婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第19話: 国際的な陰謀

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第19話: 国際的な陰謀

王都アルディア、王宮の奥深くにある聖女の私室。

ソルスティスは鏡の前で、金色のツインテールを乱暴に梳かしていた。  
可憐な顔は怒りで歪み、大きな青い瞳には涙が浮かんでいる。

「どうして……! どうしてあんな追放された地味女の薬ばかりが持ち上げられるのよ!」

机の上には、辺境から届いたポーションの瓶がいくつか置かれていた。  
魔瘴病の患者が劇的に回復したという報告書とともに。

聖女の浄化魔法は、もはやほとんど効果を発揮しなくなっていた。  
前世のゲーム知識では「最強の聖女」だったはずなのに、この世界の魔瘴病は想定外だった。

扉がノックされ、側近の女官が入ってくる。

「聖女様、王太子殿下が――」

「入ってきていいわ!」

カイロンが疲れた顔で部屋に入ってきた。  
金髪は乱れ、碧い瞳には深い影が落ちている。

「ソルスティス、薬は届いたようだな。  
これで病は収まるはずだ」

ソルスティスは彼にすがりつき、声を震わせた。

「カイロン様……みんな、私の魔法じゃなくて、あの女の薬を褒めてるの!  
私、聖女なのに……!」

カイロンは彼女を抱きしめながら、歯噛みした。

「エルカミーノの薬か……  
あの時、婚約を破棄しなければ、こんなことには……」

その言葉に、ソルスティスの目が危険な光を帯びた。

(絶対に許さない……!  
あの地味女が、私の立場を奪うなんて!)

彼女は涙を拭い、カイロンの胸から顔を上げた。

「カイロン様……あの薬、もっと手に入らないかしら?  
……たとえば、製法を盗めば、私が同じものを作れるかも」

カイロンは一瞬躊躇したが、国の危機を考え、頷いた。

「そうだな。  
密偵を送ろう。  
辺境へ潜入し、ポーションの製法か、材料か……何かを持ち帰らせる」

ソルスティスは内心でほくそ笑んだ。

(それだけじゃないわ。  
あの女を、二度と戻れないところへ落としてあげる)

数日後、辺境の領地。

夜の薬草園で、エルカミーノとラクティスは並んで散歩していた。  
ラクティスが頻繁に訪れるようになり、二人の時間は自然と増えていた。

「月光花の種、順調に育ってるわ。  
公爵殿下のおかげです」

ラクティスは彼女の横顔を見つめ、静かに手を繋いだ。

「君が喜ぶなら、何でも持ってくる」

甘い空気が流れる中、突然――  
ガレンが駆け寄ってきた。

「公爵殿下! 緊急です!  
村の外に、不審な影が複数。アルディア王国の密偵と思われます」

ラクティスの表情が一瞬で冷徹なものに変わった。

「ポーションを狙っているのか……  
ふん、愚かな」

彼はエルカミーノの手を強く握り、紫の瞳を鋭く光らせた。

「心配するな。  
僕がすべて片付ける」

エルカミーノは少し不安げに彼を見上げた。

「でも、もし怪我人が出たら……」

「出さない」  
ラクティスは彼女の額に軽く唇を寄せ、囁いた。

「君の大切な場所を、誰にも傷つけさせない」

その夜、村の外で空間魔法の紫の光が一瞬閃き、  
密偵たちは気絶して捕らえられた。  
何も持ち帰ることはできず、王都へ送り返されるだけだった。

屋敷に戻ったラクティスは、エルカミーノを抱きしめた。

「もう、こんな国に縛られる必要はない。  
僕の国へ来い。  
ここよりもっと安全で、君が自由に錬金できる場所を用意する」

エルカミーノは彼の胸に顔を埋め、小さく頷いた。

「……ええ。  
もう、決めたわ」

王都の陰謀は、ラクティスの手によって未然に防がれた。  
しかし、ソルスティスの嫉妬はさらに燃え上がり、  
次の手を考え始めていた。

辺境の夜空に、月が静かに輝いていた。

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