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第13話 王太子の正体
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南の塔から上がった警鐘は、王城中を震わせた。
廊下の端まで走り抜ける兵の足音が響く。
昼間の光が霞み、空が曇り始める。
不穏な気配が、まるで亀裂のように城内の空気を切り裂いていた。
クロエは王妃のもとへ駆け込む途中、侍女たちが怯え声で指示を交わすのを見た。
「塔の上に黒装束が二人! 兵が追ってます!」
「外の門が閉じられました、出られません!」
王妃への急行路を確保しながら、クロエの心臓は早鐘を打つ。
――また侵入者。狙いは一体何?
「陛下、私です、クロエです!」
王妃の居室に駆け込むと、セレーネ王妃は護衛と侍女に囲まれていた。
「クロエ、無事だったのね。」
「はい、陛下。ノエル殿下は南の塔へ向かわれました。どうかこの場をお守りください。」
王妃は静かに頷き、クロエの手を握る。
「ノエル……やはり危険な場所へ向かってしまうのね。」
その呟きは、不安と誇りの入り混じった母の言葉だった。
クロエは部屋を出ると、心の中の恐怖に抗えず足を止めた。
――もし、殿下が。
胸を締めつける不安が、理性を上回る。
気づけば彼女の足は再び走り出していた。
南の塔は王城でも最も高く古い部分。
石造の階段が長く続き、上へ行くほど風が冷たくなる。
兵士が倒れている。腕を切られ、昏倒していた。
クロエは駆け寄り、ほとんど反射的にその手から剣を拾い上げた。
「殿下!」
叫び声が木霊し、最上階への扉を突き破ると、そこに広がるのは風と血と火の匂いだった。
石壁の上、黒装束の男が二人。
その中央に立つノエルの背中。
王太子である彼が剣を抜き、逆光に銀の刃を光らせていた。
「っ、殿下……!」
「来るな、クロエ!」
彼が振り返る。だがその声は鋭い怒号ではなく、明確な守りの命令だった。
ほんの一瞬、視線が交錯する。
その瞬間、黒装束の一人が足場を蹴って襲いかかった。
「ノエル!」
咄嗟に叫び、クロエは拾った剣を構えた。
ノエルの動きが速い。一閃で相手の刃を弾き、逆に喉元へ切っ先を突きつける。
だがもう一人がノエルの背後を狙って動いた。
「殿下、背後です!」
警告と同時に、クロエの身体が勝手に前へ飛んでいた。
刃が彼女の腕をかすめ、衣服が裂ける。
血の臭いが風に混じる。
「クロエ!」
ノエルが声を張り上げ、激しく剣を振るう。
鋼がぶつかり、火花が散る。
瞬間、侵入者の一人が壁際へ跳んだ。
「後悔するがいい、王太子……。真実が暴かれる日が、近い。」
意味深な言葉を残し、黒装束は煙のように崩れ落ちた。
短剣に仕込まれた毒だった。それを知るとノエルは目を伏せる。
一拍遅れて、塔の入り口から兵士たちが駆け上ってきた。
ノエルは剣を納め、指示を出す。
「負傷者を運べ。だが、この件は外へ漏らすな。敵は内にもいる。」
兵が敬礼し、すぐに動き始める。
クロエは石の床に片膝をついた。
腕から滴る血が冷えていく。
ノエルが手早く外套を脱ぎ、彼女の腕を覆う。
「大丈夫か。深い傷ではないな。」
「はい……殿下こそ、お怪我は。」
「心配はいらない。」
しかし、彼の肩口にもうっすらと切傷が見える。
「殿下、どうして自ら前線に立たれるのですか。警護に任せていれば――」
「私の責任だからだ。」
その言葉は短く、だが重く響いた。
ノエルは風に舞う灰色の煙を見つめながら、静かに呟く。
「君にも隠していたことがある。……もう隠しておくことはできないだろう。」
クロエは驚いたように顔を上げる。
「隠していたこと、とは……?」
「君は、旅人ノエルを覚えているだろう。初めて会った、あの夜のこと。」
「もちろんです。」
ノエルはそっと視線を逸らした。
「私は、王家の第一王子として表向きには“生まれから王城にいた”ことになっている。だが真実は違う。」
クロエは息を飲んだ。彼はゆっくり続けた。
「十五年前、宰相派の陰謀により、私は幼くして命を狙われた。護衛によって城外へ避難させられ、しばらく身分を偽って生きていた。その時の偽名が“ノエル・フェイ”だ。民として過ごし、彼らの生活を知り、そして――君に出会った。」
クロエの瞳が揺れる。
「……それでは、あの時、既に殿下は……?」
「王族だった。君には嘘をついた。」
ノエルはわずかに口元を歪めた。
「だが、あの夜だけは私もただの人間でいたかった。身分に縛られず、君のように真っ直ぐに生きる人に惹かれた。」
「では今までの優しさは……同情だったのですか?」
クロエの問いは震えていた。
ノエルの目が真っ直ぐに彼女を射抜く。
「違う。むしろ、君に恐れていた。君を見るたびに“王である前にただの男になってしまうのではないか”と怖くなった。」
風が塔の石を打ちつけ、二人の間を過ぎる。
沈黙が何よりも雄弁だった。
クロエは小さく嗤うように息を漏らした。
「そうですね。私は殿下をただの旅人と思っていました。けれど、もし最初から真実を知っていたら、こんな気持ちにはならなかったかもしれません。」
「それでも、真実を言うなら、私はあの夜からずっと君に惹かれていた。」
「でも、もう言葉では通じませんわ。殿下は王太子。私は侍女。越えてはいけない境界がある。」
ノエルは一歩踏み出した。外套の裾が風で揺れ、彼の影がクロエを包む。
「わかっている。それでも、越えたいと思ってしまう。」
クロエの心臓が確かに跳ねた。
血の匂いと風の音、遠くで鳴る鐘がすべて混ざり合って、世界が狭くなる。
「殿下……どうしてそんな危険を冒してまで塔へ?」
ノエルは低く答えた。
「奴らの狙いは王族でも王妃でもない。――私と、“君”だ。」
「私……?」
「フェルナンド公爵家が宰相派と結び、王家を揺るがそうとしている。だが、彼らにとって最も邪魔なのは、君の存在だ。君が私に影響を与え、私が君を信じている。それが彼らを脅かしている。」
クロエは目を見開く。言葉が出ない。
ノエルは深く息を吐き、手のひらを彼女の頭に添えた。
「君を危険に巻き込んでしまった。けれど私は、この世界のどこにいても君を守ると誓う。これだけは誤魔化しではない。真実だ。」
その手の温かさに、胸の奥の恐れが溶けていく。
「殿下……。」
「クロエ。私の秘密を知ったからといって、離れないでほしい。」
「誰が離れると言いました?」
クロエはかすかに微笑んだ。
「最初に救ってくださったのは、身分のない“ノエル様”でした。だから私は――王太子ノエルであっても、信じます。」
その瞬間、ノエルの瞳が微かに潤んだ。
「君は、いつも想像の外を生きる。」
「それが私の取り柄です。」
風が静まり、塔の上に陽が差し込んだ。
彼女の横顔が金色の光に包まれ、まるで希望そのもののように映る。
だがその平穏を裂くように、下の階から怒号が響いた。
「殿下! 宰相府の者どもが塔を包囲しています! 命令が出ています、“王太子を拘束せよ”と!」
「なんだと……?」
ノエルが顔を上げる。クロエも息を呑む。
宰相派が、ついに動いたのだ。
塔の外では、鎧のぶつかり合う音がこだましていた。
ノエルは剣を構え、クロエの前に立つ。
「これが、連鎖の始まりだ。……君を巻き込んでしまうかもしれない。それでも、一緒にいてくれるか?」
クロエは静かに頷いた。
「ええ、殿下。これが私の“侍女としての務め”です。」
風が強く吹き抜け、灰色の雲の隙間から陽光が差し込む。
王太子と侍女。真実を知った二人の運命がいま、渦の中心で動き出した。
続く
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昼間の光が霞み、空が曇り始める。
不穏な気配が、まるで亀裂のように城内の空気を切り裂いていた。
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「はい、陛下。ノエル殿下は南の塔へ向かわれました。どうかこの場をお守りください。」
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――もし、殿下が。
胸を締めつける不安が、理性を上回る。
気づけば彼女の足は再び走り出していた。
南の塔は王城でも最も高く古い部分。
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兵士が倒れている。腕を切られ、昏倒していた。
クロエは駆け寄り、ほとんど反射的にその手から剣を拾い上げた。
「殿下!」
叫び声が木霊し、最上階への扉を突き破ると、そこに広がるのは風と血と火の匂いだった。
石壁の上、黒装束の男が二人。
その中央に立つノエルの背中。
王太子である彼が剣を抜き、逆光に銀の刃を光らせていた。
「っ、殿下……!」
「来るな、クロエ!」
彼が振り返る。だがその声は鋭い怒号ではなく、明確な守りの命令だった。
ほんの一瞬、視線が交錯する。
その瞬間、黒装束の一人が足場を蹴って襲いかかった。
「ノエル!」
咄嗟に叫び、クロエは拾った剣を構えた。
ノエルの動きが速い。一閃で相手の刃を弾き、逆に喉元へ切っ先を突きつける。
だがもう一人がノエルの背後を狙って動いた。
「殿下、背後です!」
警告と同時に、クロエの身体が勝手に前へ飛んでいた。
刃が彼女の腕をかすめ、衣服が裂ける。
血の臭いが風に混じる。
「クロエ!」
ノエルが声を張り上げ、激しく剣を振るう。
鋼がぶつかり、火花が散る。
瞬間、侵入者の一人が壁際へ跳んだ。
「後悔するがいい、王太子……。真実が暴かれる日が、近い。」
意味深な言葉を残し、黒装束は煙のように崩れ落ちた。
短剣に仕込まれた毒だった。それを知るとノエルは目を伏せる。
一拍遅れて、塔の入り口から兵士たちが駆け上ってきた。
ノエルは剣を納め、指示を出す。
「負傷者を運べ。だが、この件は外へ漏らすな。敵は内にもいる。」
兵が敬礼し、すぐに動き始める。
クロエは石の床に片膝をついた。
腕から滴る血が冷えていく。
ノエルが手早く外套を脱ぎ、彼女の腕を覆う。
「大丈夫か。深い傷ではないな。」
「はい……殿下こそ、お怪我は。」
「心配はいらない。」
しかし、彼の肩口にもうっすらと切傷が見える。
「殿下、どうして自ら前線に立たれるのですか。警護に任せていれば――」
「私の責任だからだ。」
その言葉は短く、だが重く響いた。
ノエルは風に舞う灰色の煙を見つめながら、静かに呟く。
「君にも隠していたことがある。……もう隠しておくことはできないだろう。」
クロエは驚いたように顔を上げる。
「隠していたこと、とは……?」
「君は、旅人ノエルを覚えているだろう。初めて会った、あの夜のこと。」
「もちろんです。」
ノエルはそっと視線を逸らした。
「私は、王家の第一王子として表向きには“生まれから王城にいた”ことになっている。だが真実は違う。」
クロエは息を飲んだ。彼はゆっくり続けた。
「十五年前、宰相派の陰謀により、私は幼くして命を狙われた。護衛によって城外へ避難させられ、しばらく身分を偽って生きていた。その時の偽名が“ノエル・フェイ”だ。民として過ごし、彼らの生活を知り、そして――君に出会った。」
クロエの瞳が揺れる。
「……それでは、あの時、既に殿下は……?」
「王族だった。君には嘘をついた。」
ノエルはわずかに口元を歪めた。
「だが、あの夜だけは私もただの人間でいたかった。身分に縛られず、君のように真っ直ぐに生きる人に惹かれた。」
「では今までの優しさは……同情だったのですか?」
クロエの問いは震えていた。
ノエルの目が真っ直ぐに彼女を射抜く。
「違う。むしろ、君に恐れていた。君を見るたびに“王である前にただの男になってしまうのではないか”と怖くなった。」
風が塔の石を打ちつけ、二人の間を過ぎる。
沈黙が何よりも雄弁だった。
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「そうですね。私は殿下をただの旅人と思っていました。けれど、もし最初から真実を知っていたら、こんな気持ちにはならなかったかもしれません。」
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その手の温かさに、胸の奥の恐れが溶けていく。
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クロエはかすかに微笑んだ。
「最初に救ってくださったのは、身分のない“ノエル様”でした。だから私は――王太子ノエルであっても、信じます。」
その瞬間、ノエルの瞳が微かに潤んだ。
「君は、いつも想像の外を生きる。」
「それが私の取り柄です。」
風が静まり、塔の上に陽が差し込んだ。
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「殿下! 宰相府の者どもが塔を包囲しています! 命令が出ています、“王太子を拘束せよ”と!」
「なんだと……?」
ノエルが顔を上げる。クロエも息を呑む。
宰相派が、ついに動いたのだ。
塔の外では、鎧のぶつかり合う音がこだましていた。
ノエルは剣を構え、クロエの前に立つ。
「これが、連鎖の始まりだ。……君を巻き込んでしまうかもしれない。それでも、一緒にいてくれるか?」
クロエは静かに頷いた。
「ええ、殿下。これが私の“侍女としての務め”です。」
風が強く吹き抜け、灰色の雲の隙間から陽光が差し込む。
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続く
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