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第二十一話 静かな転換点
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第二十一話 静かな転換点
帝都の朝は、変わらず淡々としていた。
だが、その日、宰相府の空気には、わずかな緊張が混じっていた。
「本日の議題は、こちらです」
セドリックが示したのは、一枚の地図だった。
王国と帝国を結ぶ交易路。
そして、その周辺に引かれた、いくつもの新しい線。
「王国側の縮小に伴い、
中立都市が動き始めています」
官僚たちが頷く。
「帝国か、
あるいは第三国か」
「どちらに付くか、
様子見、というところでしょう」
ネフェリアは、地図を静かに見つめていた。
線の重なり。
空白になった地域。
「……転換点ですね」
彼女の声は、落ち着いている。
「はい」
セドリックは、率直に答えた。
「帝国が前に出れば、
勢力図は一気に変わります」
「ですが」
ネフェリアは、視線を上げる。
「前に出る必要は、ありません」
官僚の一人が、意外そうに眉を上げた。
「……介入しない、と?」
「正確には、
“押さえすぎない”です」
ネフェリアは、指先で地図をなぞる。
「王国が失速した原因の一つは、
判断を一箇所に集めすぎたこと」
「帝国まで、
同じ構造を取る必要はありません」
静かな沈黙。
だが、その言葉は、
宰相府の人間には、
十分すぎるほど伝わっていた。
「では」
セドリックが、確認する。
「我々は、
選択肢を整える側に徹する、と」
「ええ」
ネフェリアは、頷く。
「選ばれるかどうかは、
相手に委ねる」
「その方が、
長く続きます」
帝国は、
王国の失敗を、
“機会”として消費しない。
それが、
最大の違いだった。
一方、王国。
王太子のもとに、
中立都市からの通知が届いていた。
「……帝国と、
直接交渉に入る、だと」
文面は丁寧だ。
だが、はっきりと意思は示されている。
「我が国を通さずに、
ということか」
王太子は、
深く息を吐いた。
拒否する理由はない。
だが、
引き留める材料も、
もう残っていない。
「……選ばれなかった、か」
その言葉が、
以前よりも、
重く感じられた。
王国は、
まだ崩れてはいない。
だが、
中心ではなくなった。
帝国では。
ネフェリアは、
新たな案件の資料を閉じる。
そこに、
王国の名はある。
だが、
主語ではない。
「……これでいい」
彼女は、
小さく呟く。
王国を、
見下す必要はない。
救う必要も、
証明する必要もない。
ただ、
それぞれが、
選んだ結果を、
受け取るだけだ。
帝国は、
静かに前へ進む。
王国は、
遅れて、
その背中を見る。
第二十一話は、
“勢力が動いたのではなく、
中心が移った”
という事実を描く回だった。
ざまぁは、
一気に起きない。
だが、
この静かな転換点を越えた先で、
取り戻せるものは、
もう、ほとんど残っていない。
帝都の朝は、変わらず淡々としていた。
だが、その日、宰相府の空気には、わずかな緊張が混じっていた。
「本日の議題は、こちらです」
セドリックが示したのは、一枚の地図だった。
王国と帝国を結ぶ交易路。
そして、その周辺に引かれた、いくつもの新しい線。
「王国側の縮小に伴い、
中立都市が動き始めています」
官僚たちが頷く。
「帝国か、
あるいは第三国か」
「どちらに付くか、
様子見、というところでしょう」
ネフェリアは、地図を静かに見つめていた。
線の重なり。
空白になった地域。
「……転換点ですね」
彼女の声は、落ち着いている。
「はい」
セドリックは、率直に答えた。
「帝国が前に出れば、
勢力図は一気に変わります」
「ですが」
ネフェリアは、視線を上げる。
「前に出る必要は、ありません」
官僚の一人が、意外そうに眉を上げた。
「……介入しない、と?」
「正確には、
“押さえすぎない”です」
ネフェリアは、指先で地図をなぞる。
「王国が失速した原因の一つは、
判断を一箇所に集めすぎたこと」
「帝国まで、
同じ構造を取る必要はありません」
静かな沈黙。
だが、その言葉は、
宰相府の人間には、
十分すぎるほど伝わっていた。
「では」
セドリックが、確認する。
「我々は、
選択肢を整える側に徹する、と」
「ええ」
ネフェリアは、頷く。
「選ばれるかどうかは、
相手に委ねる」
「その方が、
長く続きます」
帝国は、
王国の失敗を、
“機会”として消費しない。
それが、
最大の違いだった。
一方、王国。
王太子のもとに、
中立都市からの通知が届いていた。
「……帝国と、
直接交渉に入る、だと」
文面は丁寧だ。
だが、はっきりと意思は示されている。
「我が国を通さずに、
ということか」
王太子は、
深く息を吐いた。
拒否する理由はない。
だが、
引き留める材料も、
もう残っていない。
「……選ばれなかった、か」
その言葉が、
以前よりも、
重く感じられた。
王国は、
まだ崩れてはいない。
だが、
中心ではなくなった。
帝国では。
ネフェリアは、
新たな案件の資料を閉じる。
そこに、
王国の名はある。
だが、
主語ではない。
「……これでいい」
彼女は、
小さく呟く。
王国を、
見下す必要はない。
救う必要も、
証明する必要もない。
ただ、
それぞれが、
選んだ結果を、
受け取るだけだ。
帝国は、
静かに前へ進む。
王国は、
遅れて、
その背中を見る。
第二十一話は、
“勢力が動いたのではなく、
中心が移った”
という事実を描く回だった。
ざまぁは、
一気に起きない。
だが、
この静かな転換点を越えた先で、
取り戻せるものは、
もう、ほとんど残っていない。
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