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第三十話 遅れて届く後悔
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第三十話 遅れて届く後悔
王国に、久しぶりに「返事を求める書簡」が届いた。
差出人は、中立都市連合。
文面は丁寧で、感情を抑えたものだったが、
一文だけ、やけに重い行があった。
「本件につき、貴国の最終的なご判断を、三日以内にお知らせください」
三日。
それは、
王国にとっては短すぎる期限だった。
外務局では、すぐに会議が招集された。
「三日では、
全局の合意は不可能です」
「前例も確認しなければなりません」
「帝国の条件と整合性を――」
次々に挙がる、もっともな意見。
王太子は、
その様子を、静かに見ていた。
「……三日後に、
何を返す?」
問いは、
短く、鋭い。
「“検討中”ですか」
誰も答えない。
王太子は、
ゆっくりと立ち上がった。
「三日後に、
我々が出せるのは、
“完全な案”ではない」
「だが」
一拍置く。
「“何もしない返事”を、
出す時間は、
もう残されていない」
官僚の一人が、
不安そうに口を開く。
「殿下……
もし、
この返事が失敗だったら」
「責任は、
私が取る」
即答だった。
その場に、
小さなざわめきが走る。
責任を引き受ける、という言葉が、
この国で、
どれほど久しく聞かれていなかったか。
会議は、
これまでとは違う緊張感で進んだ。
完璧さを削る。
条件を絞る。
撤退条項を入れる。
それでも、
全員が納得する案には、
ならない。
だが――
返事は、形になった。
一方、帝国。
同じ書簡は、
すでに二日前に届いていた。
「返事は?」
「当日中に出しました」
帝国の官僚は、
淡々と報告する。
「条件は?」
「変更なし。
ただし、王国の判断を待つ旨を明記しています」
宰相府で、
ネフェリアは、
その一文を確認していた。
「……待つ、と書いたのですね」
「はい」
「それで十分です」
彼女は、
それ以上、何も言わなかった。
帝国は、
返事を出した。
あとは、
待つかどうかを、
選ぶだけだ。
三日後。
王国からの返書は、
期限ぎりぎりで届いた。
中立都市の代表は、
それを読み、
しばらく黙り込んだ。
「……遅れたが、
内容は、悪くない」
側近が、
慎重に言う。
「帝国の案とも、
大きな矛盾はありません」
代表は、
深く息を吐いた。
「だが」
視線を上げる。
「なぜ、
これを、
最初に出せなかった」
その問いに、
答えはない。
王国では、
返事を出した直後、
奇妙な静けさが訪れていた。
達成感。
安堵。
だが、
どこかに、
拭えない感覚が残る。
王太子は、
執務室で一人、
窓の外を見ていた。
「……間に合った、
のか?」
問いは、
自分自身に向けたものだった。
返事は出した。
責任も、引き受けた。
だが――
それが、
信頼を取り戻す一歩かどうかは、
まだ、分からない。
同じ夜、帝国。
ネフェリアは、
簡単な報告を受けていた。
「王国、期限内に返答しました」
「そうですか」
それだけだ。
評価も、
落胆もない。
「……遅れて届く後悔は、
返事よりも、
重いものです」
彼女は、
静かに灯りを落とす。
「ですが、
後悔が届いた国だけが、
次の選択を、
誤らずに済む」
王国は、
ようやく返事を出した。
だが、
返事を待つ相手の数は、
もう、
以前ほど多くはない。
それでも――
ゼロではない。
遅れて届いた後悔が、
まだ、
意味を持つうちに。
この国が、
次に何を選ぶのか。
その重さを、
今度こそ、
理解できるかどうかが、
問われていた。
王国に、久しぶりに「返事を求める書簡」が届いた。
差出人は、中立都市連合。
文面は丁寧で、感情を抑えたものだったが、
一文だけ、やけに重い行があった。
「本件につき、貴国の最終的なご判断を、三日以内にお知らせください」
三日。
それは、
王国にとっては短すぎる期限だった。
外務局では、すぐに会議が招集された。
「三日では、
全局の合意は不可能です」
「前例も確認しなければなりません」
「帝国の条件と整合性を――」
次々に挙がる、もっともな意見。
王太子は、
その様子を、静かに見ていた。
「……三日後に、
何を返す?」
問いは、
短く、鋭い。
「“検討中”ですか」
誰も答えない。
王太子は、
ゆっくりと立ち上がった。
「三日後に、
我々が出せるのは、
“完全な案”ではない」
「だが」
一拍置く。
「“何もしない返事”を、
出す時間は、
もう残されていない」
官僚の一人が、
不安そうに口を開く。
「殿下……
もし、
この返事が失敗だったら」
「責任は、
私が取る」
即答だった。
その場に、
小さなざわめきが走る。
責任を引き受ける、という言葉が、
この国で、
どれほど久しく聞かれていなかったか。
会議は、
これまでとは違う緊張感で進んだ。
完璧さを削る。
条件を絞る。
撤退条項を入れる。
それでも、
全員が納得する案には、
ならない。
だが――
返事は、形になった。
一方、帝国。
同じ書簡は、
すでに二日前に届いていた。
「返事は?」
「当日中に出しました」
帝国の官僚は、
淡々と報告する。
「条件は?」
「変更なし。
ただし、王国の判断を待つ旨を明記しています」
宰相府で、
ネフェリアは、
その一文を確認していた。
「……待つ、と書いたのですね」
「はい」
「それで十分です」
彼女は、
それ以上、何も言わなかった。
帝国は、
返事を出した。
あとは、
待つかどうかを、
選ぶだけだ。
三日後。
王国からの返書は、
期限ぎりぎりで届いた。
中立都市の代表は、
それを読み、
しばらく黙り込んだ。
「……遅れたが、
内容は、悪くない」
側近が、
慎重に言う。
「帝国の案とも、
大きな矛盾はありません」
代表は、
深く息を吐いた。
「だが」
視線を上げる。
「なぜ、
これを、
最初に出せなかった」
その問いに、
答えはない。
王国では、
返事を出した直後、
奇妙な静けさが訪れていた。
達成感。
安堵。
だが、
どこかに、
拭えない感覚が残る。
王太子は、
執務室で一人、
窓の外を見ていた。
「……間に合った、
のか?」
問いは、
自分自身に向けたものだった。
返事は出した。
責任も、引き受けた。
だが――
それが、
信頼を取り戻す一歩かどうかは、
まだ、分からない。
同じ夜、帝国。
ネフェリアは、
簡単な報告を受けていた。
「王国、期限内に返答しました」
「そうですか」
それだけだ。
評価も、
落胆もない。
「……遅れて届く後悔は、
返事よりも、
重いものです」
彼女は、
静かに灯りを落とす。
「ですが、
後悔が届いた国だけが、
次の選択を、
誤らずに済む」
王国は、
ようやく返事を出した。
だが、
返事を待つ相手の数は、
もう、
以前ほど多くはない。
それでも――
ゼロではない。
遅れて届いた後悔が、
まだ、
意味を持つうちに。
この国が、
次に何を選ぶのか。
その重さを、
今度こそ、
理解できるかどうかが、
問われていた。
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