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第二十話 遅すぎた理解
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第二十話 遅すぎた理解
王太子は、王城のバルコニーに立ち、沈みゆく夕日を見つめていた。
かつては、この時間帯に、次の会議の段取りや、未処理の案件について、自然と報告が入ってきた。
今は、違う。
報告は来る。
だが、それは「起きてしまった後」のものばかりだ。
「……また、ですか」
背後から、控えめな声がかかる。
「主要商会が、
来季の取引量を縮小する、と」
王太子は、振り返らなかった。
「理由は?」
「帝国ルートの方が、
予測が立てやすい、とのことです」
予測。
それは、
ネフェリアが、何度も口にしていた言葉だった。
――未来が見えない取引は、
人を遠ざけます。
当時は、
理屈として理解したつもりでいた。
だが、
それを「仕組み」として国に落とし込むことは、
してこなかった。
「……すべて、
私の判断か」
王太子は、低く呟く。
責任転嫁をする気はない。
だが、
どうしても、
一つの名前が、頭から離れなかった。
ネフェリア。
彼女は、
王国を壊したわけではない。
ただ、
壊れないように支えていただけだ。
それを、
自分たちは、
「支え」ではなく、
「当たり前」だと勘違いしていた。
その夜、
王太子は、久しぶりに、新しい婚約者と食事を共にしていた。
「……最近、お疲れのようですね」
彼女は、
控えめに、
それでも気遣うように言った。
「ああ」
短く答える。
彼女は、
何も悪くない。
役割を背負わされ、
比較され、
それでも懸命に振る舞っている。
問題は、
彼女を選んだことではない。
選んだあと、
何を失ったのかを、
正しく認識していなかったことだ。
「……もし」
王太子は、
言葉を探すように、
口を開く。
「もし、
以前のやり方が、
間違っていたとしたら」
新しい婚約者は、
戸惑いながらも、
小さく首を振った。
「殿下が、
間違っていたとは思いません」
「ただ……」
彼女は、
言葉を選びながら続ける。
「できる人に、
頼りすぎていただけ、
なのかもしれません」
その一言が、
王太子の胸に、
深く突き刺さった。
頼りすぎた。
違う。
頼っていた自覚すら、
なかったのだ。
一方、帝国。
ネフェリアは、
宰相府の執務室で、
新しい計画書に目を通していた。
「王国の縮小分を、
こちらで吸収できます」
官僚が報告する。
「ただし、
急激な拡大は避けたい、と」
「ええ」
ネフェリアは、
すぐに頷く。
「無理に広げれば、
同じ過ちを繰り返します」
彼女は、
王国の失速を、
反面教師として見ていた。
自分が、
かつて置かれていた立場を、
もう二度と、
誰にも背負わせないために。
その夜、
ネフェリアは、
ふと、
窓の外を見上げた。
帝都の灯りは、
静かに、
だが確実に広がっている。
「……理解は、
いつも遅れてやってくるのですね」
彼女は、
誰にともなく、
そう呟いた。
王太子が、
ようやく理解したこと。
それは、
彼女が去る前から、
何度も示していた現実だった。
だが、
理解が遅れた以上、
選択も、
やり直せない。
第二十話は、
“理解したときには、
もう取り戻せない”
という事実が、
王太子自身の言葉として、
胸に落ちた回だった。
ざまぁは、
怒号でも断罪でもない。
遅すぎた理解――
それこそが、
この物語の核心だった。
王太子は、王城のバルコニーに立ち、沈みゆく夕日を見つめていた。
かつては、この時間帯に、次の会議の段取りや、未処理の案件について、自然と報告が入ってきた。
今は、違う。
報告は来る。
だが、それは「起きてしまった後」のものばかりだ。
「……また、ですか」
背後から、控えめな声がかかる。
「主要商会が、
来季の取引量を縮小する、と」
王太子は、振り返らなかった。
「理由は?」
「帝国ルートの方が、
予測が立てやすい、とのことです」
予測。
それは、
ネフェリアが、何度も口にしていた言葉だった。
――未来が見えない取引は、
人を遠ざけます。
当時は、
理屈として理解したつもりでいた。
だが、
それを「仕組み」として国に落とし込むことは、
してこなかった。
「……すべて、
私の判断か」
王太子は、低く呟く。
責任転嫁をする気はない。
だが、
どうしても、
一つの名前が、頭から離れなかった。
ネフェリア。
彼女は、
王国を壊したわけではない。
ただ、
壊れないように支えていただけだ。
それを、
自分たちは、
「支え」ではなく、
「当たり前」だと勘違いしていた。
その夜、
王太子は、久しぶりに、新しい婚約者と食事を共にしていた。
「……最近、お疲れのようですね」
彼女は、
控えめに、
それでも気遣うように言った。
「ああ」
短く答える。
彼女は、
何も悪くない。
役割を背負わされ、
比較され、
それでも懸命に振る舞っている。
問題は、
彼女を選んだことではない。
選んだあと、
何を失ったのかを、
正しく認識していなかったことだ。
「……もし」
王太子は、
言葉を探すように、
口を開く。
「もし、
以前のやり方が、
間違っていたとしたら」
新しい婚約者は、
戸惑いながらも、
小さく首を振った。
「殿下が、
間違っていたとは思いません」
「ただ……」
彼女は、
言葉を選びながら続ける。
「できる人に、
頼りすぎていただけ、
なのかもしれません」
その一言が、
王太子の胸に、
深く突き刺さった。
頼りすぎた。
違う。
頼っていた自覚すら、
なかったのだ。
一方、帝国。
ネフェリアは、
宰相府の執務室で、
新しい計画書に目を通していた。
「王国の縮小分を、
こちらで吸収できます」
官僚が報告する。
「ただし、
急激な拡大は避けたい、と」
「ええ」
ネフェリアは、
すぐに頷く。
「無理に広げれば、
同じ過ちを繰り返します」
彼女は、
王国の失速を、
反面教師として見ていた。
自分が、
かつて置かれていた立場を、
もう二度と、
誰にも背負わせないために。
その夜、
ネフェリアは、
ふと、
窓の外を見上げた。
帝都の灯りは、
静かに、
だが確実に広がっている。
「……理解は、
いつも遅れてやってくるのですね」
彼女は、
誰にともなく、
そう呟いた。
王太子が、
ようやく理解したこと。
それは、
彼女が去る前から、
何度も示していた現実だった。
だが、
理解が遅れた以上、
選択も、
やり直せない。
第二十話は、
“理解したときには、
もう取り戻せない”
という事実が、
王太子自身の言葉として、
胸に落ちた回だった。
ざまぁは、
怒号でも断罪でもない。
遅すぎた理解――
それこそが、
この物語の核心だった。
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