後、侵入者について王城全体が騒然となり、午前中いっぱい捜査と聴取が続いた。
だが、誰がどうやって城に侵入したのか、具体的な形跡は見つからなかった。
そして昼を過ぎたころ、クロエは思いがけずルシアンが宰相府で出頭してきたという噂を耳にする。
「責任を感じて自ら申し出たらしい」と、他の侍女が囁いた。
――そんなことがあるはずがない。
胸の奥で警鐘が鳴る。
彼がわざわざ現れるなど、何か意図があるに違いない。
沈みかけた午後、執務室に戻ると、ノエルが椅子に腰を掛けていた。
机の上の報告書はすべて読まれ、蝋燭の火だけが揺らめいている。
「殿下、休まれましたか?」
「少しも。……公爵令息が城に来ていたと聞きました。」
「やはりご存じでしたか。」
「彼のような人間は、後悔を盾にして己の欲を正当化する。君の名を使って王宮に踏みとどまられては困る。」
ノエルはゆっくり立ち上がる。
その瞳の奥には怒りと、それを抑える理性が見えた。
「殿下、私はもう――」
「分かっている。君は彼に揺らいでいない。」
一瞬で心を読まれたように、クロエは息を飲む。
ノエルが一歩近づく。距離が詰まるたび、心臓が強く打った。
「けれど、彼にとって君は今でも“勝てなかった光”なんです。彼はそれを今度は奪おうとするかもしれない。」
「私を……奪う?」
「君を形ある存在としてではなく、“過去の自分を取り戻す象徴”として。」
ノエルの言葉が、どこか悲しげだった。
クロエは拳を胸の前で握る。
「私は誰にも奪われません。もう逃げません。どんな過去があっても、私を見ているのは――」
言葉を止めた瞬間、ノエルの瞳が自分を捉える。
二人の視線が交錯し、周囲の空気が静まり返った。
「誰が、ですか?」
低い問いかけ。それに答える声が震える。
「……殿下です。」
次の瞬間、ノエルはゆっくりと手を伸ばした。
肩に触れるか触れないかという距離で止まり、そのまま囁く。
「この国の王太子が、侍女ひとりに心を奪われる。……いけないことだと思いますか?」
クロエは息を呑み、目を閉じた。
「もしそれがいけないことだとしても、私はきっと、否定できません。」
彼の指先が髪をすくい上げる。微かな香りが混じる。
その距離のまま、二人の影が揺れた。
けれど、ノエルはそれ以上踏み込まなかった。
「……すまない。ここで踏み越えたら、君を守れなくなる。」
彼の手が静かに下りる。
「私は殿下の侍女です。殿下の誇りを汚すことはできません。」
「ならば、約束しましょう。」
「約束?」
「この国が平穏を取り戻したら、その時改めて言います。立場や身分を越えて、君に“ひとりの男として”言いたいことを。」
クロエの目に、涙が光った。
けれどその涙は痛みではなく、未来への予感だった。
「……私は、その日を信じます。」
「それでいい。」
窓の外で夜風が鳴る。
遠くの塔で鐘が鳴り、人々のざわめきが薄れていく。
その静けさの中で、二人はただ見つめ合った。
誰にも言えない想い。
それでも確かに胸の奥で息づく炎。
王太子と侍女――越えられぬはずの境界に、ひとつの温もりが芽生えていた。
恋と呼ぶにはまだ脆く、けれどもう後戻りのできない想い。
それが、この夜の回廊に淡く灯っていた。
続く
胸の奥に薄いざわめきが残り、夢と現の境がはっきりしない。
けれど、今の胸騒ぎは夢のせいではない気がしてならなかった。
妙に静かな朝。鳥の鳴き声が遠く霞んで聞こえる。
窓を開けると、外には朝霧のような白い靄が漂っていた。
夜の気配がまだ残っている王城――どこか異様な静けさ。
寝衣のまま部屋を出ようとしたところで、廊下の端に人影が見えた。
「……リディア?」
声を掛けると、彼女は驚いたように振り返った。
リディアは王妃付きの侍女で、普段は温和で気立ての良い女性だ。
「クロエ様、もうお目覚めに?」
「ええ。どうかされたのですか? まだ夜明け前なのに。」
「……下層の回廊で騒ぎがあったようなのです。警備の兵が慌ただしく動いておりました。私は念のために王妃陛下のお部屋の様子を確認して……」
「騒ぎ、ですか。」
その言葉に、昨日ノエルが言っていたことが頭をよぎる。
「――ルシアン公爵家が何かを仕掛けるかもしれない。」
まさか、それが現実になり始めているのではないか。
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幸い王妃セレーネはすでに起きており、平静を保っていた。
クロエの顔を見るなり、彼女は微笑した。
「心配して来てくれたのね。ありがとう、クロエ。けれど大丈夫よ。夜明け前に侵入者らしき影があったものの、すでに兵によって防がれたわ。」
「侵入者……!」
「ええ。しかし目的はまだ分かっていません。宰相府が調べているところでしょう。」
クロエの背筋に冷たいものが走った。
この城に忍び込むなど、ただの盗賊ではあり得ない。
しかもノエルの執務棟に近い区域――まるで殿下を狙ったようだった。
「殿下のご無事をお確かめします。」
クロエは深く礼をしてその場を飛び出した。
執務棟に近づくと、兵たちの声があちこちで響く。
「侵入経路は確認したか!」「西の塔の警備を二倍に増やせ!」
その合間を縫って中へ駆け込むと、ノエルは既に目を覚まし、騎士団長と状況を報告していた。
「……ああ、クロエ。君も来たのか。」
一瞬彼女の顔を見ると、ノエルの表情が和らぐ。
「ご無事でなによりです、殿下。」
「心配をかけましたね。だが、何かがおかしい。」
ノエルが机の上に広げた地図を指差す。
「侵入者は南門から入った形跡を残している。だが、門番は“誰も通らなかった”と証言している。つまり、協力者が内部にいる可能性がある。」
「内部に……?」
その言葉が重く響く。
ノエルの視線が彼女に向き直る。
「クロエ、王妃陛下の侍女として多くの人と接している君に頼みたい。誰か怪しい動きをしている者がいれば報告してほしい。」
「承知いたしました。」
「ただし、危険を感じたらすぐ知らせてください。何が起きても、一人で抱え込んではいけません。」
その言葉に、胸が震えた。
彼が彼女を気遣う声には、職務を超えた温かさがあった。
「殿下……ご心配ばかりおかけしてしまいますね。」
「心配して当然だ。君は僕の侍女で、僕にとって――」
そこでノエルは言葉を切った。
数秒の間が流れる。
「――王城の誰よりも信頼している存在だ。」
その声音が低く、静かに響く。
クロエは思わず目を伏せた。
信頼。それは誇りであり、何よりも危うい響きを持つ言葉。
「ありがとうございます。私も、殿下をお支えできることを誇りに思っております。」
彼の瞳がわずかに揺れた。
触れれば壊れてしまいそうな静寂が流れる。
その後、侵入者について王城全体が騒然となり、午前中いっぱい捜査と聴取が続いた。
だが、誰がどうやって城に侵入したのか、具体的な形跡は見つからなかった。
そして昼を過ぎたころ、クロエは思いがけずルシアンが宰相府で出頭してきたという噂を耳にする。
「責任を感じて自ら申し出たらしい」と、他の侍女が囁いた。
――そんなことがあるはずがない。
胸の奥で警鐘が鳴る。
彼がわざわざ現れるなど、何か意図があるに違いない。
沈みかけた午後、執務室に戻ると、ノエルが椅子に腰を掛けていた。
机の上の報告書はすべて読まれ、蝋燭の火だけが揺らめいている。
「殿下、休まれましたか?」
「少しも。……公爵令息が城に来ていたと聞きました。」
「やはりご存じでしたか。」
「彼のような人間は、後悔を盾にして己の欲を正当化する。君の名を使って王宮に踏みとどまられては困る。」
ノエルはゆっくり立ち上がる。
その瞳の奥には怒りと、それを抑える理性が見えた。
「殿下、私はもう――」
「分かっている。君は彼に揺らいでいない。」
一瞬で心を読まれたように、クロエは息を飲む。
ノエルが一歩近づく。距離が詰まるたび、心臓が強く打った。
「けれど、彼にとって君は今でも“勝てなかった光”なんです。彼はそれを今度は奪おうとするかもしれない。」
「私を……奪う?」
「君を形ある存在としてではなく、“過去の自分を取り戻す象徴”として。」
ノエルの言葉が、どこか悲しげだった。
クロエは拳を胸の前で握る。
「私は誰にも奪われません。もう逃げません。どんな過去があっても、私を見ているのは――」
言葉を止めた瞬間、ノエルの瞳が自分を捉える。
二人の視線が交錯し、周囲の空気が静まり返った。
「誰が、ですか?」
低い問いかけ。それに答える声が震える。
「……殿下です。」
次の瞬間、ノエルはゆっくりと手を伸ばした。
肩に触れるか触れないかという距離で止まり、そのまま囁く。
「この国の王太子が、侍女ひとりに心を奪われる。……いけないことだと思いますか?」
クロエは息を呑み、目を閉じた。
「もしそれがいけないことだとしても、私はきっと、否定できません。」
彼の指先が髪をすくい上げる。微かな香りが混じる。
その距離のまま、二人の影が揺れた。
けれど、ノエルはそれ以上踏み込まなかった。
「……すまない。ここで踏み越えたら、君を守れなくなる。」
彼の手が静かに下りる。
「私は殿下の侍女です。殿下の誇りを汚すことはできません。」
「ならば、約束しましょう。」
「約束?」
「この国が平穏を取り戻したら、その時改めて言います。立場や身分を越えて、君に“ひとりの男として”言いたいことを。」
クロエの目に、涙が光った。
けれどその涙は痛みではなく、未来への予感だった。
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「それでいい。」
窓の外で夜風が鳴る。
遠くの塔で鐘が鳴り、人々のざわめきが薄れていく。
その静けさの中で、二人はただ見つめ合った。
誰にも言えない想い。
それでも確かに胸の奥で息づく炎。
王太子と侍女――越えられぬはずの境界に、ひとつの温もりが芽生えていた。
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それが、この夜の回廊に淡く灯っていた。
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